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依存症対策見直し必至【2020年を占う・社会】

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ギャンブルイメージ 出典:Pixabay: ThorstenF

田中紀子(ギャンブル依存症問題を考える会代表)

【まとめ】

・ギャンブル等依存症対策、公平性・透明性求められる年に。

・薬物依存症、「ダメ、絶対」でなく「回復から再起へ」へ。

・合法なものに対するいきすぎた寛容さと、違法薬物に対する必要以上の厳罰主義、見直すべき。

■ ギャンブル依存症

カジノ疑獄で見直しが必要となるギャンブル依存症対策

2019年12月現役国会議員がカジノ誘致に絡む収賄事件で逮捕されるという衝撃的なニュースが日本中を駆け巡った。カジノの是非を巡っては、かねてより「利権の温床になる」との指摘があったが、まさにその懸念が現実化したわけでこうなった以上は少なくとも捜査の全容が解明されるまで、カジノを容認すべきではないとの声が高まると思われる。

また、それに伴い「ギャンブル等依存症対策基本法基本計画」についても見直しが必要である。そもそも「ギャンブル等依存症対策基本計画」は、たった4回の関係者会議で終了となっており、先行する「アルコール健康障害対策推進基本計画」が、およそ1年5カ月をかけ14回の関係者会議と12回のワーキンググループが開かれたこととは雲泥の差である。たった4回の関係者会議では、自己紹介及び官僚の作文した基本計画を発表して多少の意見交換で終了である。実際、議事録を見ても大した議論は行われていない。

しかもアルコールの関係者会議では、長年アルコールの健康障害対策推進のために実際に活動してこられた、公益社団法人全日本断酒連盟さんや特定非営利活動法人アスクさん(アルコール薬物問題全国市民協会)が委員に選ばれ、現状の問題点や課題について指摘し、依存症対策が新たな利権になることのないよう地域連携による対策が考えられたが、ギャンブル等依存症対策基本法では、ギャンブル依存症の一個人である当事者・家族を入れ、ギャンブル産業の依存症対策の問題点を指摘できる市民活動家を一切排除したのである。

つまりすでにこの時から、秋元議員もしくは秋元議員以外の国会議員にも賄賂により、早期にカジノ開業を目論むオペレーターや自治体、さらには既存のギャンブル産業に忖度し、充分なギャンブル依存症対策の議論を行わせないように取り計らった可能性も考えられるのである。実際、秋元議員はカジノ関係者だけでなく通称パチンコ議員と呼ばれる「時代に適した風営法を求める議員連盟」の事務局長も務めており、関係先のパチンコホール会社が家宅捜査を受けたことからも関係の深さを物語っている。

▲写真 秋元司議員 出典:wikimedia commons: Yanagimotoso

現実に、ギャンブル等依存症対策基本計画の関係者会議が開催される際の内閣官房は、我々のような当事者・家族の全国連合組織の訴えを一切無視し、取り次いでくれた議員の働きかけに対しても応じず、不可解なまでに短期決着を強行突破した。その結果ギャンブル等依存症対策基本法は、見事なザル法になってしまったのである。

例えば、現状では法律で定められたギャンブルの開始年齢(パチンコは18歳以上、公営競技は20歳以上)も、厳格化するような対策がとられず、警備員や店員が「若そうな人に声をかける」といった目視での確認にとどまっている。

また、ギャンブル産業がギャンブル依存症対策の対策費を負担することは当然と思われるが、現状は税金での負担を余儀なくされている。このように基本法成立の際に期待された、最低限必要な対策でさえ基本計画に明文化されず、結局法案ができても殆ど変化なく、対策を前進させることはできなかったのである。

そもそもIRを推進する部署と、ギャンブル等依存症対策を行う部署が同じ内閣官房内の同一部署であることにも無理がある。こうしてカジノに絡む収賄事件が明るみに出たからには、IR法案はもちろんのこと、ギャンブル等依存症対策基本計画も管轄部署を厚生労働省に移管するなどして、ギャンブル産業のために便宜を図っていないか?再検証し計画自体を見直す必要がある。

2020年度は、ギャンブル等依存症対策に公平性・透明性を求められる年になるであろう。

■ 薬物依存症

報道のあり方や支援のあり方が問われる年に

2019年は、ピエール瀧さんのコカイン使用による逮捕を皮切りに、著名人の違法薬物事件が相次いだ。3月に起きたピエール瀧さんの事件の際には、特にワイドショーが徹底的に叩きのめし、更には作品の公開停止だ、自粛だ、配信停止だと様々な私的制裁措置を与えた。するとこれに嫌気がさしたファンや私たちのような依存症の支援者達が「やりすぎ!」と声を上げ、ピエール瀧さんの事件は「応援団VSワイドショー」の様相を呈して行った。

▲写真 薬物イメージ 出典:Pixabay: Anestiev

一方、この事件を契機に、先駆的なネットメディアでは薬物事件を「犯罪」の側面より「病気」の側面で捉え、「刑罰よりも治療を!」という依存症支援者の声を積極的に発信してくれるようになった。そして11月に田代まさしさんと沢尻エリカさんの事件が立て続けに起こった際には、明らかに報道の内容が変わっていった。

薬物依存症は「病気」であり、治療が必要なこと。欧米諸国では「ハームリダクション」と呼ばれる薬物事犯に対する非犯罪化政策が取り入れられていることなどが紹介されるようになり、ワイドショーなどは相変わらず批判一辺倒のところが多いが、情報番組などでは「批判だけでは解決にならない。」「刑罰以上の私的制裁を加えるべきではない。」と言った発言も有名タレントから発せられるようになった。

また2019年度は、こういった芸能人による薬物事犯だけでなく、4月には経済産業省、5月には文部科学省のそれぞれキャリア官僚が覚せい剤取締法違反の罪で逮捕されるという事件が起こった。覚せい剤や注射器が職場からも発見されたことから、霞が関に衝撃が走ったが、この事件を契機に、かつては反社会的勢力の人々の間で蔓延しているイメージのあった違法薬物の使用が、このようないわゆるエリートたちにも起こりうることであり、誰にでも簡単に手に入ることも知られることとなった。

実際に、私たち支援者の元に訪れる人たちも、普通の社会人である。家庭を持ち、会社勤めをし、例えば、公認会計士や税理士といった「士業」に就かれている方もいる。こういった方々が、薬物を止め、回復して行くためには薬物事犯を必要以上に特別視、白眼視していったのでは逆効果である。

「バレたら全てを失う。」という脅しでは、問題を隠蔽させ、重症化してしまう。だからこそ薬物使用で法律に定められた必要以上の私的制裁をエスカレートさせてはならないのである。2020年度以降は「全てを失う前に治療に繋がる。」この流れを作っていくことが必要とされる時代になるであろう。

バッシングにより再起する道をふさぎ、職業を奪い、孤独に追いやっても誰のためにもならない。それでは生活保護などの社会負担費は増加する一方であり、絶望から自暴自棄になり再犯する可能性も高まってしまう。再犯すれば裁判から刑務所のコストも全て税金から拠出しなくてはならないのである。現在の日本は格差社会に苦しみ、社会負担費の増加にあえいでおり、これ以上、一部無知なタレントが人気取りのためにやっている、声高な感情論、道徳論にまんまとはめられ、自分たちの税金にツケが跳ね返るようなことを増長させてはならない。

▲画像 薬物乱用「ダメ。ゼッタイ」ポスター 出典:厚生労働省

私たちは、冷静かつ客観的に物事を判断し、80年代に、民放連が流行らせた人権侵害コピー「覚せい剤やめますか、人間やめますか」から脱却し、社会にとって一番メリットのある方法、コストパフォーマンスの高い支援を行うべきである。今後は「ダメ、絶対」ではなく「回復から再起へ」といった道を示していくことが重要である。

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