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福島第一原発 汚染処理水は海洋へ 風評被害対策は国民理解から

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●トリチウムの人体への影響は

「有機結合型トリチウムは体内で濃縮」「その他の放射性物質と比較してもなお危険」といった意見が根強くあることから、ALPS 小委員会では、学術論文誌に掲載されている情報を元に、以下のとおり整理しました。

 (放射線の生体影響) 

・シーベルト(Sv)は、放射線被ばくがヒトに与える影響の目安。

→物理的な放射線量を基に、「同じ影響が同じ数字になる」ように計算した数値。 

・放射線の生体影響の有無や程度は、被ばく線量及び線量率に依存して決まる。  

・確定的影響は、一定の線量(しきい値)以下では誘発されない。

最も低いしきい値の例:胎児への影響 100mSv、白内障 50mSv。

・確率的影響は線量の増大につれて発生確率が増すが、100mSvを下回ると統計的に有意な増加は見られなくなる(自然発生頻度の変動の範囲内となる)。原爆被爆者の疫学調査では、固形腫瘍で150mSv未満、白血病で200mSv未満の場合には統計的に有意な増加が確認できないことが報告されている。

・放射線はDNAに損傷を与えるが、細胞にはDNA損傷を修復する仕組みがある。 

・DNAには普段から様々な原因で損傷が入っていて、その大半は速やかに修復。

→放射線による損傷がごくわずかであれば自然の事象との違いは見えない。

(トリチウムの生体影響) 

・トリチウムは弱いベータ線だけを出すので、影響が出る被ばく形態は内部被ばく。 

・国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告による預託実効線量(大人50年間、子ども70 歳までの被ばく)  

トリチウム水(HTO):1Bq当たり0.000000018mSv

有機結合型トリチウム(OBT):1Bq 当たり 0.000000042mSv

体内に取り込まれたトリチウム水(HTO)のうち約5~6%がOBTに移行するため、その影響も考慮した数値。OBTの多生体内の半減期は、40 日若しくは1年程度の2タイプがある。それも考慮した上でトリチウム水と比較して2~5倍程度の影響。

トリチウム化合物からの内部被ばく量は、類似した体内分布を示す水溶性の放射性セシウム(セシウム 137)と比較して300 分の1以下となる。 

・これまでの動物実験や疫学研究から、「トリチウムが他の放射線や核種と比べて特別に生体影響が大きい」という事実は認められていない。

マウス発がん実験では、線量率が 3.6mGy/日(飲み水のHTO濃度:約1億4千万 Bq/L程度)以下で頻度、質ともに自然発生と同程度となっている。  

原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)によると、原子力関連施設の作業従事者のガン致死に関する、100mSv 当たりの過剰相対リスクは、原爆被爆者からの評価値と同程度であり、「トリチウムは他の放射線や核種に比べて健康影響が大きい」という事実は認められない。  

また、トリチウムを排出している原子力施設周辺で共通にみられるトリチウムが原因と考えられる影響の例は見つかっていない。 

・日本における、個別の放射性物質の放出に係る規制基準値は、70 年間、毎日摂取する全ての水がトリチウムという放射性物質を含む水であった場合に、70mSv、つまり、平均して、公衆の被ばく限度である年間 1mSv となる濃度である。 

●国内外の原発からトリチウムが既に排出

(出所:経済産業省)

  原子力施設において発生する廃棄物は3つあり、①気体放射性廃棄物、②液体放射性廃棄物、③固体放射性廃棄物に区別されています。①気体及び②液体放射性廃棄物については、濾過、吸着、放射能の時間による減衰、多量の水又は空気による希釈等によって放射性物質の濃度をできるだけ低下させ、各国の規制基準によって環境中に放出することが認められています。

放射性廃棄物のトリチウムは、国内の原発から排出しています。

・1サイト当たり数100億Bqから100兆Bq程度を海洋に放出。

・加圧水型軽水炉では事故前5年平均の実績は1サイトあたり約18兆~87兆 Bq/年

・沸騰水型軽水炉では事故前5年平均の実績は 1 サイトあたり約210億~2.0 兆 Bq/年。

・国内の原発全体では、事故前5年平均で年間約380兆Bq放出。

・周辺海域の海水濃度は検出下限値未満~1,100Bq/L。なお、国内の再処理施設においては、最大で年間1300兆Bq(2007 年度)の放出実績もあるが、周辺海域の濃度変化は検出下限値未満~1.3Bq/L18の間に留まっている。

  また、使用済燃料プール等から自然に蒸発した水蒸気に含まれるトリチウムが、換気に伴い、大気に排出。

海外においても国内と同様に原子力施設からの海洋放出しています。再処理施設からは年間1京Bq以上放出するサイトがあるほか、重水炉を有するサイトでは年間数100兆Bq放出。こうした重水炉、例えば、カナダのブルース原子力発電所の周辺の湖水濃度は3~88.9Bq/L(2016 年)であるほか、大気中水分濃度は検出下限値(~3Bq/m3)未満となっています。

  米国スリーマイル島原子力発電所事故の際には、ボイラーにより強制的に蒸発させる水蒸気放出が行われ、水蒸気放出したトリチウム量は約24兆Bqであり、水量は約 8,700m³、放出には 2 年以上要したと言います。

●韓国の原発でもトリチウムを排出

(出所:経済産業省)

福島第一原発事故によって、福島はじめ周辺県の農産物を輸入規制している隣国・韓国では、月城原発から液体で23兆Bq、気体で120兆Bqが放出されており、問題は出ていません。

●福島第一原発の事故前、事後後

事故前の福島第一原発では(平成 22 年度実績)、年間約2.2兆Bqの海洋放出、約 1.5 兆Bqの水蒸気放出を行い、福島第二原発では、年間約 1.6 兆 15Bq の海洋放出、約1.9兆Bqの水蒸気放出の実績があると言います。

  事故後の福島第一原発において、海洋の排出している地下水にも告示濃度限度より十分低い濃度のトリチウムが含まれています。

(出所:経済産業省)

 以上、福島第一原発内に、溜まり続ける処理水のトリチウム(現在856 兆Bq)を、毎年上限を決めて計画的に海洋の排出することは、問題がないとの当然の結論に至ります。トリチウムは、宇宙から7京Bqが降り注ぎ、海外の再処理施設から1京Bq、国内外全ての原発施設から1千兆Bq以上が排出されている現在、事故前の我が国の原発からのトリチウム排出量の370兆Bqだったことを考え、また、現在原発再稼働が遅れていることからトリチウムの排出量が年間100兆Bqに留まっていることから、問題がないと言えると思います。

●原子力規制委員会も「希釈して海洋放出が現実的な唯一の選択肢」

 廃炉作業はじめ原発の安全性を監視する政府から独立した原子力規制委員会の更田(ふけた)豊志委員長は、科学的見地から「希釈して海洋放出が現実的な唯一の選択肢」と明確に記者会見や国会答弁において述べていることを付言しておきます。

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