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外交を「好き嫌い」で熱弁する人につけるクスリ

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日韓問題をはじめ、諸外国をめぐるさまざまな国際課題を正確に把握するにはどうすればいいか。政策工房会長の髙橋洋一氏は「外交問題は“わかったつもり”でいるから感情論が生まれやすい。『川を上り、海を渡る』思考が必要だ」と指摘する――。

※本稿は、髙橋洋一『外交戦』(あさ出版)の一部を再編集したものです。


※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Oleksii Liskonih

■「庶民にはわからないこと」で片付けてはいけない

「国際関係とは何か」と問われたら、読者は何と答えるだろうか。

ひと言でいえば、国際関係とは国家間の「貿易」と「安全保障」のことである。

貿易と安全保障は表裏一体であり、それを国家間でどうしていくのかを話し合うのが「外交」だ。

「貿易と安全保障の原理原則」をまとめたうえで、このところ目立った動きを見せている国際関係を解説したものが、本書『外交戦』である。

私は、書名の類はすべて編集担当者に一任している。それにしても、なんだか禍々しい響きすらある書名となったものだが、ある意味では、「外交」というものの性質を端的に表している。

外交は、実弾の飛び交わない戦だ。昨今の国際関係に目を向けてみても、各国が貿易と安全保障をめぐってしのぎを削っている。

片方が何か手を打てば、もう片方が別の手を打つ。お互いに国益がかかっているから簡単には引かないし、片方が少しでもスキや弱みを見せたら、もう片方はさらに畳み掛ける。

「相手が引いたら押す」「自分が引いたら押される」――。ひとたび互いの国益が衝突しようものなら、こうした押し合いが起こるのが外交なのだ。

もちろん現代では、実弾が飛び交う戦はそうそう起こらない。少なくとも民主主義国同士では、戦争を極力回避するという力学が働いている。それでも、どうしたら貿易と安全保障を最大限、自国に有利に持っていけるだろうかと戦略を練り、つねに出方を伺っている。

そういう意味では「平時」などじつは存在せず、随時随所で、外交という「戦」が繰り広げられているといってもいいだろう。

そして、一般人は、みずからが外交のプレイヤーとなることはなくても、もっと具体的に外交の何たるかを知っておいたほうがいい。間違っても「雲の上で行なわれている、庶民にはよくわからないこと」で片付けてはいけない。外交には国益がかかっており、国民の利害に直結するからだ。

■「経済同盟」と「軍事同盟」は一体になって当然だ

貿易と安全保障は、密接につながっている。経済的結びつきが強ければ、軍事的結びつきも強くなるし、その反対もまたしかりだ。対立し、いつ戦争になるかわからない相手とは誰も貿易しない。

ひとたび戦争になれば、相手国への投資がムダになるばかりか、貿易のために相手国に駐在している自国民が拘束されたり、はては殺害されたりといった被害に遭う危険も高まる。

このように単純に考えても、貿易は、戦争が起こる可能性がきわめて低い国、すなわち安全保障条約が結ばれており、軍事的結びつきが強い国と行うことが前提となる。

貿易が盛んな国とは、必然的に安全保障上の関係も強まるし、安全保障上の関係が強ければ、貿易も盛んになる。

お互いの利益を守るためには、軍事的な争いを避けることが一番だ。また、貿易をしてお互いに利益を持ち合っているのだから、片方の危機はもう片方の危機にもつながる。

たとえば、貿易の相手国が他国から攻撃され、国内経済がめちゃくちゃになったとしたら、その経済的損害は自国にも降りかかることになる。

貿易の盛んな国とは一蓮托生、リスクを共有しているということだ。だから「経済同盟」と「軍事同盟」は一体になって当然なのだ。

■「川を上り、海を渡る」思考とは何か

物事を考える際には、「過去に似た事例はなかったか」「海外に似た事例はないか」と探ってみることが欠かせない。こうしたものの見方を、「川を上れ、海を渡れ」という。私が官僚時代、先輩諸氏からつねづねいわれていたことであり、今も、ものを考えるときの基本の1つになっている。

今、考えている問題に似たような出来事が過去になかったか。海外になかったか。

あったとしたら、どのような経緯をたどったか。

「川を上り、海を渡る」と、先例から学べるとともに、物事の因果関係がわかってストンと腹落ちすることも多いのである。これは何を考える際にも重要な視点だが、こと国際関係を考える際には欠かせない。国と国のお付き合いこそ、過去、それらの国の間で何があったかという経緯が、今と将来の関係を決定づけるからだ。

「川を上る」――歴史を振り返る際に、何が基になるかといえば、中学や高校レベルの世界史だ。

私はプリンストン大学に留学した際、国際政治学を学んだ。そこでは、博士レベルの高度な知識を身につけたわけだが、じつは外交問題で歴史を振り返る際中学、高校で習った世界史が意外と役に立つことも多い。

歴史的経緯も踏まえて考えることで、今、何が起こっているかをより深く理解し、今後、どうなることが望ましいかについても、ある程度、確度の高い見方ができる。

「海を渡る」――海外の事例を探ってみると「井の中の蛙」にならずに、より広い視野から普遍的に物事を考えられる。そこから本質が見えてくることも多い。

国際関係について考える際、私は国際法や国連憲章を見ることにしている。これも1つの「海を渡る」思考法といえるだろう。

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