記事

「上司を出せ」の電話は絶対に無視するべき理由

1/2

なかなか電話を切らせてくれない悪質クレーマーとのやりとりでは、なにを気をつければ良いのか。弁護士の島田直行氏は「意識を向けるべきことは、いかにしてクレーマーに納得してもらうかではない。電話を切るためには『クレーマーの意見を尊重している』という姿勢を見せることが効果的だ」という――。

※本稿は、島田直行『社長、クレーマーから「誠意を見せろ」と電話がきています』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Charday Penn

■1人あたりの対応時間を決めておく

クレーマーは、自分の要望が実現しないとわかると、感情的になりがちだ。普段の暮らしのなかで、第三者から何かを感情的に言われることはあまりない。


島田直行『社長、クレーマーから「誠意を見せろ」と電話がきています』(プレジデント社)

しかし、これが電話となると、相手の雰囲気がわからないため、なおさら困惑する。「相手が興奮しているからなんとかしないといけない」と焦るほど、物事は悪い方向に展開していく。むしろ「なるようにしからならない」と腹をくくったほうが意外とうまく回りだす。

電話に限らず、興奮した相手に対して「興奮しないでください。冷静になってください」と言うのは、意味がないだけでなく、むしろ相手をヒートアップさせてしまうことになりかねない最悪の対応だ。「お前の態度が悪いからこうなったのだろう」と詰め寄られるのが関の山だ。

興奮した相手との長時間の電話で疲弊しないためには、社内で対応するべき時間を共有する。こういった時間が決まっていないがゆえに、いつ電話を切るべきかがわからず、いつまでも相手の話をじっと聞くだけになる。

具体的な時間は、各社が自分たちで決めればいい。通常であれば20分もあればひと通りの質問への回答をすることができるだろう。30分も説明すれば十分だ。こういった時間を経過したら、電話を切るようにしなければならない。

■「あなたの意見は大事だから電話を切る」

さりとて、時間が来たからといって、いきなり電話を切るというのもなかなかできることではないだろう。その場合には「申し訳ありません。○○様のご意見は伺いました。大事なご意見ですので、私が単独で判断することはできません。いったん上司と協議したうえで、検討させていただきます」などと言って切るようにする。

ここで大事なのは、「あなたの意見は大事だから電話を切る」というスタンスを明確にすることだ。内心では「これ以上電話を続けても無駄」と感じたとしても、表に出してはならない。相手からの電話がさらに続く結果になってしまう。

電話を切ることが苦手な人は、電話を切るにはクレーマーに納得してもらわなければならないと誤解している。「電話を切る」と「クレーマーが納得する」というのは、まったく別の問題である。クレーマーが納得しようがしまいが、電話を切っていい。そこをはっきりさせないと、電話を切ることをいつまでも言い出せない。

意識を向けるべきことは、「いかにしてクレーマーからの電話を切るか」であって、「いかにしてクレーマーに納得してもらうか」ではない。「電話を切る」というところからすれば、「クレーマーの意見を尊重している」という姿勢を見せることが効果的だ。これをされると、クレーマーとしても自分の意見を尊重されたうえでの対応であるため、無下にできなくなる。

いったん電話を切ってしまえば、あとは電話ではなく、書面で通知をすればいい。書面の内容としては、「検討のうえ、ご要望には添えない」というものでいい。クレーマーから再度電話があれば、「電話に出ない」という判断も含めて対応することになる。事後的なことは事後的に考えればいいのであって、まずは「電話を切る」ということにこだわっていただきたい。

■クレーマーの主張を整理してあげる

クレーマーは、電話のなかでひたすら自分の要求や意見を連ねる。聞いている側としては、次第に何を言いたいのかわからなくなるときがある。そこで電話を切る時間が近づいてきたら、いったん話を整理するような相槌を打ってみると効果的だ。

たとえば、次のようなフレーズが使いやすい。

「○○様、今回はいろいろご不快な思いをさせて申し訳ありません。当社としては、○○様のご意見を踏まえて早急に対応を検討したいと考えております。ついては○○様のご要望としては、△△という理解でよろしいでしょうか。当方の不手際で誤解がありましたら申し訳ありませんので、確認させていただきました。長時間のお電話でお手を煩わせるのは本望ではありません。この内容で間違いなければ、上司と協議して改めて連絡させていただきます」

何かを回答するにしても、要望内容が固まらなければ、何について回答しなければいいのかわからず、いつまでも電話を聞くことになってしまう。あえて電話の途中で、こちらからクレーマーの主張を整理することで、クロージングに持っていきやすい。

このようにしても、クレーマーのなかには、納得するまで電話を切ることを許さない者もいる。「こちらの了承なく電話を終わらせようとするな」と言う者すらいる。

そういうときは、「会社のルールで原則として30分以上の電話対応はできないことになっております。いったん切らせていただきます」と言って切るほかない。再度電話がかかってきても、出ない。必要があれば、書面で事後的に回答すればいい。いずれにしてもどこかで明確な線引きをしなければ、終わりを迎えることができない。

■「上司を出せ」という要求に屈しない

経営者にとって、クレーマー対応は自ら陣頭指揮をとるべき事項である。もっとも、陣頭指揮をとるべきであるが、経営者がクレーマーと直接対面することはできるだけ避けるべきだ。

交渉においては、決定権を持つ者がいきなり出て行くことがいいとは限らない。その場での判断を余儀なくされてしまうため、相手がクレーマーである場合には避けるべきだ。「事業効率」という観点からしても、できるだけ担当者レベルで対応するべきだ。

担当者がレベルを上げるためには、基本的なスキルを学んだうえで経験を積んでいくしかない部分もある。「上司を出せ」と言われて、「わかりました。お待ちください」では対応したことにならない。なにより言われた上司としても対応できるとは限らない。

いったん上司が出てしまうと、次は「トップを出せ」ということになる。さりとてクレーマーに「上司に回すことはできません。私が責任者です」と言うだけでは話は終わらないであろう。そこで、クレーマーに満足感を与えつつ、上司に電話を回すことを考えることになる。

あわせて読みたい

「クレーム」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    巣鴨の縁日開催に「理解できず」

    佐々木康彦 / ITmedia オルタナティブ・ブログ

  2. 2

    「アベノマスク」政策炎上の正体

    千正康裕

  3. 3

    日本は既に緊急事態宣言の状態か

    自由人

  4. 4

    ロックダウン渋れば損失は巨大に

    岩田健太郎

  5. 5

    陰謀論ダメ 太田光が訴えた意味

    水島宏明

  6. 6

    新型肺炎後の世界はネット主流か

    ヒロ

  7. 7

    東京で新たに130人以上感染確認

    ロイター

  8. 8

    敵はウイルス 政策叩きは止めよ

    青山まさゆき

  9. 9

    15日で変異 コロナの性質に驚愕

    大隅典子

  10. 10

    自民議員 ABC予想の証明を称賛

    赤池 まさあき

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。