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2019年を振り返って(後編)

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金融界で進むマネロン対策

 2019年10月末から11月中旬まで、世界各国のマネーロンダリング(資金洗浄)対策を調査する国際組織「金融活動作業部会(FATF)」が日本政府や金融機関に実施調査に入った。

 マネーロンダリング・テロ資金対策の国際基準(FATF勧告)の履行状況について相互審査するもので、日本は前回(2008年)の審査で40の勧告のうち、顧客管理などで「不備」があったとして、「フォローアップ」対象国になった過去がある。

 金融機関ではFATFの審査に向け、2018年に金融庁が示したガイドラインを踏まえて預金規定を改定する動きが広がった。具体的には、口座開設や海外送金の際に十分な本人ならびに送金目的の確認などを強化するため、専門部署の新設や不正取引の自動検知システムを導入するなどの対策を講じる金融機関が相次いだ。

 金融庁は、2019年2月の「TSR情報」へのマネーロンダリングに関する寄稿文で、「金融機関等は、リスクに応じて、顧客の本人確認や、取引目的、職業・事業の内容、及び資産や収入等の確認を実施する必要がある。法人顧客に対しては、実質的支配者(株式会社等の資本多数法人の場合、総数の4分の1を超える議決権を有している自然人等)に関する情報の確認も必要となる。一般企業においては、こうした取引時確認のプロセスに応じた書面提出等の対応が求められる」との認識を示している。金融界で進むマネーロンダリングへの対策強化は、一般事業会社も無縁ではない。

 FATFの審査結果が公表されるのは2020年夏頃。評価次第ではマネーロンダリング・テロに対する高リスク国として、国際的に信用を失墜するだけに目が離せない。

「大成功」のラグビーワールドカップ、笑った会社は?

 日本で初めて開催されたラグビーワールドカップ(W杯)。開催前は、ラグビー文化がそれほど根付いていない日本開催に、本当に盛り上がるのか、観客でスタジアムが埋まるのか、など国内外から心配の声があがっていた。

 日本代表「ブレイブ・ブロッサム」は、新しいユニフォームの「桜ジャージ」を身にまとい、アイルランドやスコットランドなど、これまでW杯勝利したことのないチームに真っ向から勝負を挑んだ。そして、4連勝で初めてグループリーグを突破し、日本中が大いに盛り上がった。

 惜しくも準々決勝で大会覇者の南アフリカに敗れたが、「ブレイブ・ブロッサム」の活躍だけでなく、日本各地で開催された会場でも日本流の「おもてなし」が世界中のラグビーファンから高い評価を受けた。

 大会組織委員会によると、日本大会の観客動員数は延べ170万4,443人、最多観客動員はイングランド対南アフリカの決勝戦が7万103人。チケットの販売数は、184万枚に達し、販売率は99.3%とチケット争奪戦が繰り広げられた。

 大成功に終わったラグビーワールドカップ日本大会で、業績を伸ばした企業がある。

 日本代表チームのユニフォーム「桜ジャージ」を手掛ける(株)カンタベリーオブニュージーランドジャパン(TSR企業コード:293789096)を子会社に持つ東証1部の(株)ゴールドウイン(TSR企業コード:590017411)だ。2020年3月期中間決算は、10期連続の増収、5期連続の増益だった。好調の背景の1つは、「桜ジャージ」の販売が2015年大会時の1万枚から約20万枚と急増したことだ。

 英国風PUBを出店している東証1部上場の(株)ハブ(TSR企業コード:294236058)も、ラグビーW杯の訪日外国人客を取り込み、全店売上は9月が前年同月比26.6%増、10月も同25.6%増と急増。ビール片手に観戦するラグビー文化をうまく売上増につなげた。

 W杯終了後の「ラグビーロス」も話題となり、特需の反動減も気になるところだ。2020年は東京五輪・パラリンピックが開催される。再び特需が発生するのか、その後の取り組みで企業業績の明暗が分かれる。

パレードで手を振る福岡選手(12月11日)

増加した「粉飾決算」、その訳と倒産の更なる増加

 2019年(1-11月)の「コンプライアンス違反」倒産のうち、「粉飾決算」が一因となった倒産(以下、粉飾倒産)は18件(前年同期8件)で、前年同期の2.2倍に増え、2年ぶりに20件台に達する可能性が高まっている。

 「粉飾決算」は金融機関から融資を受ける目的や、取引先から信用を得るために決算書をよく見せるために行われる。「税務署用」、「金融機関用」、「信用調査会社用」の3種類の決算書が作成されることもある。だが、急に粉飾決算が増えたわけでなく、粉飾していた企業の倒産が増えたというべきだろう。

 2019年の代表的な「粉飾決算」では、クラフト用品・裁縫用品企画販売の(株)サンヒット(TSR企業コード:292785178)がある。海外進出での投資失敗などを隠すため、15年間にわたり粉飾決算に手を染めていた。20行を超える金融機関を欺くために、金融機関ごとに違う決算書を作成していたが、金融機関で債務の一本化を図るために提出した決算書が他の金融機関向けのもので粉飾決算が発覚した。

 また、注文住宅建築・リフォーム工事ほかの(株)開成コーポレーション(TSR企業コード:310034329)。申立書には、「貸借対照表上で完成工事未収金や未成工事支出金を早期に計上することで資産を過大に計上。また、損益計算書では、完成工事高に未完成の工事を含めて売上に計上していた。これらの決算操作を30年間にわたって行っていたため、現時点で適正な額を認識するには多大な事務負担が生じる」と記載されている。一方、金融機関が粉飾決算を見破ったが、「金融機関が企業を再生させる支援の動きもあった」との話もある。

 医療機器・理化学機器販売などの(株)エル・エム・エス(TSR企業コード:292272499)は、税務署用と金融機関用の決算書を作成。円安による仕入価格の上昇で数年前から業績が低下したことに加えて、取引先への支援で資金繰りが悪化していた。税務署用は販売奨励金を前倒し計上することで赤字を回避、金融機関用は長期にわたり回収できなかった売掛金の短期貸付金を他の勘定科目に振り替え、さらに税務署用よりも総資産を圧縮していた。

 判明している粉飾倒産は氷山の一角に過ぎない。倒産に至らなくても私的整理や支援協議会などの外部機関を交えて再生を進めている企業もある。

 資金が回るうちは粉飾決算が発覚するケースは少ないが、ここ数年、人材確保のための人件費増大などで企業のキャッシュ・フローが悪化し、金融機関にリスケを要請する時に白状するケースもある。

 中小企業金融円滑法が終了以降も、金融機関は中小企業のリスケ要請に弾力的に応じている。だが、金融庁は2019年12月18日に金融検査マニュアルを廃止した。当初は3月頃に廃止される予定だったが、廃止を前に一部の金融機関は事業性評価や貸倒引当金の積み増しなどで、独自に選別の動きを見せてきた。人件費などの経費が上昇し、資金繰りが悪化している企業は少なくない。今後も粉飾決算の発覚が続き、倒産を押し上げることが危惧されている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年12月25日号掲載予定「2019年を振り返って(後編)」を再編集)

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