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NHK大河『麒麟がくる』 明智光秀ゆかりの地をめぐる綱引き

番組公式ホームページより

 出演者交代の影響で放送開始日が1月19日に延びるなど、波乱含みのスタートとなった2020年のNHK大河ドラマ。その陰でひそかに繰り広げられる争いについて、歴史作家の島崎晋氏が解説する。

 * * *
 NHKの大河ドラマを巡っては必ず、表面にはあまり出ることのない誘致合戦が展開されている。観光客の増加と経済効果を期待して、全国の自治体が“地元ゆかりの人物”を推す活動に熱心だからだ。

 どの時代の誰を主人公にするかが公表されると、今度は“ゆかりの地”同士の争いが開始される。今年の『麒麟がくる』の場合、長谷川博己演じる主人公・明智光秀の出生地が特定できていないこともあって、観光客の取り込み合戦が熾烈化している。

 明智光秀は織田信長を討った人物として歴史に名を残したが、知名度の高さとは対照的に、その前半生は謎のベールに包まれている。生まれた年からして1528年とされながら確証はなく、父親の名前についても明智光隆、光国、光綱、進士信周(しんしのぶあき)などいくつもの候補が挙げられている。進士信周とする説では、信周の妻の兄・明智光隆が病弱で跡継ぎがいなかったことから、光秀が養子として迎えられたとされている。

 出生地についても諸説あり、岐阜県可児市瀬田や同じく恵那市明智町、山県市美山町、大垣市上石津町など、旧美濃国内だけでも複数の候補地がある。恵那市と可児市及び県庁所在地である岐阜市の3市にはそれぞれ「大河館」も設置され、あとは放送が始まり、観光客がやってくるのを待つばかりの状態にあるが、果たして『麒麟がくる』では出生地をどことして描くのか。

 番組公式ホームページによれば、物語は光秀の前半生に光を当てるとのこと。出演者リストに父親役と光秀の子役時代の配役が欠けていることから、出生のエピソードや幼児期については回想ですら描かれない可能性がある。会話の節々に出てくる程度で、出生地と父については明言しないつもりかもしれない。それはそれで、角を立たせずに済む賢明な判断なのだろう。

 同ホームページには人物相関図もあり、本木雅弘演じる斎藤道三の長男・義龍(伊藤英明)は光秀の学友、川口春奈演じる娘の濃姫(帰蝶)はいとこの関係、とある。光秀の叔母が斎藤道三の正室という設定だからだが、光秀と道三、義龍、濃姫の関係性がどのように描かれるのか。放送開始が待ち遠しい。

【プロフィール】しまざき・すすむ/1963年、東京生まれ。歴史作家。立教大学文学部史学科卒。旅行代理店勤務、歴史雑誌の編集を経て現在は作家として活動している。著書に『ざんねんな日本史』(小学館新書)、『いっきにわかる! 世界史のミカタ』(辰巳出版)、『いっきに読める史記』(PHPエディターズ・グループ)など著書多数。最新刊に『ここが一番おもしろい! 三国志 謎の収集』(青春出版社)がある。

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