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「解」が存在しない問題に挑む増田元総務相

「かんぽ生命保険の不適切販売問題を受けて辞任する日本郵政の長門正貢社長の後任に増田寛也元総務相が就くことが固まった。2020年1月6日付で就任する。岩手県知事としての組織運営の経験や政府の郵政民営化委員長を務めた経験を生かし、40万人の社員を抱える巨大グループの立て直しをめざす」(26日付日経電子版 「増田氏、郵政社長就任へ 郵便は衣川氏、かんぽ千田氏」
増田元総務相が立派な人物で、県知事時代に「改革派」として知られ、行政手腕に定評があるあることは存じ上げているが、正直その増田氏をもってしても「巨大グループの立て直し」は出来ないだろう。

営業手法の見直しを優先すれば業績面での立て直しは困難だし、業績面での立て直しを優先すれば営業手法の見直しは進まない。

これはバブル崩壊以降、野村証券を中心とした大手証券が抱えてきたジレンマでもある。バブル崩壊から30年が経とうとしている今日でも、大手証券はフロー(手数料)とストック(資産残高)のどちらを収益の柱に置くべきかで揺れ動いている。それは、組織が巨大化すればするほどストックビジネスでの成長は難しいからだ。それは、御家人に与える恩賞が乏しくなることで衰退していった鎌倉幕府と同質のもの。

現実問題として証券分野でストックビジネスが成り立っているのは、独立系の投資信託会社くらいだといっても過言ではない。しかし、それはパフォーマンスは全て顧客持ちという環境が整ってから誕生したビジネスモデルである。

日本郵政は大手証券会社をはるかに凌ぐ「巨大グループ」であるうえ、貸出しが出来ない特殊な金融機関であるため金融商品の販売以外に成長エンジンを持っていない。

こうした金融機関としての特殊性に加え、「郵便」という公共性の高い事業を担わなければならないという企業グループとしての特殊性も持っている。

単純にいえば、自由主義経済の中を生き延びるのに必要な武器を持っていないだけでなく、足枷もはめられた日本郵政を上場企業にしたのがそもそもの間違いだったのだ。それは裸の人間に手錠をかけアフリカのサバンナやアマゾンのジャングルに放り出して生きろというくらい無謀なものだったのだ。

どんな企業でも上場、民営化すればいいという訳ではない。

「政府の郵政民営化委員長を務めた経験」を持つ増田元総務相が、どのようなアプローチで「巨大グループの立て直し」を図ろうとするのかは注目されるところ。何といっても日本郵政が抱えている問題は、数学的にいえば限りなく「不能(解がない)」に近いものなのだから。

個人的には、増田元総務相が導き出す可能性のある「解」は、日本郵政の非上場化というところではないかと想像している。懸念しているのは「政府の郵政民営化委員長」という肩書が、こうした「解」を導き出すうえでの障害になるだろうということ。増田元総務相が、県知事時代と同じ「改革派」であり、高い行政能力を持ち続けていることを期待せずにはいられない。

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