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「巌窟王」のようなカルロス・ゴーン

■2019年最後の「脱走劇」


 昨年は、警察や検察からの脱走劇というものが何度も巷を賑わせていたが、最後の最後で保釈中のカルロス・ゴーン氏が国外逃亡するという大事件が発生した。報道ではゴーン氏の妻キャロル氏が企てたということになっているようだ。

 逃亡したゴーン氏は次のように語っているらしい。
>日本の司法制度は、国際法・条約下における自国の法的義務を著しく無視しており、有罪が前提で差別が横行し基本的人権が否定されています。私は正義から逃げたわけではありません。不正と政治的な迫害から逃れたのです。
 確かに日本の司法は「人質司法」とも呼ばれ、「推定無罪」の原則を無視した前近代的な司法制度が問題となっていたので、ゴーン氏の発言もあながち無視できない部分がある。テレビに映るキャロル氏の悲壮感を観ていても、なんとなくその心中(逃げたいという気持ち)は察することができた。

■疑うことを忘れた純粋な正義


 ゴーン夫妻にとっては、まるで、独裁国家の独房にでも入れられたかのような感覚だったのだろうと思う。

 確実な証拠も上がっていない状況で、(逮捕されること=)犯罪者というレッテルを貼られ、有罪・無罪に関係なく、罪を認めるまで延々と拘束される。これまで味方だと思っていた人々がこぞって敵に回り、国民のほとんどが魔女刈りの使徒のように、イメージだけで他人を裁きにかかる。普段、良識があるかのような発言をしている人でさえ、疑うことを放棄した純粋な正義を振りかざしてくる。

 「推定有罪」を避けるためには2つの疑いが必要になってくるが、日本では1つの疑いに比重がかけられ過ぎているように思える。
 疑うということには「ゴーン氏は有罪かもしれない」と「ゴーン氏は無罪かもしれない」という2つの疑いがあり、そのバランスが均衡していることが「推定無罪」の前提だが、後者は綺麗さっぱり忘れて、前者のみが圧倒的重圧として容疑者の身にかかってくる。この辺はライブドア事件の頃のホリエモンと同じ構図だと言える。

■ゴーン氏はモンテ・クリスト伯となるか?


 このままゴーン氏が司法の場で係争を続けても、何年も何十年も罪を認めるまで延々と裁判が繰り返されることになっただろうから、誤解を恐れずに言えば、保釈金(15億円)を置き土産として自由の身になったということなのかもしれない。ゴーン氏にとっては「お金」よりも「自由」の方が重要だったということなのだろう。

 ゴーン氏は次のようにも語っているらしい。
>やっと、メディアのみなさんと自由にコミュニケーションを取ることができます。来週から始められることを、楽しみにしております。
 日本を出たゴーン氏の心境は、監獄島から命からがら脱獄し自由を得たエドモン・ダンテスのような心境なのかもしれない。
 アレクサンドル・デュマの小説『モンテ・クリスト伯(巌窟王)』に登場するエドモン・ダンテスは、脱獄後、巨万の富を得て、モンテ・クリスト伯爵と名乗り自らを陥れた者たちに復讐するという物語だ。

 ゴーン氏の言葉、「来週から(何を)始められる」のかが気になる。

 現実が小説のようにならなければよいのだが…。

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