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史上最高の「M-1」は優しさに満ち溢れていた

終わった直後から「史上最高」との呼び声も高かったことしの「M-1」。

隠れキーワードは「優しさ」だったと思う。

和牛を破って最終決戦の3組に滑り込んだぺこぱは、ツッコミという概念を優しくシルクの布でくるんで別物にしてしまったような産物だ。あの田舎のボンボンのような見た目のシュンペイのボケを、ホストなのかヴィジュアル系なのかまだキャラが定まっていない松陰寺太勇がツッコむ、かと思いきやふと立ち止まり、思慮し、認めてしまう。新しい、新しすぎる。また、松陰寺に関しては下手な演歌歌手を凌駕するそのキャラの“苦節っぷり”がにじみでていて、否が応でも応援したくなってしまう。

そして、シンデレラボーイになったミルクボーイも、キモは「優しさ」ではなかったか。ボケの駒場孝の言わんとしている「なにか」を、昭和からタイムスリップしてきたかのようなビジュアルのツッコミ・内海崇が「○○やないか」「○○ちゃうやないか」といったりきたり。われわれ観客は、「コーンフレーク」でありながら「コーンフレークならざる何か」という「空集合」に釘付けにされる。

結局あれは、コーンフレークだったのかどうか、最後までわからない。とにかく言えることは、我々はおそらくコーンフレークをもってしてここまで笑わされるのは、後にも先にもこの日だけだっただろう。
しかし、あの漫才を受け入れられやすくしている土壌は、あの内海の角刈りと渋い色のスーツという昭和のおっさんビジュアルと、関西のおばはんのような物言い、つまり「懐かしさ」という「優しさ」である。

なお、筆者はミルクボーイの予選動画ですぐに「こ、こいつらやばい」と気づき、10本ぐらいネタを公式動画を漁った。すべて「やないか」「ちゃうやないか」という同じパターンなのだが、結構毒っ気の強いものもある。それらを避けて、「コーンフレーク」「最中」の比較的優しめな2本を選んだことも勝因だったのではないか。

そして、今回はM-1全体が「優しさ」に包まれていたとかのように思える。これは2015年~の新生M-1には特に感じてきたことだが、出場者も審査員をはじめとする出演者も、みなが「テレビ番組」として、協力的であることに毎度のことながら感動を覚えてしまう。

例えば今回でいえば、トップバッターのニューヨーク屋敷が「笑いながらツッコむのが好みではない」というダウンタウン松本人志の指摘から、さまざまな笑いへと展開されていった。みな、芸人人生を駆けたネタ披露の直後なのに、各出演者がいろんな絡み方をして笑いをとっていく。大会開始からしばらくあった、「ある意味面白いけど、万人受けは絶対しない殺伐とした雰囲気」はどこにもない。

そこに、「史上最高」と言われても過言ではないレベルの高いネタが出揃った。
 
今回のM-1が「史上最高」と謳われるとしたら、「テレビ番組」というコンテンツとしての成熟、そして出場者らの質の成熟が、タイミングよく同じ大会で相まみえ、そしてそこで、ほぼ無名だったニュースターを誕生させた、ということにあるのだろうか。

何より、見終わったあとに今まで以上に漫才という文化が好きになり、見た者だれもが、漫才について誰かと語りたくなる。

もちろん、民放のテレビ局が開催している以上、営利目的であることは大前提である。

しかし、大会前、大会中、そして大会後のSNSなどでの盛り上がり、メディアでの報道規模を見れば分かることだが、一局の利益は軽く超えるほどの影響力、そして貢献度であることは言うまでもない。

漫才が何かの集団になっているわけではない。漫才のための漫才大会。今年のM-1の優しさが向けられているのは、何を隠そう漫才に対してなのである。

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