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【読書感想】毒親介護

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毒親介護 (文春新書)
作者:石川 結貴
出版社/メーカー: 文藝春秋
発売日: 2019/11/20
メディア: 新書

Kindle版もあります。

毒親介護 (文春新書)
作者:石川 結貴
出版社/メーカー: 文藝春秋
発売日: 2019/11/20
メディア: Kindle版

内容紹介
児童虐待やDV、パワハラなど、身体的・精神的な暴力への関心が高まっている。
親子関係においても、幼少期に親から身体的・精神的暴力を受けてきた人は少なくない。そうした「毒親」の問題が近年、テレビや新聞でも指摘されるようになっている。
子どもが成人して独立すれば、そうした「毒親」から逃れることもできるが、その親に介護が必要になったとき、子どもは再び親と向き合わなくてはならなくなる。

親への責任感の一方で、積年の憎しみや嫌悪は簡単にはぬぐいきれない。様々な葛藤を抱えながら介護をすることになっても、「毒親」はそう簡単には変わらない。老いてますます尊大、横暴になったり、経済的にも子どもに依存し、子どもの生活を破壊しかねない親もいる。

本書は、「毒親」との関係に悩む人たちの生々しい声を紹介し、その実態や心の内に迫る。
介護の経済的負担や認知症への対処、介護をする側の夫婦間、兄弟間の考え方の違いから生じるトラブルなど、「毒親介護」の様々な事例をルポする。
また、専門家によるアドバイスや具体的な対応策なども探り、「毒親介護」の中に希望を見出すための処方箋も提示する。

 容赦なく少子高齢化が進んでいく日本の社会では「介護」というのは避けては通れない問題です。
 自分の生活や仕事をなげうって、献身的な介護をする人がいれば、施設や医療機関に任せて、自分の生活を維持することを優先する人もいます。
 こういうのは、どちらかが(あるいはその中間くらいが)正解というわけではないんですよね。
 介護を優先しすぎて共倒れになる事例は少なくないし、毎日憂鬱な顔で介護を続けるよりは、月に一度でも施設にやってきて、笑顔を見せられるほうが、良い関係なのかもしれません。

 個人的には、介護への熱心さというのは、親子関係の善し悪し、というよりも、介護をする側の性格によるのではないか、という気がします。
 そして、「介護に熱心すぎる」のもまた、燃え尽き症候群や孤立のリスクを高めてしまう印象があるのです。

 この新書では、良好な関係を築いてきたはずの親子でもトラブルになりやすい「介護」が、いわゆる「毒親」と、その子どもにのしかかってきた事例について、その当事者の声や専門家の意見を紹介しながら検討されています。

 「毒親」という言葉はよく耳にするのですが、その「定義」について、この本では、こう書かれています。

 毒親とは十数年前から使われる造語で、スーザン・フォワードの著書「毒になる親」(1999年・毎日新聞社、2001年・講談社+α文庫)がもとになったとされる。フォワードは著書の中で、「毒になる」という強烈な表現の理由を次のように述べている。

──世の中には、子供に対するネガティブな行動パターンが執拗に継続し、それが子供の人生を支配するようになってしまう親がたくさんいる。(中略)そういうたぐいの親を一言で表現うのにぴったりな言葉はないかと考えるたびに、頭をよぎったのは、「有毒な」とか「毒になる」という言葉だった。ちょうど公害を引き起こす有毒物質が人体に害を与えるのと同じように、こういう親によって子供の心に加えられる傷はしだいにその子供の全存在にわたって広がり、心を蝕んでいくからである──。(『毒になる親』講談社+α文庫より抜粋)

 フォワードが言う毒親は、子どもにあきらかな悪影響を及ぼし、その心身を蝕み壊してしまう存在だ。日常的に暴力をふるったり、何かにつけて罵ったり、必要な世話を怠ったり、支離滅裂な言動で振りまわしたりするような親、そう考えるとわかりやすい。

 要は「鬼のような親」、「支配的な親」、「自己中心的な親」などの総称が毒親と言えるが、この言葉が一般化するにつれ、より広い解釈がされるようになった。特に母との関係に悩む女性たちにとっての「毒母」は、直接的な暴力や暴言とは無関係のことが多い。むしろ我が子を溺愛し、過保護な子育てをするのだが、それがかえって子どもの人生を苦しめるといった実態も報告されてきた。

 そんな「毒親」とは、さっさと縁を切って、自分の人生を生きれば良いのではないか、と思うのですが、当事者には、そんなに簡単に割り切れるものではないみたいです。

 子どもの頃、酒乱の父親に事あるごとに殴られ、「鍛える」という名目で「腕立て伏せ100回」とか「ウサギ跳び1時間」「バットで素振り1000回」などと無茶な命令をされ、途中で力尽きると「根性がない」と何時間も正座させられたという雅也さんは、母親の死後、否応なしに、その父親と関わらざるをえなくなったのです。

 母亡きあと、雅也さんは何度か実家へ行き、父との話し合いを試みている。「体の具合はどう?」、「これからはひとりで大丈夫か?」、さりげなく話しかけても、父は顔を真横に向けたまま目も合わせない。母に関連する各種の手続きを進めるため、預金通帳や年金手帳の在りかを尋ねると、ムスッと黙り込んでビールを飲みはじめてしまう。

 大音量でテレビをつけ、寝転がりながら缶を空けていく父を横にして、仕方なく汚れた部屋の片付けをはじめれば「さわるな! 帰れ!」。入れ歯をなくしたのか、前歯のない口で怒鳴る父に老いの惨めさを覚えつつも、変わらないその姿勢が情けなくてたまらない。

「年寄りなんてそういうもんだと割り切ればいいんでしょうが、むずかしい。むしろ、ここまできて何やってんだ、ちょっとくらい反省しろよ、と爆発しそうになる。こいつはもう救いようがない、正直早く死んでくれとも思うんです」

 親が老い、弱ってしまったからこそ、これまでとは違った親子関係を築けるのではないか、と一縷の望みを抱き、「毒親」の介護に取り組む人も少なからずいるのです。

 しかしながら、現実は、ドラマのようにはうまくいきません。

 この本を読むと、いくつになっても毒親は毒親、ということが多いのです。それでも、何かトラブルがあれば「まずは身内、とくに子供に」連絡がいくんですよね。そこで「あなた以外に面倒をみる人がいない」という状況で、「あんな人は関係ありません」と言い切るのは、なかなか難しいですよね。
 ただ、そういう「世間からのプレッシャー」みたいなものが無くなったら、日本は「姥捨て大国」になるんじゃないか、という気もします。

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