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単なる反韓・嫌韓本ではなく、現在の韓国を憂えて記した“憂国の書”――石破茂「反日種族主義」を語る 「反日種族主義」大論争#2 - 石破 茂

「みっともないことするなよ」日韓W杯で韓国に思ったこと――川淵三郎が語る「反日種族主義」 から続く

 竹島、徴用工や慰安婦問題など韓国で通説となっている歴史認識を検証した『反日種族主義』。今夏刊行された韓国では曺国前法相が批判するなど物議を醸し11万部超、11月発売の日本版は36万部に。日韓で賛否両論、波紋を呼ぶ本書を識者が論じる。

◆◆◆


石破茂 衆議院議員

 今年の秋口のことです。日韓両国の要人が集まるフォーラムでスピーチを頼まれました。そこで私は「かつて韓国でインフラを整備したり、教育体制を整えたりする日本人がいたからといって、併合時代を正当化してはならない」と話そうと考えていました。

 しかし主催者側にそれを伝えると、「たとえ『併合時代を正当化してはいけない』という趣旨でも、途中で怒って席を立つ方もいるかもしれないので、止めてください」と言われました。韓国にとって植民地時代はデリケートな問題なのだと改めて感じた瞬間でした。

 本書には発売当初から興味がありました。韓国内で若者を中心に読まれる一方、曺国前法相が「吐き気がする」と述べたように、賛否両論が巻き起こっていることは知っていた。また著者の李栄薫氏が同様の主張をした際、迫害を受けたことも聞いていました。

 その上で、通読して感じたのは、単なる反韓・嫌韓本ではなく、著者らが現在の韓国を憂えて記した“憂国の書”だということです。

 韓国で通説とされている歴史認識には誤りが多くあります。例えば徴用工。彼らは韓国では強制的に動員されて給料も満足に与えられなかった存在であるとされてきましたが、戦争末期までは自発的な就労が中心で、給料も高かった。竹島についても、韓国が領有の根拠としている安龍福の証言の信憑性は疑わしいことが判明しています。

韓国の歴史を中立公正に学ぶことが必要

 李氏は本書で、学問を職業とする研究者として、国民感情に配慮して誤った主張に固執したり、これを擁護することは許されないと述べています。そのような姿勢は結果的に国益を損ねてしまう、と。おそらく今後、韓国国内で、歴史に関する議論はより活発化して行くでしょう。本書を読んだ韓国の人々は自分たちが学んできた通説には誤りが多かったと知るでしょう。

 ただ日本人、特に政治家は本書を読んで、慰安婦や徴用工など「自分たちの主張が正しかったのだ」と鬼の首を獲ったかのように喜んでいいわけではありません。日本と韓国は永久に隣国であり、大事なパートナーです。彼らがなぜ歴史的事実と異なる不可思議な主張をしてきたのか、理由を歴史に沿って考えねばなりません。社会学者の小室直樹氏は『韓国の悲劇』で「日本人の韓国に対する文化的忘恩こそ、韓国人の対日的反感の淵源である」と指摘しています。日本人は韓国の歴史に対して、知らないことが多すぎたのも事実です。その意味で『反日種族主義』は必読の書と言えます。

 日本もこれを機に、韓国の歴史を、特定の史観に偏ることなく、中立公正に学ぶことが必要でしょう。それこそが悪化の一途を辿っている日韓関係を、改善させる一歩になるのです。

(石破 茂/週刊文春 2019年12月19日号)

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