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- 2019年12月25日 11:57
ロンドンで観光客のスリ激増 テロ対策優先で軽微な犯罪は野放し状態に
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ジョンソン首相「2022年までに警官を2万人増員」
[ロンドン発]海外旅行ではどんなに気を付けていても狙われたが最後、スリ・置き引き・ひったくり、ニセ警官による詐欺の被害から逃れることはほぼ不可能。しかし、それが野放しにされていたら…。先の英総選挙で予想を上回る地滑り的勝利を収めたボリス・ジョンソン首相は2022年までに2万人の警官を増員すると宣言しました。街頭犯罪が激増し、治安が悪化しているからです。

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約半数が地下鉄の中で発生しており、昨年同期比で実に42%も激増しています。このうち盗難は4109件でほぼ倍増。2016~18年度の3年間の届け出件数をグラフにしてみると、その激増ぶりが分かります。
激増したロンドン地下鉄での盗難
観光名物になっている2階建ての赤バスに比べて、地下鉄での犯罪、特に盗難が増えていることが一目瞭然です。
木村正人

木村正人

木村正人
パブで取材カバンを置き引きされた筆者
師走のロンドンで筆者も出張で撮影した写真やノート、カメラ、パソコンがぎっしり詰まった取材カバンをパブ(大衆酒場)で置き引きされたことがあります。取材を一からやり直さなければならず、特派員「失格」の烙印を押されました。
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それまで、ひったくり防止策に詳しい自分の防犯意識は一般人より高いと密かに自負していたのです。その日は仕事の帰り、妻、知人女性の2人と向き合って小さなテーブル席の高い椅子に腰掛けてビールを飲んでいました。
繁華街のど真ん中にあるパブは賑わっていました。私はカバンを高い椅子の足元に置きました。一方は柱に閉ざされ、カバンは機材で重く、椅子とテーブルの間はちょうどカバンの幅と同じぐらいでした。
話が弾んで、そろそろ帰ろうかなと思って足元を見るとカバンが消えてなくなっているのです。信じられませんでした。どうして盗まれたのか想像もつきませんでした。
遠くに座っていた客と目が合った際、微笑んでくるので不思議に思った瞬間が蘇ってきました。
特に気をつけたほうがいい場所とは
あわてて勘定を済ませ、店の責任者に防犯カメラの映像を見せてくれと要求しましたが、断られました。幸い財布やカギは無事。動転している私を、ロンドン在住30年近いベテラン・ジャーナリストの妻は落ち着いて近くの警察署に連れていきました。こうした場合、まず身の回りの安全確保、クレジットカードの不正使用など被害の拡大防止を済ませたら、警察に被害届を出すことが大切です。保険をかけていたら被害金額が支払われるかもしれないからです。

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ロンドンのような国際都市では多額の現金や貴重品、仕事の重要資料を持っている時、パブのような混雑する場所に出掛けるのは厳禁です。酒を飲むなんてもっての他です。
日本人駐在員の集まりで飲み会をしている時、目の前で参加者がカバンを置き引きされるのを目の当たりにしたことがあります。その参加者はすぐに気づいて犯人を追いかけましたが、逃げられました。その時も二次会でパブに行ったのが間違いでした。
犯人を追いかけるのが危険な理由
しかし犯人を追いかけるのは危険です。犯人を全力疾走で追いかけた被害者が心臓麻痺で死んでしまったという悲劇を耳にすることがあります。そして何より犯人は2~3人のグループで行動しており、ナイフを持っている恐れもあるからです。スペイン・カタルーニャ自治州の独立問題でバルセロナを取材に訪れた時も、地下鉄から降りてホテルにたどりつくとバックパックとポーチの全てのファスナーが全開にされ、折りたたみ傘がなくなっていました。

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被害総額約22万円。4~5本分の原稿料に匹敵する金額です。財布の入ったポーチやカメラはひったくられないように袈裟懸けにして前の方にして、自宅の妻とスマホで取材の打ち合わせをしながら徒歩でホテルに戻る最中でした。
真っ昼間で、あまり人がいない大通りを歩いていたので油断していました。最初に後ろから近づいて来た男が「背中にペンキが付いているよ」と声を掛けてきたのです。これはよくある手口なので「もうすぐホテルに着くから、それから見るよ」と言って完全無視。
5分から10分して今度は別の男がさっきの男と同じように「背中にペンキが付いているよ」と声を掛けてきたのです。もし本当なら相手の善意を無視したことになるので悪いなと思ったのが間違いでした。
袈裟懸けにしたカメラとポーチを足元に置いてシャツを脱いで背中を確認すると茶色の塗料がべったり付けられていました。男が親切に渡してくれたティッシュペーパーで塗料を拭っていると、足元のカメラがなくなっているのに気づいたのです。
幸いポーチは無事でした。男を確認すると50メートルほど先の角を曲がろうとしているところでした。ポーチを袈裟懸けにしてダッシュして追いかけました。男は次の角を曲がったところで姿を消し、カフェの店先にいた客が「あっちの方に駆けて行った」と指差しました。
いくら何でもそんなに速く走れない、どこかのビルに隠れたと思いました。地元の人たちにとっては私のような外国人はむしり取っても良いカモに過ぎないのかもしれません。
悔しいけれど諦めました。近くのホテルに戻ってロビーで警察署の場所を確認して被害届を出しました。
顔見知りのベテランカメラマンに「俺たちは体に高額の機材を吊るしているクリスマスツリーのようなもんさ。いくら気を付けていたって、やられる時はやられる。気にするな」と慰められました。
この時は保険で15万円が出たので中古の同型機と望遠レンズを買い直すことができました。実損は3万円ほどで済みました。



