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【国会事故調・報告書】 提言は踏みにじられたまま原発が再稼働した

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勝俣恒久・東電会長(当時)。事故発生時、記者クラブを引き連れて中国に接待旅行に出かけていた。指揮が遅れた原因に。=国会内、写真:田中撮影=

 「官邸は東電に」「東電は官邸に」「原子力安全委員会は電力会社に」…それはまるで責任のなすりあい大会だった。「国会事故調」の参考人聴取のことである。

 菅直人首相、勝俣恒久東電会長、班目春樹・原子力安全委員会委員長(肩書きいずれも当時)の自己保身しか頭にない答弁を聞くたびに、筆者は靴を投げたい衝動に駆られたものだった。「お前たちのせいでどれほど多くの人が絶望の淵に叩き落とされたと思ってるんだ」と怒鳴りながら。

    「事故が人災であることは明らか」 

 昨年12月から半年間にわたって福島原発事故の究明を続けていた「国会事故調」が、きょう報告書を提出した。現場関係者を中心に延べ1,167人から900時間を超えるヒアリング。福島第一、第二、女川など原子力発電所への9回に渡る現地視察。時の首相、東電会長を公開の場に参考人招致……こうした徹底検証の結果を640ページの報告書にまとめた。原子力村とは無縁の委員たちがまとめた報告書は、冒頭から「事故が人災であることは明らか」と断罪している。

 事故原因の分析は詳細かつ具体性に富む。事故の推移とその後の対応についても同様だ。「メルトダウン」「海水注入」「ベント」「官邸と発電所との電話内容」…福島第一発電所の吉田昌郎所長、菅直人首相らの名前を実際にあげながら記述している。

 そのうえで「官邸による発電所への介入が、事故対応の重要な時間を無駄にするだけでなく指揮命令系統の混乱を拡大する結果となった」と指摘した。

 真骨頂は事故の再現を防ぐための『7つの提言』だ。「国会に原子力に関わる常設の委員会を設置し、規制当局を監視する」「国会は電事連が規制当局に不当な圧力をかけることがないように厳しく監視する必要がある」……だがこうした貴重な提言は何ひとつ実現しないまま、関電大飯原発は再稼働した。  

 提言は踏みにじられたのである。原発事故は繰り返される。

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菅直人前首相。事故の拡大をひたすら東電の責任になすりつける答弁が目立った。=国会内、写真:田中撮影=

       《以下報告書の概要》 

 【巻頭言・はじめに】

 入社や入省年次で上り詰める「単線路線のエリート」たちにとって、前例を踏襲すること、組織の利益を守ることは、重要な使命となった。この使命は、国民の安全に関する動向を知りながらも、それらに目を向けず安全対策は先送りされた。そして、日本の原発は、いわば無防備のまま、3・11の日を迎えることとなった。
(中略)
この事故が「人災」であることは明らかで、歴代及び当時の政府、規制当局、そして事業者である東京電力による、人々の命と社会を守るという責任感の欠如があった。

 【提言】

提言1・規制当局に対する国会の監視
国民の健康と安全を守るために、規制当局を監視する目的で、国会に原子力に係る問題に関する常設の委員会等を設置する。

提言2・政府の危機管理体制の見直し
緊急時の政府、自治体、および事業者の役割と責任を明らかにすることを含め、政府の危機管理体制に関係する制度についての抜本的な見直しを行う。

提言3・被災住民に対する政府の対応
被災地の環境を長期的・継続的にモニターしながら、住民の健康と安全を守り、生活基盤を回復するため、政府の責任において以下の対応を早急に取る必要がある。
(中略)住民が帰宅あるいは移転、補償を自分で判断し選択できるように、必要な政策を実施する。

提言4・電気事業者の監視
東電は、電気事業者として経産省との密接な関係を基に、電事連を介して、保安院等の規制当局の意思決定過程に干渉してきた。国会は提言1に示した規制当局に不当な圧力をかけることにないように厳しく監視する必要がある。

提言5・新しい既成組織の要件
提言6・原子力法規制の見直し
提言7・独立調査委員会の活用

  <結論の要旨>
 
 【事故の根源的原因】
 
 当委員会の調査によれば、3・11時点において、福島第一原発は、地震にも津波にも耐えられる保証がない、脆弱な状態であったと推定される。

 規制当局が(中略)この全交流電源喪失の可能性は考えなくてもよいとの理由を事業者に作文させていたことが判明した。(中略)このように、今回の事故は、これまで何回も対策を打つ機会があったにもかかわらず、歴代の規制当局及び東電経営陣が、それぞれ意図的な先送り、不作為、あるいは自己の組織に都合の良い判断を行うことによって安全対策がとられないまま3.11を迎えたことで発生したものであった。(中略)

 本来原子力安全規制の対象となるべきであった東電は、市場原理が働かない中で、情報の優位性を武器に電事連等を通じて歴代の規制当局に規制の先送りまたは基準の軟化等に向け強く圧力をかけてきた。この圧力の源泉は、電力事業の監督官庁でもある原子力政策推進の経産省との密接な関係である、経産省の一部である保安院との関係はその大きな枠組みの中で位置づけられてきた。
(中略)

 歴代の規制当局と東電との関係においては、規制する立場とされる立場の「逆転現象」が起き、規制当局は電力事業者の「虜(とりこ)」となっていた。その結果、原子力安全についての監視・監督機能が崩壊していたと見ることができる。(中略)

 何度も事前に対策を立てるチャンスがあったことに鑑みれば、今度の事故は「自然災害」でなく明らかに「人災」である。

 【事故の直接的原因】

 当委員会の調査では、地震のリスクと同様に津波のリスクも東電及び規制当局関係者によって事前に認識されていたことが検証されており、言い訳の余地はない。

 【緊急時対応の問題】

 保安院の機能不全、東電本店の情報不足は結果として官邸と東電の間の不信を募らせ、その後、総理が発電所の現場に直接乗り込み指示を行う事態になった。その後も続いた官邸による発電所の現場への直接的な介入は、現場対応の重要な時間を無駄にするというだけでなく、指揮命令系統の混乱を拡大する結果になった。

 【問題解決に向けて】 

 本事故の根源的原因は「人災」であるが、この「人災」を特定個人の過ちとして処理してしまう限り、問題の本質の解決策とはならず、失った国民の信頼回復は実現できない。これらの背後にあるのは、自らの行動を正当化し、責任回避を最優先に記録を残さない不透明な組織、制度、さらにはそれらを許容する法的な枠組みであった。また関係者に共通していたのは、およそ原子力を扱う者に許されない無知と慢心であり、世界の潮流を無視し、国民の安全を最優先とせず、組織の利益を最優先とする組織依存のマインドセット(思い込み、常識)であった。
(中略)
「組織的、制度的問題」がこのような「人災」を引き起こしたと考える。この根本原因の解決なくして、単に人を入れ替え、あるいは組織の名称を変えるだけでは、再発防止は不可能である。

 【提言の実現に向けて】

 福島原発事故はまだ終わっていない。被災された方々の将来もまだまだ見えない。国民の目から見た新しい安全対策が今、強く求められている。

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