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「大手企業でも45歳定年」韓国の悲惨な転職地獄

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■韓国人も本当はひとつの会社でずっと働きたい

つまり、韓国の若者は諸外国と比べて転職志向が弱く、むしろ思いとしては日本と並んで終身雇用との親和性が高いといえるだろう。

にもかかわらずなぜ若者の転職者が多いのか。KLIはこう分析している。

「これは労働市場の二重構造の深化により、内部労働市場と外部労働市場の労働条件格差が解消されていないためである。韓国の青年が大企業や公共企業の雇用に引き寄せられる現実を見ると、労働市場の格差を解消することなしに、青年の雇用状況を改善することは難しい」

「二重構造の深化」とは、大企業と中小企業の賃金格差の拡大のことを言っている。韓国の大卒者はサムスン、LG、現代などの財閥系の大企業への就職を目指して就活するが、極めて狭き門となっており、その多くは中小企業に就職せざるをえない。

しかし、前述したように大企業との賃金格差に愕然(がくぜん)とし、早期に離職して少しでも給与が高いところを目指すということだろう。


給与格差にあえぎ転職地獄に陥っている韓国国民を文在寅大統領はどう見ているのか - 写真=AFP/時事通信フォト

実際に大企業の賃金水準を100とした場合、1993年の中小企業は82と、格差は小さかったが、年々拡大。2016年には60にまで低下している(韓国雇用労働部)。

韓国の若者にすれば「受験競争をがんばってせっかく大学まで出たのに賃金の安い中小企業で働かなければいけないのか」という思いが転職に駆り立てているのだろう。

■1997年の通貨危機以降、年功賃金→年俸制・成果主義の賃金制度へ

そしてもうひとつ、冒頭のグラフで目立ったのは勤続年数10年以上が日本は44%以上であるのに対し、韓国は21%と諸外国に比べても極端に低いことである。その背景にある最大の問題は、年功賃金と終身雇用という雇用システムの衰退であろう。

1997年の通貨危機以降、生き残りの危機にさらされた韓国の企業は従来の年功賃金から年俸制や成果主義の賃金制度に急速に変わり、その流れは現在も続いている。

年齢に関係なく成果・実績主義で昇進・昇給が決まり、ボーナスも従来のような基本給比例ではなく、個人の成果評価に基づいて支給する方式に変わった。

その典型はサムスングループだ。


※写真はイメージです - 写真=iStock.com/holgs

サムスン電子は98年に年俸制を中心とする成果主義に移行した。評価しだいで社員間で大きな給与格差が生じる仕組みだ。

マネージャー(課長)は担当領域の業績、GMは部門の業績を厳しく査定され、結果を出さなければ降格もされる厳しい制度である。年功賃金から成果主義に移行した最大の理由は外部からの優秀な人材の確保と流出の歯止めである。

■サムスンでは“45歳定年”が慣行になっている

成果を出さなければポストも剥奪される。その結果、出世レースから脱落する社員も多く、先の昇進が期待できない45歳の部長クラスが退職するという“45歳定年”が慣行になっている。

成果・実力主義の評価が強化されると、当然、評価が低い社員は居場所を失い、会社を去っていく。長年続いてきた終身雇用慣行も年功賃金の崩壊と連動して衰退していくことになる。サムスンだけではない。多くの企業の成果主義の導入が早期離職者を促しているといえるだろう。

筆者は6年ほど前に韓国のサムスン電子を取材したが、研究・開発者はアメリカなど韓国以外の外国人人材が多くいることに驚いた。世界中から一流の人材を募集しており、韓国人であっても基準をクリアしなければ採用は難しいという話も聞いた。

■日本型雇用システムは今後どうなる? 韓国の後を追うのか

こうした韓国の動向は、決して「よその国の話」ではない。

日本は勤続年数の長さに象徴されるように、現在も新卒一括採用、年功賃金、終身雇用(長期雇用)を主な柱とする日本型雇用システムが維持されている。特に大企業ほど堅固である。

だが、経団連は来年の春闘で年功型の賃金など日本型雇用システムの再検討を会員企業に呼びかけることを春闘指針に盛り込む。

また、政府も12月19日に出した「全世代型社会保障検討会議中間報告」で「70歳までの就業機会確保による中高年の就労促進や、若年層の就労促進と新卒一括採用慣行の見直しの加速化を図る」と明記している。

経団連としては、現行の終身雇用と年功序列的な待遇が、AIやデータ分析にたけた優秀な若年層や海外人材の獲得を難しくしていることや、優秀な人材が海外に流出しかねないというのが理由だ。

政府も中途採用者を積極的に雇用することで雇用の流動性を高めたいという意向だ。優秀人材の確保と流出の防止は韓国企業の年功賃金の廃止理由とも重なる。

韓国企業が成果主義賃金の導入と中途採用を含む優秀な外国人人材の採用に踏み切ったのは、このままではグローバル競争に勝てないとの危機感があったからだ。しかし、その結果、終身雇用が崩れ、新卒一括採用が壊れてしまい、今も若者の就職難が続いている。

日本型雇用システムの見直しを打ち出した経団連が、その理由として「グローバル競争に勝てない」ことを挙げていることからも当時の韓国と共通する。

新卒一括採用を含む日本型雇用システムは今後どうなっていくのか。脆弱な転職市場という点では日本と韓国も変わらない。今の韓国の状況は日本の近い将来の姿を暗示しているようにも思える。長期雇用志向が強い日本の若者にとって不幸な結末にならないことを祈りたい。

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溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)

人事ジャーナリスト

1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。

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(人事ジャーナリスト 溝上 憲文)

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