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韓国人には珍しい自己批判の本――鄭大均が語る「反日種族主義」 「反日種族主義」大論争#4 - 鄭大均

文在寅大統領ら韓国の「進歩派」に敵意むき出し――澤田克己が語る「反日種族主義」 から続く

 竹島、徴用工や慰安婦問題など韓国で通説となっている歴史認識を検証した『反日種族主義』。今夏刊行された韓国では曺国前法相が批判するなど物議を醸し11万部超、11月発売の日本版は36万部に。日韓で賛否両論、波紋を呼ぶ本書を識者が論じる。

◆◆◆


鄭大均氏(首都大学東京名誉教授)

 この本は韓国の古い性格、原初的性格を教えてくれます。そもそも李栄薫氏は「民族主義」ではなく「種族主義」と表現する。それは韓国人の内面を構成する持続的なメンタリティーのようなもので、シャーマニズムや血縁主義、韓国人に特有な自然観に結びついているという。

 なぜ韓国は中国には従順なのに、日本には敵意をむき出しにするのか。李栄薫氏はそれを「種族主義」という民族性や国民性との関係で説明するわけです。

 隣国のこの古さですが、日本人が気づいていなかったわけではない。今から100年前に朝鮮を訪れた谷崎潤一郎は「朝鮮雑感」(1918年)という随筆で、平安朝を主題にした物語に関心がある者は絵巻物を見るより、京城(現在のソウル)や平壌を歩いてみるのがよいと書いています。当時の朝鮮には今はなき日本の伝統や風景が残っているのだという視点です。

 日本統治期だった当時、韓国(朝鮮)の古さはむしろステレオタイプのように語られていた。ところが、戦後日本ではその古さや停滞性を語ることがタブーになった。日本が韓国と国交正常化したのは1965年ですが、以後の韓国がめまぐるしく変化する国になり、古さが見えにくくなったという事情もあるでしょう。

韓国における公的議論の誤りを韓国人自身が論破

 しかしどんな国にも変わる部分と変わらない部分がある。この本はその変わらない部分への注意を喚起していますが、伝統的なメンタリティーよりも現実の政治やメディアの実践のほうが重要ではないかという批判はあるでしょう。

 ただし、本書のより重要な貢献は、日本統治期の「暴力」や「収奪」といった加害・被害者性の物語の虚偽や虚構を明らかにしてくれた点にあります。

 韓国における公的議論がいかに誤ったものかを韓国人自身が毅然と論破する。その実証的部分こそがこの本の真骨頂であり、李栄薫氏やその仲間たちは命がけでやっているわけです。こんな本は滅多にありません。彼らがどういう表情やしぐさでどう論破しているか知りたかったら、ユーチューブの「反日種族主義」でその映像をご覧になったらいい。日本語字幕つきですから心配はない。

 韓国人には珍しい自己批判の本です。日本人の自己批判には時流に媚びる性格のものが多いが、これはそんな甘ったるいものではない。韓国のアイデンティティーに突きつけられたもっとも本格的な異議申し立ての声でしょう。韓国でも日本でも日本統治期についての議論が起きてくれればいいのですが。

嫌韓派は「やはり韓国人の歴史認識は間違いだった」と浮かれてはいけない――小倉紀蔵が語る「反日種族主義」 へ続く

(鄭大均/週刊文春 2019年12月19日号)

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