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東京湾岸の新注目エリア「有明」 五輪後も発展できるのか

高層ビルやマンションの建設が進む有明(2019年2月時点・時事通信フォト/朝日航洋)

 晴海や豊洲など東京都内の湾岸エリアは、タワーマンションなどが建ち並び開発が進んでいるが、いま注目されているのが、江東区・有明エリアだ。大規模な商業施設やタワマン建設が急ピッチで行われ、来年の東京五輪を前に新たな人気スポットになりそうな気配も。果たして有明の未来は本当に“明るい”のか。住宅ジャーナリストの榊淳司氏がレポートする。

 * * *
 東京五輪の開幕が迫っている。ということは、閉幕も近づいているということだ。

 五輪の競技会場の多くが、東京都江東区の湾岸エリア・有明に仮設されるが、五輪閉幕後は撤去される予定の施設もある。そうなれば、有明は元の有明に戻されてしまうのだろうか。

 ひとつ、五輪開催前後で大きく変わることがある。それは「ショッピングシティ 有明ガーデン」という複合商業施設が開業することだ。

 予定ではオープンは2020年の春とされている。有力なテナントは、8000人収容といわれるイベントホール、劇団四季有明劇場、イオンスタイルなど。商業施設の延床面積は約17万2500平方メートル。豊洲のららぽーとが約16万5000平方メートルだから、それを凌ぐスケールだ。この有明ガーデンが、五輪後の有明を変えるだろうか?

 もともと、江東区の有明というエリアが埋め立てられて今に近い状態になったのは、1971年頃とされる。ポツポツとタワーマンションが建ち始めたのが15年ほど前からだ。それまで30年以上の長きにわたって放置同然の状態に置かれていた理由は何なのか。

 ひとつには1996年に開催予定だった「東京都市博覧会」が中止に追い込まれたことによる、東京都の挫折感があるだろう。また、その頃から顕著になった日本経済の停滞感が「もはや東京にフロンティアは要らない」という空気を醸成したのではないか。

 しかし、実のところ東京という都市は膨張を続けていた。人口は流入し続けたのだ。

 折も折、1997年に建築基準法の容積率基準が緩和された。20階以上のタワーマンションがより建設しやすくなったのだ。そのため、有力なマンションデベロッパーたちは、きっと東京周辺を見渡したに違いない。都心に直線距離が近くて、まだまだ開発用地が豊富に供給されるエリア──それが江東区の湾岸エリアだった。

 やはり、最初に開発が進んだのは、地下鉄有楽町線が乗り入れていた豊洲。「アーバンドック ららぽーと豊洲」が開業したのは2006年だった。その周辺は当初、三井不動産が中心となって開発が進み、タワマンがどんどん建ち始めた。今では首都圏有数のタワマン林立エリアとなっている。

 一方、有明はやや取り残された。理由は交通利便性が悪いからだ。ゆりかもめは1995年、りんかい線は1996年に開通している。しかし、人々に「便利になった」というイメージは与えなかった。

 私は今でも有明を訪れる度に腹立たしい思いをする。殺風景な街並みの中を何百メートルも歩かされるからだ。それは車で行った場合も同じ。駐車場から目的の施設までの距離が、総じて遠い。有明エリアは都市計画の典型的な失敗作だと感じた。「この街に未来はない」と、私は考えていた。

 ところが、有明にも明るい未来が見えそうな出来事が続いた。

 まず2010年、住友不動産が有明ガーデンの開発地を東京都から取得。競争入札で一度は不調に終わったいわくつきの土地。そこを不調だった時の予定価格からかなり安い価格で取得したのだ。

 あの当時、不動産業界では、「あんなところ買って、住友不動産は大丈夫?」という空気が流れていたように思う。しかし、今から思えば住友不動産には先見の明があったのかもしれない。

 2013年秋には、湾岸エリア全体の歴史を変える出来事が起こった。2020年の東京五輪開催が決定したのだ。ハッキリ言って、その瞬間から有明も含めた東京湾岸エリアのマンション市場にはかつてないフォローの風が強力に吹きだした。決定の翌日から、それまで閑古鳥が鳴きそうだった新築タワマンのモデルルームには予約が殺到。人で溢れ返った。中古マンション市場でも、目に見えて値上がりが始まった。

 もっとも顕著に値上がりしたのは中央区の勝どき周辺、そして選手村が予定された晴海エリア。江東区では豊洲エリアが人気化した。それで、有明は……当然、有明にも好ましい変化は現れた。中古マンションの値上がりである。しかし、他のエリアに比べれば、その動きはやや鈍かった。

 さて、問題はやはり東京五輪が閉幕した後に、どこまで街を活性化できるかだろう。住友不動産が東京都から取得した有明の土地の一部は今、「シティタワーズ東京ベイ」として、すでにその雄姿を有明の街並みの中にそびえさせている。

 建物完成は2019年の7月だそうだ。ただ、まだ人が住んでいる気配がない。購入契約者への引渡しや入居も行われていない。

 現時点(2019年12月20日)で、オフィシャルページには販売戸数が「411戸」と表示されているが、入居予定日は「2021年4月下旬」。五輪が閉幕して半年以上も経過してからだ。ということはつまり、今からこのマンションの購入を契約しても、居住者として五輪の臨場感を味わえないことになる。

 前述の通り、有明ガーデンの商業施設は2020年の春に開業予定とされる。五輪には十分に間に合っている。自慢のイベントホールも、こけら落としには大物タレントの公演が噂されている。

 五輪閉幕後、有明エリアが発展していけるのかどうかは、この有明ガーデンの賑わい次第ではないかと思う。ここが日常的に他エリアから多くの人を呼び込める商業施設となれば、有明エリアの未来は明るい。だが、そうならなければ……。

 有明の隣接エリアである台場の例もある。台場は1996年頃に「お台場ブーム」とも呼ぶべき現象が起こった。デートスポットや家族のレジャースポットとして人気が集まったのだ。フジテレビも移転して、おしゃれなエリアとして注目された。

 しかし、その現象は一瞬にして終わってしまった。お台場ブームが続かなかったのはやはり、交通利便性の悪さが最大の理由だろう。

 有明は台場よりもさらに交通利便性が悪い。五輪が開幕し、閉幕してもその条件は変わらない。つまり、有明ガーデンの繁栄には交通利便性という大きなハンディキャップを克服できるか否かにかかっていそうだ。乗り越えるべきハードルは高い。

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