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バリューブックスが挑戦する「廃棄本」の価値再生――無印良品も協力

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「成長することは会社の目的ではない」

これらの取り組みは利用者の共感を得て、2007年の創業以来、右肩上がりで成長を続けてきた。しかし「無理に会社を成長させることをやめたんです」と話すのは創業者の中村大樹氏(以下、大樹氏)。「成長は会社の目的ではないように感じます」という。

そもそも「僕は会社を『古本屋』と決めているわけではないんです」と大樹氏はいう。バリューブックスは大樹氏が「生活するために」せどり(古本などを安く仕入れ、利益を上乗せして売ること)を始めたことがきっかけで創業した会社だ。

大樹氏は古書店の業界慣習やルールに詳しかったわけでもない。「古書店」という枠にとらわれず、必要なものは工夫してシステムやハードをつくりながら事業を拡大してきた。転機が訪れたのは3年前だという。

「成長のために誰かが犠牲になるということが社内でも起こっていました。それで、無理をするのをやめたんです。僕は株主でもありますが、利益目標を会社のお題として提示していないんです。規模感や成長ではなく、例え会社がシュリンク(縮小)していったとしても、そこにいるみんなが幸せでいられる状態をつくりだすこと。会社の目的のひとつはそこにあると思っています」

「成長」を目的にしないことを明確にしたことで、業績の伸びも緩やかになった。現在は正規・非正規という社会制度に囚われず、誰もが自分の意思に基づいて行動できる環境をどのようにつくるか、組織を変革している最中だという。

ビジネストランスフォーメーションの秘訣は

創業者・バリューブックス中村大樹代表

「ゲームのルールが変わってきているように思うんです」と大樹氏は分析する。

「必ずしも会社が大きくなって、たくさんのお金を稼げたほうが幸せだとは限らないということを、僕たちの前の世代の人たちが証明してくれました。じゃあどうしようか、というお題に変わっているんじゃないかと思います。もちろん生活のためにお金を稼ぐ必要がありますが。

人口は減少していくし、本は売れなくなっていく。全体的にシュリンクしていきます。右肩上がりで成長する中でのビジネスというゲームは、もう終わったんだと思います。『上場企業』『業界ナンバーワン企業』のポジションをとるというのは、いまのゲームにおいて不利なことが多いのではと思っています。上場企業は成長を約束しなければならないモデルで、売り上げ業界ナンバーワン企業は、シュリンクしていく状況にダイレクトに影響を受けるので――」

バリューブックスのミッションは「日本及び世界中の人が本を自由に読み学び楽しむことのできる環境を整える」ことだ。「古本」でなければならないわけではない。古書の取り扱いから始まったからこそ見える、いまよりも持続可能な「売るべき新刊」や「本のつくり方」、「流通」も見えてくるかもしれない、と大樹氏は今後に意欲を見せる。

大樹氏がいま集中的に取り組んでいるのは、本棚の写真から本の関連付けやアーカイブ、管理、独特のレコメンド、購入もできるようになるサービス。写真から仮の査定が手軽にできる現在の「本棚スキャン」サービスを進化させたものだ。

古書店、出版業の慣習や常識だけでなく、ともすれば強迫観念めいてしまう「成長」にすらとらわれず、「生活するお金を稼いで、気持ち良い社会になって、みんなが無理せず幸せになれたらいい」と素直に話す。社内でこういった姿勢を大上段に語ることはない。ミッションに沿ったプロジェクトの出発点は、従業員や関係者の「もったいない」など素朴な気持ちからだ。それこそが、社会の共感を得るビジネストランスフォーメーションの秘訣なのだろう。

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