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箱根駅伝 早大・櫛部の大ブレーキを映し続けた日テレの葛藤


箱根駅伝初代チーフプロデューサーの坂田信久氏

 箱根駅伝の歴史の転換点となったのが、1987年に始まる全国中継だ。「正月の風物詩」として定着させた日本テレビ・箱根駅伝中継初代チーフプロデューサーの坂田信久氏が当時の中継にまつわる苦労や工夫を振り返る──。

 * * *

 1987年の初中継が決まったのは前年の6月。ギリギリまで技術陣の多くが難色を示しました。最大の課題は、山中の移動中継車からの映像をどう伝えるか。

 電波はその通り道に木の葉が1枚あるだけで遮られてしまう。中継車の屋根にある発信機を人力で動かし、上空のヘリ経由で電波を送ることにしましたが、悪天候だとヘリは飛ばない。

 それに備え、事前にアンテナを背負って山を登り、中継基地用の場所も探しました。送信機を操るスタッフは「人間羅針盤」と呼ばれ、操作の練習を重ねた。

 そうして実現した中継で忘れられないのが、1991年の2区での早稲田大・櫛部静二(現・城西大監督)の大ブレーキ。花田勝彦、武井隆次とともに“早大三羽ガラス”と呼ばれたが、1年で2区に抜擢されるも失速。トップから14位まで順位を落とし、フラフラの状態で襷をつないだ。

 放送室でディレクターの田中晃(現・WOWOW社長)が私を振り返り「このまま映していいのか」と問いかけてきた。視聴者を釘付けにする“おいしい絵”だが、選手には屈辱的です。

「この絵でいいんだ」と答えた後、こういう葛藤を共有できる中継チームでよかったと心から思いました。

 5年ほど前、櫛部氏に会った時にお詫びすると、「決していい気持ちじゃなかったけど、いいんです」と言ってくれました。

※週刊ポスト2020年1月3・10日号

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