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リスクの大小は比較することでイメージすべし ~「リスクのありなし危険論」は、ほぼフェイク~

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 "リスクの伝道師"SFSSの山崎です。本ブログでは、毎月食の安全・安心に係るリスクコミュニケーション(リスコミ)のあり方を議論しておりますが、今月はいつも我々が消費者市民むけのわかりやすいリスコミ手法として用いている、リスクの大小を比較することで回避すべきリスクをイメージするコツについて、解説したいと思います。

 本ブログでも過去に何度かお伝えしていることだが、「リスク」とは「いま危険」という意味ではない。「ここ30年間事故(危険)がないから安全だよね」という感覚で、リスク評価/リスク管理を怠っていると、不運が重なったときに取り返しのつかない「危険」に遭遇する。「リスク」とは将来の「危うさ加減」「やばさ加減」をあらわすモノサシであり、不確実性をともなうものなので、過去に事故がなかったとしても、大きなリスクを放置しておくと突然やってくる。福島第一原発事故のように・・

 だから、「あんなに大きな津波が来るとは想定していなかった」という言い訳は通用しないわけで、もし万が一、大きな津波がきた場合に備えて、リスクを許容可能な水準に抑える対策をうっておけば、危険には遭遇しなかった可能性が高いということだ。もしかしたら明日にでも発生する大震災にそなえて、耐震構造の家にすむことなども、リスク低減策のひとつだろう。では、どの程度のリスク管理ができていればよいのだろうか?

 その目安を知るうえで重要なポイントが「安全」の定義だ。すなわち「安全」とは、リスクが許容可能な水準(Tolerable="それくらいなら我慢できるよ"というレベル)に抑えられている状態をいうのであって、決してリスクがゼロという意味ではない。とくに我々がテーマとしている「食のリスク」を考える際に、一般食品が天然物の集合体(Mixture)であることを前提とすると、ゼロリスクはあり得ない。おそらく発がんリスクをかかえた物質も多数含まれるだろうし、食塩やアレルゲンなども人体への健康リスクを発現する天然物の一種として自明だろう。それでも社会は、この程度のリスクは許容可能な水準として「安全」と受け入れているのだ。

 しかし、ともすれば我々が毎日食している天然物の塊である一般食品を摂取しても、人体への悪影響(危険)は目に見える形で現れないことから、リスクがゼロだと勘違いしがちだ。そこに突然登場した奇妙な危険源(ハザード)、すなわち原発事故由来の放射性物質(セシウムやトリチウムなど)などが食品に混入したら、「リスクがない」ので安心して食べていたのに、新たな「リスクがある」食品は許容できない、と感じるのも自然な感覚だろう。

 実際にたとえば、福島県の海産物が20ベクレル/kgの放射性セシウムに汚染されていた場合に、「放射線被ばくは閾値がないので、ゼロでない限り発がんリスクが否定できない」などと主張する専門家がいると、たとえ20ベクレル/kgの放射性セシウムに汚染された一般食品は市場に流通することは法的に問題ない(社会は「安全」として許容している)のに、そんな「リスクがある食品」は許容できない(我慢できない=「危険」)とする消費者もおられるわけだ。これが「リスクのありなし危険論」であり、一度放射性セシウム検査で「不検出」となれば、今度は「リスクがないから安全」と短絡的に安心してしまうので、困ったもんだということになる。

 放射性物質検査で 「不検出」とは放射性セシウムがゼロという意味ではない。今回の検査機器では検出できないレベルであったということだ。だから、50ベクレル/kg以下は検出できないような検査機器なら、同じ20ベクレル/kgに汚染した食品でも検査結果は「不検出」となる。それは詐欺じゃないかと思われるかもしれないが、ウソはついていないので食品事業者は罰せられない。むしろ、「ゼロリスク」を求める消費者サイドのリスクリテラシーが低いから、このような「リスクのありなし論」のテクニックで安心させられるのだ。

 検査結果が「不検出」なら十分リスクが小さいから「安全」でいいのでは?と言われる方がおられたら、では20ベクレル/kgでもよいんですね?ということになる。検査機器の精度が違うだけで、汚染濃度は同じだからだ。それよりも、この微量の放射性セシウム汚染で、どのくらいの被ばく量なのかをリスク比較したほうが、許容可能な水準かどうかを判断するうえで重要ではないだろうか?そこで我々が食の放射能汚染のリスクを伝える際にいつも使う手法は、一般食品に含まれる天然食材からの放射線ひばく量(バックグラウンド値)をまず知ってもらうことだ:

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