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非暴力行「道」のすすめ

非暴力行「道」のすすめ

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6月29日、大飯原発の再稼働に異議を唱えるため、首相官邸前には一般市民が20万人(主催者発表)集まった。

また、翌日の30日からは、大飯原子力発電所へとつながる道路を市民が封鎖する直接行動が行われた。

最初に述べるが、私はデモや直接行動を手段とする市民の意思表示を支持している。

むしろ、政治への不信が募ればこのような市民の直接的な意思表示が行われるのが当たり前だろう。

 

市民主役が「民主主義」、経済主役は「金主主義」

そもそも論になるが、民主主義国家とは、市役になる国家のことを言う。

市民がお金を税金という形で出資し、政治家、官僚、公務員を雇って、法律というルールを決めて国を運営する仕組みのことだ。選挙で選ばれた政治家や官僚などは市民の指示に従って国を運営することが求められる。

「公務員」が、英語で”Civil Servant(市民に従う人)”と呼ばれるのはまさしくこの理由からだ。

では、いつのまにか政治家や官僚が、「市民」の意見を聞かなくなり、「主従の関係」が逆になってしまったらどうするか。これが、日本で今問われている問題だ。

これまでの日本は、経済を最優先することで、市民の暮らしの向上を目指すという方針だった。「民主主義」というよりも「金主主義」と呼ぶのがふさわしい。

右肩上がりの成長が続いた状態では、「金主主義」が人々の幸福度を高めたかもしれない。しかし、東電の福島第一原発事故をきっかけに、人々の暮らしを軽視した政府の方針を目の当たりにし「金主主義」への疑問が沸騰してきていると言える。

 

国連も認める非暴力行動

さて、話を戻すが、「政府が市民の意見を聞いていない」と思う人たちは、どうすれば良いのか。

もちろん、選挙で投票することによって、自分たちの主張に近い候補者を当選させることもできる。しかし、選挙が行われないときや少数意見が軽視されてしまう場合には、デモや直接行動という直接民主主義的なアプローチをとる必要がある。

日本で、「デモ」や「抗議」と聞くと、「暴動」だと思う人が多いが、これは大きな間違いだ。むしろ、国連などの国際社会でも「民主主義」を維持するために必要な市民の権利と考えられている。 

現に、国連は、ガンディー(ガンジー)の誕生日である10月2日を「非暴力行動」を記念する日として、国際非暴力デーと定めている。ちなみに、これは日本を含む世界中の国々が決議して決めたものだが、日本ではほとんど知られていない。

 

"非暴力行動" から "非暴力行「道」"へ

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「デモ」や「直接行動」を含む非暴力行動の本質は、「過激」「短絡的」というイメージからほど遠く、実はとても奥が深い。

だから、私は非暴力行動の「動」を「道」と置き換えて考えることにしている。そうすることで「茶道」や「合気道」や「柔道」と同様に、非暴力行動にも哲学的な要素があることをしっかり理解してもらいたいのだ。

同時に、非暴力行動を行う私たちも、「道」という言葉に含まれる「礼儀」「相手を思う心」などを意識し、非暴力行動が伝えたいメッセージをより洗練されたものに磨き上げる必要がある。

「見かけ」で判断されるのは納得いかないかもしれないが、非暴力行動の成否が多くの場合「見かけ」によって左右されてしまうことは事実で、特に日本ではその傾向が高いと感じる。

 

非暴力行「道」には4種類ある

非暴力行「道」には大きく分けて、4種類あると考える。

 

定義 

具体例 

対峙する相手との緊張度合 

参加しやすさ 

間接コミュニケーション(Indirect Communication or Photo Opportunity 

活動をニュースなどの媒体に取り上げてもらうことで、問題の当事者や一般に問題意識を持ってもらうこと

パレード
人文字
イベントなど

直接コミュニケーション (Direct Communication)

問題の当事者に直接、メッセージを見てもらう、聞いてもらうこと

首相官邸前デモ

原発担当大臣の車が通過する横の道端で大臣に見えるように抗議活動

非協力 (Non-Cooperation)

ボイコットなど

東電の料金不払い運動、ストライキ

直接行動 (Direct Action)

体をはり、問題行為を止めることによって、相手が無視できない状況をつくること

大飯原発ゲート前でのブロケード

沖縄県辺野古の米軍基地建設反対運動

山口県の上関原発建設予定海域の埋立工事阻止の活動

ローザ・パークス女史事件のバス座席を白人に譲らなかった行動

 

 

 

「非暴力」は「誹謗力」ではない

画像を見る最初に明確にしておくが、上の表の4つのうちどれが優れていてどれが劣っているということはない。状況にあわせて、最適な手段を最適なタイミングで行うことが重要だ。

また、さまざまな人が同時にさまざまな手法を行うことも効果的だ。なぜなら抗議をしたい人たちの幅広いニーズに応えることができるからだ。

非暴力で行われる限り、それぞれのやり方がダメだとか言い争うのは無駄であり、もったいない。

より効果的に行うにはどうすべきかの意見交換は大いにすべきだが、お互いを妨害しあうような意見は目的達成への道を遠ざけるだけだ。

「非暴力」は「誹謗力」ではない。

 

非暴力直接行動の可能性

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日本では上記表の①と②の非暴力行動が多い。③は少数、④になるときわめて少なくなる。

歴史を見てみると④の「非暴力直接行動」が「政治が民意を反映してくれない時」に社会を大きく変えるのに重要な役割を果たしてきたことがわかる。

「非暴力直接行動」に「普通の人」が多く参加できる状況を作りだすことができるかが成果を出すカギだ。

ガンジーは、非暴力直接行動でインドをイギリスから独立させた。

また、1955年、アメリカのアラバマ州で、ローザ・パークス女史が、バス運転手の命令に従わないで黒人でありながら白人優先のバス席を譲らず、逮捕されるという行動を通して、アメリカの公民権運動を盛り上げ、黒人差別法の撤廃を実現した。当時の法律は、黒人は白人に席を譲らなければいけないと定めていたが、体をはって故意に違反し逮捕されることで、その法律の理不尽さを直接訴えたのだ。

彼女の行動が、アメリカ中の黒人の参加するバスボイコット運動につながり大きなうねりとなった。

 

非暴力≠穏便に

「非暴力行動」は必ずしも「穏便に済ます」というわけではない。むしろ、非暴力行動の「直接行動」に至っては、自ら「争いをつくる」ことを目的とする。なぜなら、体を投げだして相手の行動を止めることで、周囲の人に、倫理的な判断を仰ぐからだ。

「争い」という暴力的な行為に発展しそうな状況において、「非暴力」を貫くことで、多くの人に訴えたいメッセージを届ける技が「非暴力直接行動」だ。

 

具体的に非暴力ってどういう振る舞い?

では、直接行動の際の非暴力とはどういうことを言うのか?

直接行動に訴える人々が、以下の5つのことを実行するのは必須条件だ。これをしないと批判が直接行動そのものへと向かうこともある。

① 対峙する相手にも敬意を払う

② 声を荒げない

③ 手を肩より高くあげない・手を頭の上に組む (攻撃すると思われない姿勢をとる)

④ 走らない。逃げない。暴れない。

⑤ にらまない。相手の目をみて対話する

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緊張感の高い現場でもこの状態を保つことができるように、事前に、「罵倒されても言い返さない」などのトレーニングをしておく必要もある。

また、このような行動に参加する場合は、必ず「自分の意思」で参加し、「自分の意思」で参加をやめる決断をしなくてはいけない。

主催者が、事前に状況をしっかり説明し、参加することに疑問を感じる場合は、参加を強制してはならない。できれば、参加することによるリスクもしっかり説明すべきだろう。

 

日本の非暴力直接行「道」

最後に一言付け加えると、日本における「直接行動」への理解はまだまだ低い。海外では、故意に逮捕されることで、ニュースとするなどの手法も取られるが、この時点の日本では逮捕者がでると間違ったイメージが先行すると思う。

逮捕者をださないで行動を続ける日本版の「直接行動」ができるかが問われている。

その点で、「合気道」や「柔道」のように相手の力をうまく利用できる直接行動が効果的だし、Ustreamなどを通じた中継も大事だ。

例えば、雨の中、行われていた大飯原発ゲート前での抗議活動で、過剰な警備をする警察に対峙しながら、自分ではなく警察に傘をさしてあげた女性がいた。過剰な警備という相手の力をうまく利用して自分たちのメッセージを伝える「合気道」的な行動だ。

ずらっと威圧的に並ぶ警察に対して、道路を封鎖しながら対峙する市民全員が、傘を差してあげながら並んだらどうだろう。

彼女らの行動はより拡散していくとともに、市民の反対を押し切って再稼働したという日本政府への批判こそに注目が集まる。

 

非暴力行「道」まとめ

デモや直接行動などの非暴力行動は簡単なように見えて、意外に難しい。

そして実行する人は、対峙する相手、そして仲間からも批判を受けることが多々あるだろう。

しかし、それを乗り越えて非暴力行動を継続できる日本社会を築くことが、そもそも原発の存在を許さない本来の民主主義社会を築くことにつながっていく。

市民の政治参加も促していくからだ。

最後に、非暴力行「道」についてまとめると以下の5点になる。

  1. 市民の権利であり堂々とやるべきものであること
  2. 対峙する相手であっても「礼儀」や「相手を思う心」は忘れないこと
  3. 4種類あるが、お互いに優劣があるものではないこと。
  4. 「見え方」が大事であること
  5. 参加者は自分の意思で参加すること

 

いろいろ書いたが、まずは非暴力行動に参加してみてはどうだろうか。最初から直接行動に参加しろとは言わない。

明日の夕方も首相官邸前でデモが開催される。

百聞は一見(一験)にしかずだ。

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