
■2020年代という新たなディケイド(10年間)に入った。アメリカ小売業界はアマゾン・エフェクトや5G、シームレス・ショッピング、買い物のデジタル・パーソナライゼーションによりIT武装を加速させる。
スーパーマーケット業界の専門誌であるプログレッシブ・グローサーのサイトでは「2020年スーパーマーケット・イノベーション展望(2020 Grocery Innovation Outlook)」を掲載し、自動運転者やドローンによる宅配サービスやアマゾン・ゴーのレジなしチェックアウト、アプリを使った便利なショッピングや楽しい買い物体験の演出等を説明している。
これまでイノベーションに後ろ向きだった食品スーパーでさえITオフィスを開設し、アマゾンに対抗しようとしているのだ。米国の食品スーパーがデジタルシフトしているため、米国流通視察を行う学習者も学びに変化を取り入れなければならない。
これまでのような団体行動による学習方法では世界最先端となるアメリカ流通業からの知見は得られないのだ。
したがって今日は米国流通視察の5つのNGについて解説する。
1つ目のNGは大人数による視察だ。20人を超えるグループでの視察はパーソナライゼーションが進むトレンドと完全に真逆となる。そもそもチェックアウトレジに大人数を集めることは店に迷惑をかける上、小さなスクリーン上で行うフィンテックの解説は不可能だ。
2つ目のNGは売り場を見て回るだけの視察だ。IT投資を拡大しているチェーンストアでは、売り場をみても得られるものはない。売り場の変化も以前ほど大きくはないはずだ。デジタル・トランスフォーメーションの兆候は売り場には現れない。
3つ目はIT弱者がコーディネーターもしくは講師となって研修を率いる視察だ。流通コンサルタントが講師役となるのだが、彼らはまったくのIT音痴だ。こういった情報弱者コンサルに共通するのは、クライアント企業と一緒にアメリカには来るが事前に調査することはない。自腹を切ってまで現地でイノベーションを調べないため不見識のままとなる。
4つ目はITの専門家をつけず、企業の社員などが自分たちだけで流通イノベーションを調べようとする視察だ。もとよりIT経験値の低い人が集まっても大手チェーンが世界最先端イノベーションをどのように提供しているのかがわからない。ITを利用した買い物の仕方に手こずるから、結局のところ社員時間のムダ使いとなる。
5つ目は料理対決やファッションショー、農地見学などお楽しみイベントを行う研修だ。渡米時の貴重な時間を使い、理解度を試すペーパーテストを行っている場合もある。こういった企画の真の目的は講師がITの弱さを目隠しするために行うものだ。
2020年からの10年間でアメリカ流通はさらに大きく変化する。それを視察する仕方も変わらなければならないのだ。
トップ画像:ターゲットのウォレットを使いフィンテック体験する参加者。20人を超える参加数ではレジに集めることはお店に迷惑となり、そもそもスマートフォンの小さな画面でフィンテックを確認することも難しいのだ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。これからの米国流通視察は必ず15人以下となる小規模で、売り場ではITを使った体験が中心となるワークショップ&カリキュラムスタイル、そしてIT専門家のアテンドがデフォルトになります。つまり当社が行っている独自のコンサルティング手法が今後は主流になっていくということ。
ところでエントリー記事にある5つのNGに共通するのは参加者にスマートフォンを使わせない(使いたくても利用の仕方がわからないから使えない)ことになります。米国流通視察では必ずウォルマートに行きます。ウォルマートでストアアプリを使っていないなら完全にアウト。当ブログで何度か掲載している「ウォルマートで行う10のコト」にあるようにウォルマートはスマートフォン・アプリに買い物が便利になる様々な機能を盛り込んでいます。5Gの普及でスマートフォン・アプリにある便利な買い物機能は爆発的に増えます。クライアントもこれをスルーできなくなるので調理大会などで誤魔化すこともできなくなります。
参加者が20代〜30代にもかかわらず、世界最先端の流通現場でスマホを使わない研修に「おかしい!?」といつになったら気づきますかね...