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イオンを創った女が「男女を区別」していた理由

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「弟を日本一にする」。イオングループ創業者・岡田卓也の実姉・小嶋千鶴子は、その言葉通り、家業の岡田屋呉服店を日本最大の流通企業に育てた。『イオンを創った女の仕事学校』(プレジデント社)の著者・東海友和氏は「小嶋は相当早い時代から、女性を戦力化するための施策を講じていた」という――。

頭に「女」がつく言葉を嫌った理由

小嶋は職業・肩書・役割のあたまに「女性」「女」が付く言葉を嫌った。

たとえば女性経営者・女優・女性記者・女流作家等々である。この言葉の響きには本来男がすべきなのに女性がしているという珍しさや一段ひくい立場のという意味を感じるからである。

小嶋は取材におとずれた雑誌の編集長(女性)が、「小嶋さんは仕事もして結婚されて家庭のこともなさっているので驚きました。とても立派ですね」という言葉に、小嶋はすかさず「何が立派なもんか。当たり前やないの、そんなこと」と言い、有夫の婦という言葉を引き合いに、女性の地位について語ったことは過去にも紹介した。

こんにち社会がかわり、女性の権利が認められる世の中にあってもこの差別意識はあまり変わっていない。

ジャスコ時代に、女子4年生大卒社員を採用した際にも記者から「小嶋さんが女性だから女性に理解があるのでは」という問いかけに対して、「そんなものは関係ない。意欲と能力が必要なだけや」と言い切ったのである。

終身雇用制の終わりを予見していた

小嶋は『あしあと』(※)の中で、こう言っている。

※小嶋千鶴子自身が、81歳の時に刊行した自伝。一般には販売されず、イオングループ現役社員に配布される。

「4年生大卒者について見ると、入社時点で男女の能力差はないといってよい。今の需給関係からいって、相当質の良い女子大卒者が採用できるはずである」

続けて、「しかし、女性の場合、最終的には家庭に入ることを目的にしている人が圧倒的に多い。経営上から見ても、今しばらくは続くであろう終身雇用制の中での男子労働者と、この女子短期労働者の組み合わせはマイナスではない」。

1997年に書き記したものである。

いまから20年以上前に終身雇用の終わりを予見しているかのような視点に加えて、当時の女性はまだ結婚ということへの思いが強かったのであろう。

子育てを終えた「奥様社員」を募集

にもかかわらず、小嶋は女性が故の視点と企業経営者の視点で、相当早い時代から、この女性を戦力化するための数々の施策を講じている。

「女性で一番問題になるのは出産です。出産ということがなければ、能力的にも仕事の遂行上も、男女に差をつける理由は全くありません。しかし出産という事実がある以上、区別しないわけにはいかないのです」と言う。

すでに昭和30年後半には、これからの女性の社会進出がなされることを予見して、今では珍しくないが、「パートタイマー」の導入をいち早く行っている。

さらに、子育てを終了した女性に対しては「奥様社員」と称した社員募集を実施して、高学歴でかつ意識の高い奥様を社員化したのである。その後パートタイマーから社員(契約制社員)への道を開き、仕事の埋め合わせ的な存在から一定の条件を満たしており、なおかつ意欲と能力のある者対して安定した社員への道を開いた。

主婦たちには「消費者の目線」があった

「就業した主婦の多くは、折から“産業化”を進める企業の内部に直接参加する機会を得て、自ら組織社会の一員となった。同時に自ら扱う商品を通じて、自らの目で技術革新の実態を把握し、社会の変化そのものを家庭生活の中に吸収することができた」

つまり、

「主婦たちは自らの健康や生命に深い関わりのある食料品や、毎日の生活で使用する家庭雑貨や家電製品の販売を実体験することができた。これによって、社会に対する目、商品に対する目を養い、消費するだけの生活体験から販売する側の立場、あるいは生産製造の過程まで踏み込んだ多くの知識を得ることになった」

のである。

そして、

「内部からの消費者代表としての発言は、それなりの重みがあり、問題解決への参画にもなった。その多くは表面にこそ現れていないものの、日本の消費財の質的向上という社会的な要請に対して、彼女たちが果たしている貢献を見逃すわけにはいかない」

と評価している。

そういった奥様社員たちの中には、管理職に登用されて定年まで就労された方もいた。

まさに、女性ならではの特質を経営に活かしたのである。

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