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- 2019年12月25日 10:29
秋元議員のカジノを巡る贈収賄事案に関して
1/2さて、懸案となっていた秋元司議員のIR誘致を巡る贈収賄事案が立件まで進みそうとの第一報がありました。以下産経新聞からの転載
秋元司議員を収賄で立件へ IR参入絡み、現金受領疑い
https://www.sankei.com/affairs/news/191225/afr1912250002-n1.html
私自身、通常の年末進行に加えて、急ぎの調査案件の持ち込みを受けて忙殺される毎日の中、本件に関する取材がアチコチから入っており、もはやスケジュールがトンデモナイことになっておるところ。本事案が立件にまで進むとのことで、これから更に取材が入ることも予想される為、まずはブログ上で本件に関する私のコメントをひとまとめにしておきたいと思います。以下は私のコメントとしてご自由に使って頂いて構わないので、メディア各社の方々はご利用ください。
1.件の中国企業に関して
本事案で贈賄を行った企業として名前の挙がっている500ドットコムという企業ですが、中国深センに本社を置くスポーツくじ(日本のtotoにあたる富くじ)のネット販売を主たる事業として成長した企業です。本企業は、中国の公営事業たるスポーツくじの権益を持ち、同時にニューヨーク株式市場にも上場するという業界内では良く知られる企業ではあります。懸案になっている2017-18年当時の状況でいうと、実は500ドットコムは共産主義国としての原点回帰を進める習近平政権下の中国にあって、本土側の富くじ業やゲーム業などに厳しい規制がかけられ始めている中、海外への新事業の展開を余儀なくされていたのが実態。そういう意味では、あのタイミングで日本の統合型リゾート参入を構想する状況になっていたのは理解も出来ます。
一方で、同社はあくまでオンラインサービスを中心として成長した企業であり、統合型リゾート開発のノウハウを持つ企業ではありません。2017年前後に彼らが「日本参入表明」するにあたってアピールしていたのは、中国本土でのスポーツくじ事業で獲得したとされる「依存対策システム」に関するもの。日本では、依存学推進協議会と呼ばれるNPO法人と共同研究を行っていた事で業界内では知られていましたが;
【参考】ビッグデータを活用したギャンブル依存症対策をNPO法人依存学推進協議会と共同研究へ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000027180.html
正直、大規模な商業施設の開発経験があるわけでもなく、カジノ関連システムを供給するメーカーとしての参入ならいざ知らず、IR開発業者としての参入を目指すというのはあまりスジが良くない話だな、と当時思っていた記憶があります。
2.沖縄と留寿都について
そして、件の500ドットコムが日本で参入を目指していたのが沖縄と北海道・留寿都のIR構想であったワケですが、これもまたあまりスジの良くない話でありました。まず、彼らが最も国内で活発に動いていた2017年から2018年あたりの状況ですが、当時は2016年にIR推進法が成立し、政府側でそれらをより具体的に定めたIR整備法の準備が進んでいた段階です。そういう意味では、日本のIR導入が既に方向性としては決定しており、業界内が「湧いていた」時代ではあるのですが、一方で2016年のIR推進法の成立時には日本のIRは国際観光振興を目的とした「国内を代表するスケール」の開発を目指す、との宣言が国から既に出されていた時代であり、地方都市での中小のIR開発はまず難しいだろうと予想されていた時代でした。
その中にあって、沖縄は当時の知事であった翁長知事が当初からIR導入反対を公約としてかかげながら当選したこともあり、少なくとも業界内では既に「目はない」と評価されていた。
一方、当時まだIR構想が活発であった北海道においては、道内で苫小牧、留寿都、釧路の3つの候補地が争っていた時代でありましたが、正直、それら3つの候補地の中では圧倒的に「新参者」で準備が進んでいなかったのが留寿都であり、また国側の「国内を代表するスケール」を目指すという意向に沿うのならば、新千歳国際空港資金の苫小牧の候補地でほぼ決定であろうというムードでありました。
要は、彼らが目指していた沖縄も留寿都も、当時の状況では業界内であまり有望な開発地として認知されていない候補地であり、そこに向かってあのタイミングで入って行く事自体があまりスジが良くなかった。結果として、沖縄も留寿都も国内IR候補地として箸にも棒にもかからず、既に候補としても残っていないわけで、何のためにあんな所に「旗を立てに」行ったのだろうかな、というのが正直な感想です。
3. 秋元司議員に関して
さて、最後のテーマとなるのが秋元司議員です。ここの論評が実は一番難しい。今回懸案となっている不正な資金供与があったとされる時期である2017年から2018年の時期、秋元議員はIR担当副大臣でありました。一方で、この「IR担当副大臣」という役職を正確に記すと「内閣府副大臣(IR担当)」というものであり、内閣府所属の大臣ということになります。一方で、当時の国政におけるIR整備の状況でいうと、2016年のIR推進法の成立を受けてIR整備法の準備が進められていた時代。その機能は実は内閣官房内に設置されたIR推進本部に集約されていた時代であり、それらを主導していたのは当然、菅官房長官を筆頭とする内閣官房側でありました。
当時の内閣府副大臣(IR担当)という役割は、当時準備が続いていたIR整備法の制定後に国土交通省内に「IR整備区域の所管機能」を新設する為に、臨時で設けられた役職。当時、国土交通大臣であった石井大臣が「内閣府特命担当大臣(IR担当)」となったのと併せて、当時、国交副大臣を兼任していた秋元司議員が「担当副大臣」とされていただけの状況。
その後、国交省の外局となる観光庁側に「IR整備区域の所管機能」を有した国際観光部という部署が新設されることとなったのは2019年7月のこと。実は、当時の内閣府および秋元副大臣(IR担当)側にはあまり多くの権能が存在していなかったのが実態でありました。
それ故に、私を含めて国内のカジノ業界側としては必ずしも秋元議員が当時、日本のIR整備において中核的な役割を負っていたという印象は必ずしもありません。朝日新聞が12月20日付で以下のような政府関係者のコメントを報じましたが、私としても正直同じ印象であります。
秋元氏、IR担当の元副大臣 「熱心な印象ない」見方も
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20191219004230.html
秋元氏が担当副大臣だったのは法整備がスタートし、自治体が誘致へ動き出し始めた時期と一致する。だが、政府関係者は当時の秋元氏について「熱心にIRをやっていたという印象はない」と話す。