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成年後見制度 利用促進は進むのか?

 2016年に成年後見制度の利用促進に関する法律が施行され、利用促進が求めれているが、なかなか進んでいない。その理由のひとつを聞いた。


■利用は伸び悩み

 成年後見制度は、認知症や精神障がい者、知的障がい者などの判断能力が不十分とされる方々の権利擁護、財産管理などを後見人が行うもの。

判断能力があるときに、本人に意志で後見人を決める任意後見制度と、判断能力が不十分になった後に、家族や周囲の方などが申し立てを行い、家庭裁判所が後見人を選定する法定後見制度がある。法定後見にはさらに、後見、保佐、補助の3つがあり、利用者の状況により、できることが異なっている。

 厚労省によると、認知症の高齢者は2015(平成27)年で約520万人だったのが、2025(令和7)年には約700万人になるとしている。しかし、利用者は約22万人(2018年末)と伸び悩んでいる。

■報酬が高い。不正もある

 その背景には、家庭裁判所が選らんだ後見人と家族の意思疎通がうまくいかず、家族からみれば勝手に財産を処分してしまう、日常に必要な費用を出してくれない、さらに報酬が高過ぎるなどの批判がある。

 後見人の報酬は、基本報酬は月額2万円で資産に応じて増額され6万円程度とされている(※1)。

この定額の報酬に加えて、財産管理など特別なことを行ったときに発生する「付加報酬」があり、資産を売買するなどをすると報酬となるため、この報酬を目当てに財産を処分してしまうことや本人との面会をあまりせずに数多くの人の後見人になり、報酬額をより得ようとする後見人もいるとされているからだ。

 弁護士など資格を持っていても、現状では仕事が少ないため後見人で利益を得ようとする人もいるとの指摘も聞く。このような不正の報道も相次いでいる(※2)

 家族が後見人になることも可能だが、家族間の対立が起きてしまうこと、業務の複雑さに加え報告書類の手間がかかることなどもあり敬遠されてしまうこともある。

 自治体によっては、市民後見人の養成をしているが、責任の重さに対して、報酬が月額1万円程度と少なく、なり手が少ないのも実情だ。

 何よりも、資産管理が中心となり、利用者への定期訪問、医療や介護サービスなどの手続きを行う身上保護がおろそかにされ、後見人のメリットを感じないことも利用が広がらない理由といわれている。

■専門家による成年後見

 このような状況で、専門的知識を活かして成年後見制度を促進しようとしている、司法書士の上山浩司さんから実際の活動を12月8日にあった現代都市政策研究会の定例会で伺った。

 上山さんらは、公益財団法人成年後見センター・リーガルサポートを設立し、司法書士をメンバーとして全国各地で活動している。

もともと、権利擁護の仕事をすることが多かったことから成年後見制度が始まるさいに法人格をとり専門職の団体として活動を続けているのだそうだ。司法書士は全国に約2万2600人いるが、そのうち、約8300人が所属しているという。

 なぜ司法書士が成年後見をするのか? その理由は、横領などネガティブな話題が伝えられ悪い印象を持つ方はいるが、後見人がいることで劇的に生活の質が良くなった例も多い。実際に喜ばれることが多く仕事の励みになっているため、より広げたいと考えたからだそうだ。

■専門家と市民の役割分担

 一方で、時には身の安全が脅かされるような困難ケースもあったり、法的な知識が必要であったり、専門家による組織で対応しないと解決できなかったりするケースもあり個人の後見人では対応できないケースも少なくない。

このような場合には、組織で対応するしかないが、時間や手間がかかりコストがかかってしまったり、組織が大きくなるので意思決定が遅くなったりするデメリットはあると話されていた。

 実際のケースを聞くと、当初は資産の確定や家族などとの調整に時間はかかるが、一時期を過ぎるとルーチンワークになり、時々会いにいって話を聞き、対応する程度で済むようになる。このようになったときに、自治体で支援し養成しているような市民後見人にリレーができるようにしている。このことを広げたいとも話されていた。

 後見人になると、どのようなケースを担当するか分からない。そのため市民後見人には荷が重過ぎることもあるため、ルーチンワークなら多数の利用者を抱えていないこともあり、市民後見人のほうが日常的に面会することが可能となる。利用者にも喜ばれることになるとされていた。

 確かに日常の話を聞く程度であれば、対応はしやすいとは思う。リレーができるようになれば、法人、専門家、市民後見人との役割分担ができることになる。このような役割分担をしないと後見人制度は広がらないと上山さんは話されていた。

■倫理観

 しかし、利用者の数を増やして面会も少なくして収入を増やそうと考えているような後見人が、いわば“おいしい”ケースを手放すかの疑問が出てくる。このことを聞くと、その面はあるとされていた。言い方が適切かは分からないが、倫理観で変わってしまうのかもしれない。

 さらに、話を聞いていくと、上山さんたちは、登記や法律相談などの本来の業務を行っており、成年後見はいわば社会貢献としての活動だ。

 そのため、法的には規定されていないが、成年後見センター・リーガルサポートで行っている対応を個人情報は分からないようにして、他者がチェックする仕組みを設けているという。これは、信用を高めるためで、上記のような批判される後見人ばかりではないことを示す意味もあるそうだ。

    ◆

 ひとくちに後見人といっても、さまざま。悪い評判は広がるが良い評判は広がらないのはどうしたものか。だから広がらないのかと思ってしまった。

 武蔵野市のケースは後日。

※1 産経新聞 成年後見報酬、見直し着々…最高裁、業務量見合った額へ議論促す(2019.8 .2)より

※2 日本経済新聞 成年後見の不正、見張り人急増 家裁の選任が最多4800件(2017/1/18)

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