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東京五輪前後でビールのヒット商品と業界勢力図は激変する!

酒税改正で激戦が予想されるビール市場(時事通信フォト)

第3のビールでトップシェア争いを繰り広げる本麒麟(キリン)と金麦ゴールドラガー(サントリー)

2020年2月、黒ラベルとヱビスの材料を使った「ゴールドスター」を発売予定のサッポロ

第3のビールで苦戦するサッポロ「麦とホップ」

アサヒビールは主力スーパードライの販売をどこまで底上げできるか

キリンとサントリーは内臓脂肪を減らすノンアルビールで激突

 来年2020年は、ビールメーカーにとって転換期の幕開けとなる──。2020年10月に続き、2023年10月、2026年10月と、3段階にわたって酒税改正が行われるからだ。

【写真】ビール各社のヒット商品

 タバコと同様、増税の標的になりやすいビールだが、過去を遡ると、ビール増税への対応で1994年に割安な「発泡酒」が登場し、その発泡酒が増税となって2003年、さらに低価格の「第3のビール」がお目見えした。いわば増税のたび、ビールメーカーは苦肉の策として新たな商品を投入してきたのだ。

 そして来秋、第3のビールが増税(350ml缶1本あたり10円の増税)となる。ただし今回は、一方でビールが初めて減税(同7円の減税)となり、“増減税抱き合わせ”である。

 現在はビールの酒税が最も高く、350mlあたり77円、発泡酒が47円、第3のビールが28円。これが10月からはビールが70円、発泡酒は現状維持で47円、第3のビールが38円となる。さらに、2023年には第3のビールは発泡酒と統合されて酒税は47円で同額に。そしてゴールの2026年には、ビールと発泡酒も54.25円で一本化される。

 ともあれ、まずは来年10月である。サッポロホールディングスの尾賀真城社長は以前、メディア向けの事業説明会の席上、こう語っていた。

「消費増税は、今回は2%のアップ幅でしたので、第3のビールで1本2円強(350ml)、ビールで1本4円強の増税。なので、当初はそんなに駆け込み需要は発生しないのではないかと考えていました。ところが、実際には想定以上の駆け込みがあって、消費者の節約志向が根強いことがわかったのです。

 となると、第3のビールで1本10円の増税、ビールで1本7円の減税となる2020年10月以降は、かなり大きな消費変化の起点になっていくはずで、そこに照準を合わせてどんな打ち手を出していくかが重要です。

 もっといえば、まだ先の話にはなりますが、酒税が1本化される2026年は、国内のビール類の市場構造が大きく変わっている可能性がある。当社にとってはすごく楽しみですね」

 2020年は、ビール需要の最盛期である盛夏に東京オリンピック開催が控えていることから、仮に冷夏や長雨などの天候不順があったとしても、訪日外国人増加も追い風に、例年以上にビール類の消費は増えそうだ。

 そうなると、ビールメーカー各社も春先からスタートダッシュをかけ、夏の五輪商戦に突入し、8月9日に五輪が閉幕した後も、9月には増税直前となる第3のビールの駆け込み需要が相当、見込まれる。

 ということで、秋口までは例年以上に第3のビールで熱い争奪戦を繰り広げることになりそうだ。一方、10月以降の駆け込み反動減も大きいことが予想され、あまたある第3のビール商品は、ブランドとして確立していないと脱落し、淘汰されていく可能性が高い。

 今年、第3のビールは各社から“キレ系”と“コク系”の新商品が投入されたが、軍配は完全に後者だった。これは、コク系で先駆けた「本麒麟」(キリンビール)が昨年来からのヒットを持続させ、今年登場した「金麦ゴールド・ラガー」(サントリービール)も勢いを増したことでも明らか。

 もっといえば、“ニアビール”という位置づけが、より生き残りの鍵になっていきそうだ。

 たとえば、サッポロビールが来年2月4日に発売する「ゴールドスター」。12月4日には早々に発表会を行ったが、同商品は「黒ラベル」で使用している麦芽と「ヱビス」で使用しているホップを採用した戦略商品である。

 第3のビール市場はアサヒビール、キリン、サントリーの三つ巴状態で、サッポロは大きく離されているが、既存の「麦とホップ」に加え、「ゴールドスター」で一気に割って入りたいということだろう。

 一方、減税となるビールは10月以降、徐々に販売が上向く可能性はあるが、来年はまだ前哨戦だ。その中で、東京五輪のゴールドスポンサーになっているアサヒは、五輪の開催期間が半月余りで短いとはいえ、ここ数年販売が落ちている「スーパードライ」の底上げに挑み、どこまで挽回できるかも焦点になる。

 もう1つは、「淡麗」擁するキリンの一強状態にある発泡酒。発泡酒は、2026年まではずっと現状維持の税率だからだ。第3のビールは、増税によって市場規模が10%ダウンするとも目されているが、現在の趨勢を見ると、その凹み分が流れるのは、発泡酒よりも、やはり2026年まで税率が据え置かれる(350mlで28円)、缶チューハイなどのRTD(レディ・トゥ・ドリンク)と呼ばれるジャンルになる公算が大。

 RTDは縮小が止まらないビール市場と反比例するように伸びてきており、ハイボール缶などに続いてレモンサワーも大きなトレンドになってきている。

 加えて言えば、消費増税では軽減税率の対象で、酒税改正とも無関係のノンアルコールビールは、健康志向の高まりを鑑みても、まだまだ伸びしろがあると各メーカーはソロバンを弾く。

 キリンとサントリーはそれぞれ、「カラダFREE」「からだを想うオールフリー」という、内臓脂肪を減らす点をアピールポイントにしたノンアル商品で攻勢に出ている。また、消費増税前の駆け込み需要では、勘違いしてノンアルビールにも消費者の駆け込み買いが見られたことからも、愛飲者を一定層、掴んでいることが見て取れる。

 来秋以降、減税によって仮にビール回帰が起こってくれば、ビールの構成比が高いアサヒとサッポロには追い風となる。一方、ビール、発泡酒、第3のビールのバランス型のキリン、第3のビール比率が高いサントリーは、第3のビールが増税後に落ち込んでも、そこから流れるであろうRTD分野で2強を形成しているだけに、酒類事業トータルで見れば「行って来い」ぐらいではないか。

 年明け1月8日、9日の両日で、ビールメーカー4社は五月雨式に事業方針説明会を開き、戦略や考え方、新商品やその投入時期などを明らかにする。ビール類市場激変前夜の2020年、消費者の支持を最も集めるのは、果たしてどのメーカーになるだろうか。

●文/河野圭祐(経済ジャーナリスト)

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