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覇権争いを続ける「米中」の間で日本は存在感を示せるか〜田原総一朗インタビュー

米国と中国の貿易摩擦の行方に世界中の関心が集まっていたが、デッドラインとされていた12月15日までに両国は「第1段階の合意」に達し、さらなる制裁合戦に発展する事態は避けられた。今後の米中関係はどうなっていくのか、田原総一朗さんに聞いた。【田野幸伸・亀松太郎】

休戦状態となった米中の貿易摩擦

AP

熾烈な展開を見せている米中の覇権争いは、世界経済に大きな影響を与えている。もちろん、日本にも密接な関係がある。

米中の対立が激化した背景には、中国の経済力の増大がある。企業の時価総額ランキングを見ると、かつては米国企業の独壇場だったが、最近は中国企業の躍進が目覚ましい。数年後には、中国企業が米国企業を逆転するのではないかと見られている。

そのような中国の動きに対して、米国は脅威を感じている。トランプ大統領が中国からの輸入品に対して高い関税をかけると言っているのも、そのためだ。

さらに、香港のデモに関連して、米国の議会では民主派を支援する「香港人権・民主主義法案」が可決され、トランプ大統領も法案に署名した。この動きに中国は猛反発しており、貿易協議にも悪影響が及ぶことが懸念されていた。

ところが、12月15日の期限を迎えると、両国の新たな関税措置は延期となった。ここへきて急に、米中に妥協の姿勢が見られるようになったのだ。

どうやら、トランプ大統領の頭の中は、来年の大統領選への対策でいっぱいらしい。中国との「第1段階の合意」では、米国産の農産物の中国への輸出拡大を取り付けた。米国の農家を意識したものだ。

これにより、米中の貿易摩擦はしばらく休戦状態になるものと見られている。しかし、「終戦」になるわけではない。来年の秋の大統領選で、トランプ大統領が再選されれば、再び両国の争いは激しくなるだろう。

問題は、そのとき、日本はどう対応するか、だ。

12月23日には、北京で日中首脳会談が開かれ、安倍晋三首相と習近平国家主席が握手を交わした。その場で安倍首相は、香港情勢に憂慮を示しつつも、「来年春の習主席の国賓訪日を極めて重視している」と発言した。

AP

習近平主席を国賓として招くことに対しては、日本国内の保守派から反対する声が出ている。産経新聞社発行の月刊誌『正論』は2020年1月号で「習近平の『国賓』に反対する」という特集を組んだ。自民党の中にも反対する意見が少なくない。

だが、安倍政権としては、2020年春に習近平主席を国賓として日本に招く方針を変えていない。覇権争いをしている米中の間に入って、なんとか日本の存在感を示したいと思っているのだろう。はたして、重要な役を演じられるかどうか。

「憲法改正」よりも重要な課題が山積

安倍首相は憲法改正を悲願としているが、それよりも重要なのは、日中あるいは日米の外交問題だ。僕は「憲法の改正よりも日米地位協定の改定こそ、解決すべき課題だ」と指摘している。

日米地位協定は、戦後の占領政策の延長と言える。そのため、東京の空はいまだに米国に占領されている。日本の飛行機が自由に飛べないのだ。

日米地位協定で一番弊害があるのは、沖縄だ。日本の国土全体の0.6%にすぎない沖縄県に、在日米軍の専用施設の約70%が集中している。

民主党政権のとき、鳩山由紀夫首相は普天間飛行場の移設先について「最低でも県外」と言った。しかし結局、それは実現せず、沖縄県内の辺野古(名護市)になった。日米合同委員会で、米国が県外移設について「ノー」と反対したからだ。

ここでの決定は、首相の意向も無視できるほど強いものだということだ。日米合同委員会は、日本の政治権力や憲法の上に存在している。

国内には日米地位協定の改定を求める声もある。しかし外務省幹部の話によると、米国が強く反対しているようだ。改定のハードルはかなり高いのが現実だ。

一方、安倍首相の悲願である憲法改正はかなり厳しい情勢だ。衆参両院の憲法審査会の議論は遅々として進んでいない。そこへ追い打ちをかけたのが、最近の「桜を見る会」をめぐる疑惑の追及だ。

共同通信社

その影響で、12月に実施された各種世論調査では、内閣支持率が軒並み低下している。特に、12月21日と22日に実施された朝日新聞の調査では、内閣支持率が38%と前回調査(11月)よりも6ポイント減少。不支持率は42%で、1年ぶりに不支持率が支持率を上回った。

2020年は、習近平主席の来日、米大統領選、そして、東京オリンピック・パラリンピックと国際的なビッグイベントが続く。日韓関係や北朝鮮のミサイル問題という懸念材料もある。安倍首相はそれらに対応するだけで精一杯なのではないか。

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