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「日本が最も親中」と肩を落とす香港デモ抗議者

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■「日本の報道が最も中国寄りだ」と感じる抗議者

抗議者たちは、自分たちの活動が世界でどう受け止められているか、について敏感だった。

今回の取材で数人に告げられたことがある。

「欧米、韓国などと比べると、日本の報道や、それを受けた日本国民のネット上のコメントが最も青い(中国寄り)と、抗議者の間で話題になっている」

「欧米メディアは、民主化を暴力で押さえ付ける政府、警察を絶対悪とし、軸がブレない。日本では抗議者と警察の暴力を併記した上で、市民は抗議者の暴力に批判的だ、と結論付ける報道が目立つ。中国メディアに近い報じ方です」

あまり知られていないが、香港人が日本に渡航する割合は人口の4分の1に上り、その多くは年に3回、4回と通っている。世界一親日の国(地域)が香港なのだ。

2019年10月の台風19号の被害に際し、抗議者たちは即座に街頭募金を行い100万香港ドル(約1400万円)を日本赤十字社を通じて寄付している。10月1日、4日と香港警察が実弾を発砲し、抗議者の怒りが頂点に達したさなかの行動だった。

「われわれは日本に片思いをしているようです」と、20代前半で抗議者の女性は寂しそうだった。

現場から中継する海外メディア - 撮影=筆者

10月くらいから抗議者や民主派市民に浸透し始めているスマホアプリがある。飲食店、雑貨店などが、民主派が黄、親中派が青と色分けされ、地図上で一目で分かるようになっている。青い店には金を落とさず、黄色い店を皆で応援する、との合意のもとに作られたアプリだ。

私が滞在したホテル近くに静かで居心地の良いスターバックス(親中派)があった。抗議者数人が代わる代わる来てくださり話をうかがったが、誰一人飲み物を注文しなかった。「親中派の飲食店に複数人が予約の電話を掛け、誰も行かない、というやり方もある」と聞かされた時は、さすがに閉口したが、時間をかけて親中派を追い込むさまざまな方法を日々編み出していることは分かった。

■勇武派の行動にはしっかりとした根拠がある

平和に年越しを迎える予感に包まれ、使用しなかった防毒マスクをスーツケースに詰め込んでいた帰国前夜、九龍半島旺角エリアで突如抗議者と警察の衝突が起き、急いで現場に駆け付けた。

黒ずくめの抗議者は数えるほどだったが、警察は催涙弾を撃ちまくっていた。隣にいた香港人プレスも「残業代稼ぎとしか思えないな」とあきれていた。6月以降に警官1万1000人が受け取った残業代は133億円、一人当たり毎月20万円になる。

交差点で抗議者がバリケードを築き始める中、タクシーが横切ろうとした。その前に黒いゴミ袋を置き、道をふさいだ抗議者に対し、怒った乗客が車から降り「子供が中にいるんだ。通してくれ」と語気を強めた。抗議者は即座にゴミ袋をどかし2人は和解し肩を組んだ。抗議者たちには、彼らなりの倫理観がある。年寄りと子供には迷惑をかけない。

市民と抗議者、和解の瞬間 - 撮影=筆者

インタビューに応じた勇武派男性は「理由なき破壊は1つもない。自発的暴力ではなく、必要だったから行った暴力です。金や物も取りません。親中派の路面店舗に火を放つ時も、建物の上層階の住民の様子を見ながら慎重に行う」と、単なる暴徒ではないことを繰り返し主張した。半年間テレビ中継で勇武派の行為を眺めてきた市民の多くが、彼らを全面的に批判しないのは、攻撃対象と根拠を理解してのことだろう。

■「抗議者の犯罪行為もちゃんと撮れ」という警官のメッセージ

数の上で余りに非対称な夜の攻防だったが、深夜1時過ぎ、これまでに感じたことのない恐怖に襲われた。警官隊が見詰める大通りの100メートル先で抗議者数人がバリケードに火を放った。プレスと書かれた黄色いベストと防毒マスクを着用した私は、両者の間で警官隊寄りに1人で立ち、成り行きを見守った。火は勢いを増してきた。

バリケードから勢いを増す炎 - 撮影=筆者

警官50人近くが突如私に向かって指や警棒をさし、広東語でわめき立てた。位置取りがまずかったかとキョロキョロしたが何しろ全く言葉が分からない。怒鳴り声へと声量は増した。警察のプレスへの暴行が相次いでいることもあり、全身に鳥肌が立った。ふと、燃え盛るバリケードにカメラを向けた。すると、警官から、今度は拍手が湧いた。振り返ると数人が親指を立てている。

「警察の暴力だけではなく、抗議者の犯罪行為もちゃんと撮れ!」という意味だったと気が付き、胸をなで下ろした。

■「デモによる金融へのダメージはない」と言い切る関係者

帰国当日、金融系の企業で働く2人の日本人にそれぞれ話を聞いた。

彼らは一般的な予想に反する見解を述べた。半年のデモを経ても金融に関してはほとんどダメージがないと言い切る。

「香港経済はわずかに衰退傾向にあるが、米中経済戦争、中国経済の伸び悩みが主たる要因でデモの影響は、あって3番目の要因でしかない。

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