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テクノロジーをどう捉えるか

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今日の横浜北部は関東の正月らしい快晴の一日でした。

数カ月ぶりの更新となってしまいましたが、まずは明けましておめでとうございます。本年も引き続きよろしくお願いします。

さて、久しぶりに要約を行ってみましょう。これは私がいま最も関心を持っているテクノロジーのとらえかたに関するものですが、英エコノミスト誌のクリスマス増刊号に掲載されていたものです。


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悲観主義vs進歩

もっと速く、もっと安く、より良いものをーーーテクノロジーは、多くの人が「明るい未来」というビジョンを示す際に使う分野の一つだ。

ところが二〇二〇年代が始まろうとする今、このような楽観主義は減っている。過去10年間を支配してきた新しいテクノロジーは問題を悪化させているように見えるからだ。

たとえばソーシャル・メディア(SNS)は、そもそも人々をつなげる役割を期待されていた。たとえば2011年に始まった「アラブの春」では、SNSは人間を解放に導くものだとして称賛されていた。ところが今日ではそれが「プライバシーを侵害するもの」や「プロパガンダを拡散するもの」、そして「民主制度を弱体化させるもの」と考えられるようになった。

Eコマースや迎車サービス、そしてネット系の臨時労働者などは、たしかに便利なものかもしれないが、同時に労働者への給料の低下や格差の悪化、そして市街地が車で埋めつくされる原因になっていると非難されている。 そして親たちは、スマホのせいで子供たちが「画面に釘付けになったゾンビ」になってしまったと心配している。

次の10年間を支配するテクノロジーも、暗い影を落としているように見える。たとえば人工知能(AI)は偏見や差別を固定化しそうであるし、われわれの仕事を脅かし、独裁主義の支配者の支えとなりそうだ。5Gは米中貿易戦争の核心にあり、自動運転車両はまだ不完全で、まだ人を轢き殺し続けている。

ある意識調査によれば、ネット企業は銀行業界よりも信頼度が低いという。現在では銀行自身がテクノロジー企業のようにブランド替えしようとしているし、逆にネット巨大企業が新しい銀行になろうとしていて、優秀な人材を引きつけていた磁石のような存在から嫌われ者へと変わってきており、その社員たちが反乱を起こしつつあるほどまでになっている。

ニューヨーク・タイムズ紙もこのような悲観的な雰囲気の広がりを記事にまとめている。その言葉を引用すると、「悲観主義のムード」が「科学・産業革命の時代に生まれた不可避の進歩というアイディア」に取って代わったというのだ。 しかしここで注意していただきたいのは、これが1979年に書かれた記事の言葉であるという点だ。この当時の同紙は、このような懸念が「テクノロジーの暴走を社会が規制できるのかについて疑いが増加していた」ことによってさらに煽られていたという。

今日の悲観的な雰囲気は、10年前から普及しはじめた、スマホとSNSが中心となったものだ。ところが「人類はテクノロジーを誤った方向に向けてしまった」、もしくは「ある特定のテクノロジーはむしろ悪い影響を与えている」という考えは、過去にも盛り上がったことがある

たとえば 1970年代にはこのような失望が、人口爆発、環境破壊、そして核兵器による破滅の可能性などへの懸念によって促されていた。1920年代には乗用車の登場に対する反発があったのだが、そもそもこれは馬を使った乗り物の苦悩に対する奇跡のような解決策ーー以前の通りは馬の鳴き声や馬糞で溢れており、しかも渋滞や事故が起こっていたーーであるかのように思われていた。

19世紀には工業化の闇がラッダイトやロマン主義者、社会主義者たちによって非難されており、彼らは技術を持った職人たちがクビになったり、田舎が破壊されたり、煙の充満した工場であくせく働く工員たちの苦悩などを心配したのだ(そしてこれには一理あった)。

こうして 振り返ってみると、このような歴史的な例に見られる落胆は、「実現しえなかった希望」と「予測しなかった結果」が混じり合ったことによって発生したものだ。テクノロジーは創造的破壊のエネルギーを解き放つものなので、それが人々の不安につながることは当然であろう。 いかなるテクノロジーも、欠点のほうがそこから生じる利益を越えているように見えることがあるものだ。そしてこのような状況が現在のようにいくつかのテクノロジーで同時に発生すると、その結果が「テクノロジー悲観主義」の広がりとなるのだ。

だがこの悲観主義は誇張されすぎている可能性もある。人々は新しいテクノロジーの欠点の方ばかりに注目してしまい、そこから得ている利益を当たり前のものとして無視してしまうことが多いからだ。 子供のスマホを眺めている時間の長さを心配するのもけっこうだが、それはどこでも通信できることや、情報への瞬時のアクセス、そしてスマホによって可能となったエンターテイメントなどが生んだ利益と比較して考えるべきであろう。

さらに危険なのは、ラッダイト運動のように、新たなテクノロジーに付随する短期的なコストを避けようとする動きは、長期的な利益へのアクセスを否定することにもなりかねないという点だ。これはオックスフォード大学のカール・ベネディクト・フレイ(Carl Benedikt Frey)教授が「テクノロジーの罠」(technology trap)と呼んだものだ。

たとえば「ロボットが労働者の職を奪ってしまう!」という恐怖は、政治家にその使用を抑制するために企業に課税するような法案をつくらせたりすることにつながる。ところが長期的に労働人口が高齢化したり縮小したりする国が生活水準を維持しようとするのであれば、ロボットの数を少なくするよりも多くすることの方が必要になるはずだ。

これは別の教訓も導きだしている。それは、テクノロジーに関係した問題の唯一の解決法は、多くの場合、さらなるテクノロジーの採用にあるということだ。たとえばエアバッグとその他の安全装置などのおかげで、アメリカでは10億マイルの走行距離の中で自動車事故で死亡する確率が、1920年代には240人だったものが今日では12人に減っているのだ。 AIはSNSに流れる過激なコンテンツの拡散を阻止するという任務にも使える。

この究極の例は、気候変動であろう。これにつては、クリーンエネルギーや二酸化炭素の捕獲、そしてエネルギーの貯蔵などの分野でのイノベーションに頼らないような解決法は、もう考えられない。

最も重要な教訓は、テクノロジーそのものに関することだ。パワフルなテクノロジーというのは、良い目的のために使えるし、悪い目的のためにも使える。たとえばネットは理解を広めるが、同時に首切りで処刑される人々の動画も拡散される。バイオテクノロジーは作物の収穫高を上げたり病気を直したりすることができるが、同時にそれは殺傷力の大きな兵器の開発にもつながる。

テクノロジーそのものは中立であり、それについて決断する人々の選択肢が世界をつくるのだ。したがって今回のようなテクノロジーへの反発は、重要な新しいテクノロジーが社会で普及するまで必ず通過する一つの段階となる。

これを社会がうまく乗り越えられれば、イノベーションと対処するまでのプロセスはスムーズになるし、破壊的な可能性を制限するようなルールや政策(シートベルト、触媒機能、交通規則など)を課すことや、変化の受容(産業化に対する国民皆教育)やトレードオフ(迎車の利便性と臨時労働者の保護のバランス)の実施につながるだろう。

「健全な懐疑主義」が意味しているのは、これらの問題はテクノロジーの排除ではなく、それが社会で広く論じられることによって解決に近づくという点なのだ。

★ 倫理面を活性化せよ

おそらくこの不安の本当の原因は、テクノロジーそのものではなくて、社会にはこのようなディベートを行い、そして良い解決法を導き出すという能力が果たして残っているのかどうかに、疑いが出てきている点にあるのかもしれない。

その意味から考えると、「テクノロジー悲観主義」は「政治についての悲観主義」であると言える。

それでもわれわれはそこまで心配する必要はない。なぜなら悲観的な議論があるということは、全く議論がない状態よりもはるかにマシだからだ。 そして歴史が教えてくれているのは、全体的には楽観的で良いということだ。

産業革命以降のテクノロジーの変遷は、古代から続く悪、つまり子供の死亡率から飢餓、そして無学までを防止する一助となってきたのだ。 もちろん地球は温暖化しているし、抗生物質耐性のついた細菌は蔓延している。

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