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「安倍一強」政権の正体と「退陣戦略」(その2)

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〔下記の論攷は、『月刊 全労連』No.275、2020年1月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

Ⅱ 「政権安定」のカラクリ

 国政選挙6連勝の実態

 「安倍一強」と言われるほどの安倍首相の「強さ」はどこにあるのか。その「政権安定」のカラクリが解明されなければならない。

 まず指摘する必要があるのは、国政選挙での「強さ」である。安倍首相は政権に復帰した2012年の総選挙を含めて6連勝という成績を収めてきた。これが「安倍一強」と言われる国会での勢力関係を生み出し、自民党内でも安倍首相の支配力を強めている。

 しかし、この間、有権者内での得票率(絶対得票率)は選挙区で約25~26%、比例代表で16~17%であった。自民党に投票する有権者の割合は約4分の1にすぎず、残りの4分の1は野党に、さらに残りの半分ほどの有権者は投票所に足を運ばず棄権している。

 このように有権者の4分の1ほどにしか支持されていない自民党が選挙で勝ち続けたのは、公明党の選挙協力と選挙制度に助けられてきたからだ。とりわけ、衆院選で289ある小選挙区や参院選で32ある1人区では、野党がバラバラで立候補することで自公勢力を有利にした。「ベからず選挙」と言われるような選挙運動に対する厳しい制限も、政策の浸透を阻むことで自民党に有利に働いた。

 これを打破するためには、大政党に有利な定数1の選挙区を、少数政党も不利にならない比例代表的な制度に変え、選挙運動を自由にして有権者に政策が浸透しやすくする必要がある。同時に、制度が変更される前でも、野党や少数政党が不利にならず自民党に対抗するためには、野党間での共闘を実現して選挙区での1対1の構図を作らなければならない。

 2016年の参院選では、このような対抗戦略が功を奏し、定数1の選挙区で統一候補は11議席を獲得した。2019年の参院選でも統一候補は10議席となり、有権者内での自民党の絶対得票率は19.8%と2割を下回って9議席を減らした。自民党は参院での単独過半数を失い、公明党などと合わせた「改憲勢力」は発議に必要な3分の2の議席を割っている。

 投票率が戦後2番目に低い48.8%に低下したため、この程度の陰りにとどまった。投票率が上がれば、選挙制度の制約を乗り越えて自民党に勝利することができる。このことは、参院選1人区で共闘した野党4党の比例代表の合計より26.6%もの「上積み効果」があり、山形60.74%、岩手56.55%、秋田56.29%、新潟55.31%、長野54.29%など、統一候補が立候補した選挙区で軒並み投票率が上昇し、いずれも当選したという事実によって裏付けられている。

 内閣支持率の「安定」

 「安倍一強」を支えてきたもう一つの要因は内閣支持率の「安定」である。NHK世論調査による内閣支持率の推移を見れば、長期にわたって一定の水準を維持していることが分かる。一時的に不支持が支持を上回ることがあっても、また支持が盛り返して4割台を維持してきた(図表5:省略)。

 同時に、森友・加計学園疑惑が国会で追及されたときには不支持が支持を上回り、その後の回復によっても支持率は5割に達していない。つまり、政権の安定は5割以下の世論を背景にした低い水準のもので、国会での追及などで政権を追い込むことは十分に可能だということになる。

 しかし、安倍政権は森友・加計学園疑惑というピンチを乗り切った。それが可能だったのは、この問題に関わった官僚などが公文書の改ざんや虚偽の証言などによって安倍首相と昭恵夫人を助けたからである。今に至るも、この疑惑の真相は明らかになっていない。

 このような状況が生まれた要因の一つは、官僚に対する官邸の支配力が強化されたことにある。2014年の内閣人事局の新設によって高級官僚の人事が一元化され、その中心に官房副長官が座った。そのために官僚は官邸の意向に逆らうことが困難になり、森友学園疑惑で決済文書の書き換えに関与させられた財務省近畿財務局の職員の1人は、それを苦にして自ら命を絶った。

 逆に、森友学園疑惑で首相夫人付きだった官僚は昭恵氏をかばい続けた後に在イタリア大使館の一等書記官へと栄転し、決裁文書改ざんで中核的な役割を担った財務省官房参事官も駐英公使となった。不起訴とした大阪地検特捜部長は大阪地検の次席検事となって出世コースに乗り、当時の近畿財務局長も財務官に昇進している。加計学園疑惑で白を切り続けた萩生田元官房副長官は文科相に抜擢された。飴と鞭による官僚支配の貫徹である。

 もう一つの要因は、公文書管理のルールが明確にされず、問題が発生した後での検証が困難になっていたことである。これについては、その後一定の改善がなされたが、かえって行政関連の文書や記録が隠蔽されやすくなったという面もある。行政に関連する情報は国民の財産であり、行政監視の徹底や国民の知る権利を守るという点からも、行政の記録が残され事後検証可能な条件を整備しなければならない。

 さらに、第3の要因として、国会での野党の追及のあり方という問題もあった。野党がバラバラに質問するため、論点が分散したり重複したりして十分に政権を追い込めなかった。その後、野党合同のヒアリングや立憲・国民・社保・社民などによる統一会派の結成、質問に向けての調整など一定の改善がなされている。

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