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「避妊するな」金正恩命令でも進む少子化…首都・平壌も例外なく

韓国統計庁が発表した「2018北朝鮮の主要統計指標」によると、北朝鮮の合計特殊出生率(1人の女性が15歳から49歳までに生む子どもの平均数)は、2005年から2010年は1.99人だったのが、2010年から2015年は1.95人で減少傾向にある。

米中央情報局(CIA)のワールドファクトブックに掲載された、北朝鮮の2018年時点の合計特殊出生率は1.94人。韓国の1.27人、日本の1.42人に比べるとまだ高いほうだが、少子高齢化が確実に進行しつつある。国連人口基金の資料は、北朝鮮の生産可能人口は2020年を頂点に減少するとしている。

少子化の最大の原因は経済的な困難によるものだが、北朝鮮の中で最も豊かな首都・平壌ですら少子化が進みつつあると、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

「子どもを産んだところで(経済的な問題で)まともに育てられない」

情報筋によると、最近、平壌市民の間ではこのような認識が拡散している。そのため、結婚しても子どもを産もうとしない人が増加。経済的な問題を考えずに出産する人には「愚かしい」との言葉が投げかけられるという。

逆に幹部の子女は、経済的な心配がないので結婚すればすぐに子どもを産もうとする。このような状況で、周りからは徐々に子どもの姿が消えつつあるというのが情報筋の評価だ。

当局は、深刻化する少子化を座視しているわけではない。2010年に制定した女性権利保障法は、多胎児を妊娠、出産した女性に対して次のような特恵を与えると定めている。

第50条(出産の自由) 女性は子どもを産む権利、産まない権利を有する。国家的に女性が子どもを多く産んで育てることを奨励する。 三胎子(三つ子)、多胎子(双子以上)を産み育てる女性とその子どもには、担当医師を置き、住宅と薬品、食料品、家庭用品を無償で供給するなどと特別な配慮と特恵を与える。

また、北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、2018年3月8日の国際婦女節(国際婦人デー)に関する記事「社会制度と女性たちの運命」で、自国の出産奨励策を次のように褒め称えている。

偉大なる領導者金正日同志は次のように教示なさった。

「わが人民は社会主義制度がいかに尊いかということを実生活を通じて深く体験しています」

国家からわが国の女性たちはいかなる特恵を保証されているかということは、平壌産院を通してよくわかる。

首都の女性たちはもちろん全国の女性たちが、先端医療設備と現代的な治療条件が充分に整えられた平壌産院で誰でも無償で医療奉仕を受けている。女性たちが受ける特恵はこれだけではない。

子どもを産んだ後、すべての母親には天然物のハチミツが与えられ、三つ子、四つ子の妊婦の場合は、産院に入院してから退院するまでの数ヶ月間、毎日肉類、卵類など栄養のある食事が供給される。

ところが、現実は全く異なる。記事で紹介された夢のようなマタニティライフは、カネを積んでこそ可能なのだ。

昨年6月、平壌産院を訪れた妊婦が死亡する事件が起きた。当局の調査の結果、妊婦は呼吸困難を訴えてやってきたのに、ワイロが払えないとの理由で医師に控室に追いやられ、死に至ったことが判明した。

(参考記事:妊婦も殺すワイロ漬け医療…「金正恩命令」も効かず

「党は子どもを産めよ増やせよと騒ぎ立てているが、支援が一つもない」(情報筋)というのが、現実なのだ。

「農作物が豊作という話はどこからも聞こえず、市場の商人たちは儲からないと喚き散らしている。工場にも資材がなくて生産がまともにできない。平壌の周辺地域に住む人々の生活は苦しい」(情報筋)

このような状況で、とてもギスギスした空気が流れているという。子どもを何人以上産めば住宅をくれるというので、6人も子どもを産んだ女性は、住宅がもらえずに当局の関係者とケンカになったこともあったという。

金正恩党委員長は、避妊と妊娠中絶、コンドーム輸入などの禁止を「少子化対策」として導入している。それも、違反者は懲役3年の刑を科すというものだが、女性を性感染症や違法な中絶手術のリスクに晒すだけの愚策だ。

(関連記事:「避妊するな」金正恩氏の命令に苦しむ北朝鮮の女性たち

また、誰からも望まれずに産まれた子どもが捨てられるという問題も生じている。経済難が解消し、社会が安定、労働新聞の記事のような状況ではなくとも、安心して出産し、育児ができるような状況にならない限り、少子化問題の解決は夢のまた夢だ。

(参考記事:金正恩氏「避妊ダメ。中絶禁止。離婚もNG」で抱える大問題

※デイリーNKジャパンからの転載

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