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2019年最大の出来事だった「香港の戦い」

今日で令和元(2019)年が終わる。平成から令和への御代替わりだけでなく、激動の1年だった。実は、日本にとって一番大きかったのは「香港の戦い」であったと私は考えている。

香港の人々が強大な中華人民共和国の人権弾圧に立ち向かったのは、あらゆる意味で歴史に特筆されることだった。空前の6・16「200万人デモ」の凄さ、そしてその後の警察との攻防は、国際社会に人権と民主主義を守る戦いがいかに重要であるかをあらためて示すことになった。

くり広げられた香港の戦いは、まず「台湾」に計り知れない影響を及ぼした。昨年11月の統一地方選に圧勝した台湾の国民党は、民進党からの政権奪還が「確実」と見られていた。しかし、香港の戦いが長期化するにつれ、台湾総統選の世論調査でダブルスコア以上のリードを許していた民進党の現総統・蔡英文氏の信じられない“大逆転現象”を生んだ。

10日あまり後(2020年1月11日投開票)に迫った総統選で蔡氏は、中国に近い国民党の韓国瑜候補(高雄市長)に勝利するだろう。焦点は、引き続き立法院選挙でも民進党が過半数を維持できるかどうかの方に移っている。それほどの「奇跡」をもたらしたのが香港の人々の不屈の抵抗だった。

人権と自由を求める香港の人々の戦いは、台湾で「今日の香港、明日の台湾」のキャッチフレーズを生み、これが瞬く間に台湾全土を席捲し、韓国瑜氏有利の予想は6月以降ひっくり返され、逆に蔡氏の大量リードとなったのだ。

仮に香港の出来事がなく、順当に国民党が政権奪還に成功していたら、中国の台湾市場への参入規制も徐々に「撤廃」されていっただろう。韓国瑜氏の政権構想は突き詰めれば中国資本を用いて「台湾経済を立て直す」という意味であり、それは、そのまま「台湾の中国化」を進めることを意味するものだったからだ。

台湾海峡が事実上、中国の“内海”になれば南シナ海に続いて東シナ海も中国の支配下に置かれ、尖閣や石垣島は脅威に晒され、日本の安全保障は根底から覆されることになる。すなわち、台湾は「日本の命綱」なのだ。だからこそ香港が「日本を救った」ことになるのである。

私は11月24日、香港区議会議員選挙の結果を徹夜で見守った。周知のように香港では完全自由選挙は区議会議員選挙しかない。行政長官は事実上「北京政府の指名」で決まるし、日本の国会にあたる立法会も、香港市民は「半分の議席」しか選べない。

つまり、区議会議員選挙だけが香港に許された“完全直接民主選挙”なのだ。ここで7割を占める親中派議員がその勢力を守るか、あるいは過半数を維持すれば、香港のデモは「香港の民意を表わしていない」という中国側の言い分を証明することになっただろう。言い換えれば国際社会の応援の声は「一挙に萎む可能性」があったのだ。

だが、投票当日、投票所には区議選史上初めて有権者の長い列ができた。そして結果は投票率71%と香港の中国返還以来最高を記録し、親中派が「59議席」まで激減し、民主派の議席が80%を超える「388議席」となり、地滑り的大勝利を果たしたのだ。

当選者の中には、安定的な仕事を辞め、退路を断って立候補した若者も少なくなかった。彼らは敢然と立候補を決意し、そして勝ったのだ。香港の民意を表わしたこの大勝利は、香港の人々が自由と人権、そして民主主義を守り通すという国際社会への宣言でもあったのである。

だが、日本に多大な影響を及ぼしてくれた香港の戦いに、日本は国会で支援の決議ひとつできず、なんのアクションも起こしていない。米国が香港人権民主法を成立させ、欧米各国が香港の民主運動を支援する声明を出し、ウィグルでの人権弾圧にも非難声明を出したのとは対照的だった。日本は、そこまで中国を恐れているのだ。

2019年は世界で初めて日本が「人種差別撤廃」を訴えてから「100年」の記念すべき年だった。100年前の1919年、ヴェルサイユ会議で堂々と人種差別撤廃を訴えた日本に、世界中で植民地を保有する欧米列強は反発し、その後の日本が悲惨な道を辿ったのは周知の通りだ。

しかし、100年後に顕在化したのは欧米ではなく、肥大化した中国によるチベット、ウィグル、香港などに対する弾圧と強権支配だった。だが、日本は政府も国会も、この問題を素通りするという情けない姿を曝け出したのだ。

非難どころか2020年4月、日本には習近平・中国国家主席が国賓として来日する。つまり、両陛下との写真が世界に向けて発信されるのだ。チベット、ウィグル、香港……民衆を弾圧し、人権を踏みにじる国家の元首が「日本に対する外交勝利」を国際社会に誇るのである。

30年前の天安門事件でも、日本は「天皇訪中」によって各国の経済制裁を蹴散らし、国際社会への復帰のための中国の“手足”となった。そんな歴史の二の舞だけは避けたいという国民の願いは届かないのだろうか。2020年は、自由と人権を守る人々の信念と気概に応える日本になりたいものだ。

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