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若手声優との結婚を夢見る45歳「子供部屋おじさん」の末路

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楽しい子供部屋におじさんになった今も暮らす(イメージ)

1990年、東京ドームで実施された立正大学の入学試験(時事通信フォト)

 勉強して進学して、働けば『クレヨンしんちゃん』の父・ヒロシのように家庭を持ち家を建て、ぜいたくは無理でも普通の大人になれると思っていたのに、どうもうまくいかない。そんなわだかまりを抱えさせられた30~40代の就職氷河期世代に対し、まだやり直せるという期待をこめて「しくじり世代」と名付けたのは、近著『ルポ 京アニを燃やした男』が話題の日野百草氏。今回は、若手声優との結婚を20年超にわたって夢見ているという派遣ITエンジニアの男性についてレポートする。

 * * *

 埼玉県春日部市の実家に両親と暮らす福田健人さん(仮名)とは埼玉の春日部駅に近いショッピングモールで落ち合い、行きつけだというモール内のインドカレー屋に向かった。福田さんは45歳、1974年生まれの団塊ジュニアだ。埼玉県内の私立高校から私立工業大学を卒業、現在は派遣のITエンジニアをしている。年収は300万ほど。

「うちの(派遣)会社、めちゃくちゃマージン取られるんですよ。年齢や学歴、技術で足元見られて手取りが減るいっぽうです」

 福田さんによれば、40代で派遣のITエンジニアは特殊能力でもない限り仕事があるだけましで、自分はもらっているほうだという。

「実家住まいなんでお金はかかりません。春日部は都心まで1時間かからないし、地下鉄直結で便利です。家を出る理由がないしお金もったいない」

 福田さんは趣味以外にお金を使うのは考えられないと語る。服は母親がたまに買ってきたもので、好みもないので何でも着るという。ポロシャツのロゴも靴のロゴも某タイヤメーカーのもので、たしかに地方の年配の人によく見られる服装だ。店内でもキャップを脱がないのは若ハゲが嫌だという理由で、これも某タイヤメーカーのロゴが踊る。

「でも実績積めば正社員の道もあるって派遣会社の担当も言ってますし、派遣先でも評価されてます」

 3枚めのナンのお代わりを注文する福田さんは小太りで、童顔な笑みを浮かべる。45歳には見えない。店の前を通ってシネコンに向かう家族連れのお父さんよりずっと若い。お父さんたちはたぶん福田さんより年下だろう。

「高校は私立の単願でした。小学生のころは『春高』(かすこう・春日部高校のこと)に行けと言われてたんですけど、中学に上がったら成績が下がるいっぽうで」

 成績が下がった理由は、アニメとゲームだった。福田さんは当時流行したオリジナル・ビデオ・アニメーション(※OVA、放送ではなく販売が主のアニメーション)や、ファミコンより高度なゲームを遊べたパソコンゲームにハマった。

【写真】1990年東京ドームで大学入試

「野田線(現在の東武アーバンパークライン)を柏(千葉県柏市)まで行くと、アニメショップがあるんです。毎週通いました」

 つまり福田さんはオタクだ。それも中学時代のバブル期からずっとオタク。福田さんはオタク趣味と自慰(いまでも一日何回もするという)にハマってしまい、地元私立の単願が精一杯でそのまま進学した。

「高校はパソコン部。スポーツが強い学校だったので日陰者ですね。それでも高校時代は心を入れ替えて勉強しましたよ。受験にも熱心な高校だったので、環境はよかったです。ただマンモス校なんで落ちぶれた連中も多くて、連中は校内でギャングのようにカツアゲや暴力を繰り返してました。うちはスポーツも勉強もだめになったら居場所ないですもん。ほとんどは高3までに中退していきました」

 福田さんのお父さんは大手電機メーカーのサラリーマンだった。部長や子会社の役員を勤め上げ、定年退職した。

「家は裕福でした。いまも親は年金で悠々自適です。中学のころから20万円するベータのビデオデッキや40万円するゲームパソコン、20万円のコンポが自分の部屋にありました。テレビマンガやファミコンが関の山の友達がいつも遊びに来てましたよ」

 父親の会社の社員割で安く揃えられたと福田さんは言うが、バブル期の当時、ビデオ、パソコン、コンポは中高生の憧れだった。その大部分のメーカーが今や存在しないか事業をやめている。福田さんのお父さんの会社も合併して名前が変わった。

「大学はストレートで某工業大学に入りました。ねえ日野さん、当時で大学ストレートって、どこであろうと凄い時代でしたよね」

 福田さんに同意を求められて、私はとりあえずうなずいた。確かに、団塊ジュニアの大学受験は戦争だった。1990年入試の志願者数をみると、国士舘大学では前年より51%増、亜細亜大学で前年比31%増、立正大学は東京ドームを連日貸し切りで受験会場とした。ある地方私立大学は他地域からの受験者急増に戸惑い、入学辞退を予想して水増し合格させた結果、新入生が定員の約12倍に膨らみ、対応するために体育館を席数1000超の講義室に改造、慌てて塾講師や会社員を教員として迎え入れ文部省(現・文部科学省)から運営調査を受けた。大学の数も、大学の定員も少ないのに団塊ジュニアの数は膨大で、いまでいうFランク大学(全入大学)など存在しなかった。こぼれ落ちた者目当てに専門学校や予備校、外国に本校があるという触れ込みの謎の学校が乱立したのもこのころである。「私の入った工業大学も当時はそれなりの偏差値でした。理系というだけで文系より上でしたからね。それがいまやFランですよ。バカ大扱い。そりゃ当時だって凄い大学ってわけじゃないけど、全入でもなければバカでもない。おまけにせっかく入っても在学中にバブルが弾けて散々です」

 偏差値と文系理系をいまだにこだわるのも団塊ジュニアの特徴だ。私は少し意地悪なことを聞いてみた。

「福田さん、40過ぎたおっさんが自分のお子さんの話ならともかく、偏差値とか文系理系とか、どうなんでしょう」

 福田さんはその質問にたじろぐこと無く、ナンをラッシーで流し込む。

「なんかこだわっちゃうんですよね、そういうふうに生きてきましたから。みんなそうでしょ」

 福田さんは古参2ちゃんねらー(※日本最大の匿名掲示板2ちゃんねる、現5ちゃんねるユーザー)でもあり、いまでも文系叩きが大好きだという。最近の主戦場はYahoo!ニュースのコメント欄、通称ヤフコメ。政治には興味なく関心事はもっぱら学歴だが、高校時代にちやほやされていた体育系部活の連中が嫌いなので、スポーツ選手叩きにもいそしんでいる。とくに高卒選手は格好の標的だ。

「理系になれないから文系なんでしょ、実際クラスの大半がそうだった。運動部で調子に乗ってる奴も卑怯なスポーツ推薦で早稲田とか行くし、大嫌いですね」

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