- 2020年01月05日 11:30
タモリ「もともと向上心はないけど、仕事以外は厳しいんです」【滝川クリステル】
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30歳から芸能界に足を踏み入れ、常に自然体で過ごしてきたタモリさん。予定“不調和”を愛し、動じず、すべてを面白がる。そんな人生の達人ともいうべき生まれながらのエンタテイナーの思考に迫る――。
休日は車両の先頭位置を子供と奪い合っている
滝川 2009年から続いたこの連載も次のエッセイで最終回。最後のゲストはタモリさんにお越しいただきました。多彩な趣味をお持ちなので、どのお話からうかがおうかワクワクしていたんです。
タモリ 何でも結構ですよ。どんと聞いてください。
滝川 では思いついたところから……私タモリさんの「ジャズだね」って言い回しを時々真似しているんです。意味がありそうでないようなところが好きで。
タモリ 「ベイシー」というジャズ喫茶のオーナーにある日「なあタモリ、ジャズって音楽があるんじゃなくて、ジャズな人がいるだけだな」と言われまして。対して「ジャズだねぇ」って返したのが最初だったかな。意味は何もないです(笑)。
滝川 ベイシーには私も何度か行きました。音があまりにもよくてびっくりしたんですよね。
タモリ オーナーの菅原さんとは学生時代から50年以上の付き合いですが、スピーカーの位置や配線を1ミリ単位で計算しているんです。昔はとっつきにくい先輩で怖かったなあ。
滝川 ジャズな人というのもわかるようなわからないような。
タモリ 菅原さん曰く、向上心のない人、らしいですよ。

滝川 タモリさんも以前「向上心は未来を目標にしているから、今を生きてることにならない」と苦言を呈していましたね。
タモリ 僕はもともと向上心ないですから。精神年齢のピークは6歳でした。だから今でも、休日に個人的なブラブラをする際、電車の一番前に立ってよく見知らぬ子供と場所の取り合いをしています。おまえはまだ時間がたくさんあるんだから俺に譲れ、もっと大人になれよ、と思いながら、必死に手すりをキープする。
滝川 熾烈な戦いが目に見えるようです(笑)。先頭に立って、線路を見ているんですか?
タモリ そう、あとは架線っていう電気を送る線を見たり、地形を観察したり。新幹線でもずっと外を見ています。カーテンを閉められるとすごい腹が立つ。
滝川 そこまで(笑)。海外にはご興味はありませんか?
タモリ 行けるならどこにでも行きたいですよ。『笑っていいとも!』が終わった時はすぐにヨーロッパに行きました。パリやスペイン、ポルトガルを経由してモロッコへ。都市部の風景はテレビで見たのと同じであまり感動がなかったけど、モロッコはまた行きたいかな。
滝川 なぜモロッコへ?
タモリ 地勢的に、さまざまな民族音楽の集結地みたいなところなんです。イラクや中近東を経て北ヨーロッパへ行った一派や、イタリアからスペインへ行った一派、アフリカ北岸を通ってモロッコへ行き着いた一派、その三派があります。ただその時はラマダンで、一部しか聴けなかったんですよ。念願かなったのは2年後です。赤塚不二夫さんの娘さんが実はモロッコ音楽の大家で、日本に楽団を呼んで。渋谷で聴けるなら行かなきゃよかった(笑)。
滝川 そんな(笑)。
タモリ でも朝からカフェで酒が飲めたり、飛行機の出発が何時間も早まったり、想像を絶する文化で面白かったです。
滝川 私も行ってみたいな。他に気になる国はあります?
タモリ インドかな。常識が通用しなさそうなところがいい。
滝川 予想を超えてくれるかどうかが、ひとつの指標なんですね。テレビの生放送というのも予期せぬことが起きるものですが。
タモリ それが面白いんです。誰か失敗しやしないかといつも楽しみにしてる(笑)。遅刻もどんどんしてほしい。
滝川 ええー!生放送は特に時間との戦いなのに、さすがの余裕ですね。
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