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いわゆるパワハラ防止法指針についての備忘

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カスタマーハラスメントも同様です。

 ただ、だからといって放置しておいてよいということだとは思っていません。労働者には労働組合もありますし、労働局や労働基準監督署に相談したりする保護や救済の仕組みがあります。もちろん労働局や労働基準監督署は求職者の相談にも応じるはずですが、一方で求職中であるがゆえに、自分の名前を出して相手先企業の処分を求めたりもしにくいという弱い立場にあります。

また、学生であれば学校が支援することもあるでしょうが、学校も必ずしも企業に対して立場が強い場合ばかりとも限りません。今回の議論を聞いていて、就職活動中の学生などが不当な取り扱いやハラスメントを受けた際に、その保護や救済を図る法制上の根拠も組織も乏しいということは、個人的に改めて認識しました。これは、厚生労働省のみで取り組むことが良いかどうかも含めて、宿題だと思っています。

 また、女性にパンプスやハイヒールなどを強制することについても、パワーハラスメントに該当し得ると記載すべき、ないしは禁止して罰則を設けるべき、というご意見もありました。いわゆる#kutooの問題です。こちらも、今回の指針においては、まず上記と同じ理由により禁止や罰則は困難です。その上で、三要件に当てはまるかどうかが問題となるものでしょう。すなわち「業務上必要かつ相当な範囲を超えている」か、「労働者の就業環境を害している」かが、個々のケースによって判断されることになります。

 ただ話をここまでややこしくしたのは、ヒールやパンプスが実際に履くと痛かったりマメができたりしてしまい履くと苦痛なものである(と娘も言っていました。私は履いたことがないのですが)ということ。また、妊婦さんは危険だから履くべきではないという話もあります。仮にそうだとするならば、怪我する履物を履くよう強制されるのは、苦役の禁止を定める日本国憲法第18条だとか、労働者の健康と安全を確保する事業主の責務を定めた労働安全衛生法第3条と照らしてどうなのかという議論になるのかもしれません。

そもそも、靴屋さんが奮起して安全快適なヒールやパンプスを作ってくれるべきなのかもしれないという気もします。いずれにせよ、パワーハラスメントかどうかという観点を超えたアプローチも考えられるべきではないかと思います。

 どのような服装等を労働者に義務付けるかは、まずは事業主と労働者(および労働組合)の合意による事業場の自治の問題です。しかし往々にして事業主側はヒールやパンプスを履いたことがない人が少なくなく、苦痛を訴えても感度に乏しいことがあるでしょう。そういう人たちに理解されにくい問題だからこそ社会問題になったという点は、心に留めておかなければないと思います。

 性的指向・性自認に関するハラスメントやアウティングについて明記すべきというご意見は、議論過程の際から承っていました。例示などにおいて見直しを行い、一定のご評価をいただいている(例:LGBT法連合会「『事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針』の諮問答申に対する声明」)ように思っています。

ただ、法律による規制を具体的にわかりやすくするのが指針の目的とはいえ、特定の要因による差別等のみをことさらに取り上げるとかえって他の要因が見えにくくなってしまうという問題もあり、指針のような内容となりました。今後のパンフレット等による周知啓発の際にも意を酌むべきこともあるでしょう。またそもそも、一般論として差別偏見をどうやってなくすのかというアプローチを進める必要も改めて感じた次第です。

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