- 2019年12月31日 10:32
2019年読むべき政治本、韓国・中国本3選 日本政治を考え、中韓を理解するための基本書
3/4【中国を知る】往還する統治への志向
選者・安田峰俊(中国ルポライター)
渡邉義浩『始皇帝 中華統一の思想 「キングダム」で解く中国大陸の謎』
(集英社)

漫画『キングダム』でもよく知られる、秦帝国を支えた法家の思想を説く。中国の国家統治は21世紀の現代に至るまで、強力な政権が成立するたびに、国家が個々の人民を把握したがる法家的な厳格な統治への志向(「収」)がしばしば顔を出してきた。ただ、広大な国土と多すぎる人民ゆえに厳格な統治は長続きせず、体制が弛緩して人民の自由奔放な世界(「放」)が現出するのが常だった。中国をまとめ上げようとする「収」志向の原点を、平易な文体で理解できる一冊。
梶谷懐・高口康太『幸福な監視国家・中国』
(NHK出版)

現代中国は1970年代末から鄧小平体制のもとで「放」の方向性が進み、前政権の胡錦濤政権時代に頂点に達した。それを一気に「収」に戻したのが習近平政権だ。ただし、始皇帝から毛沢東まで続く過去の「収」志向の権力者らと異なり、習近平はデジタル技術によって、広大な国土と多すぎる人民の把握と管理を可能にしつつある。
いっぽう、少なからぬ人民がその管理体制にさほどの嫌悪感を抱いていないのは、もともと強大な指導者による「収」の統治を歓迎する歴史的素地が存在するからかもしれない。そんなことも考えさせる一冊。
益尾知佐子『中国の行動原理』
(中央公論新社)
この「収」志向の習近平支配を、中国の伝統的な家族観における家父長支配のイメージで読み解くのが本書だ。家父長は「強い」ほうが、それに支配される人々は安心する。ただし、家父長のみに権力が集中するありかたは、その地位を狙う息子(=部下)たちによる「親殺し」の危険と隣り合わせだ。現代の習近平政権の強さと弱さがわかる一冊。
安田峰俊
中国ルポライター、立命館大学人文科学研究所客員協力研究員。著書に『八九六四 「天安門事件」は再び起きるか』『性と欲望の中国』『さいはての中国』など多数。
選者の二冊
2018年5月刊ながら、2019年5月に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞、天安門三十年の節目の年だったこともあり話題になる。向こう見ずな若者が情熱を注ぎ込んで革命を叫ぶ伝統がすっかり冷めた中国の姿は、どこか日本に通じるものもあるかも。
ルワンダの中国語人材とケニアの中華鉄道、カナダの謎の華人秘密結社、世界的発見をなしとげた恐竜オタク博士、ニューヨークに亡命中の大富豪……と、中華世界のさいはてにあるエッジな人とモノに迫る。取材が楽しかった。





