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2020年の消費について考える-オリンピックやデジタル化、暮らしの構造変化 - 久我 尚子

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■要旨
  • 2020年の消費について、(1)東京オリンピック・パラリンピック関連消費、(2)消費のデジタル化の更なる加速、(3)暮らしの構造変化の3つのポイントをあげて考えてみたい。

  • 東京五輪では、旅行関連消費の底上げが期待されるが、訪日客の消費はモノからコトへと移っており、リピーターを増やすには魅力的なサービスを提供することが鍵だ。日本人はパブリックビューイング等の「トキ消費」や、混雑を避けて自宅での食事や娯楽を楽しむ「イエナカ消費」に期待ができる。テレワークの更なる拡大でモバイル端末需要も高まる可能性もある。

  • 2020年はキャッシュレス決済やサブスクリプションサービスといった「消費のデジタル化」が更に加速し、特にシニアのスマートフォン利用が拡大するだろう。現在のところ、月額定額制で使い放題のサブスクは、現在のところ、スマホを自在に操る若い世代の利用が主だが、実は年金や貯蓄に頼るシニアの消費生活と相性が良い。

  • 2020年に限らず今後も続く大きな流れとして「暮らしの構造変化」がある。単身世帯が増え、商品やサービスが小型化している(消費のコンパクト化)。共働き世帯が増え、家事をはじめとした時短化・代行需要が高まっている。また、大学進学世代が母親となり、少子化でも子どもの教育関連市場は盛り上がりが期待できる。

  • これらには「サスティナブル」という共通のベースもある。五輪は持続可能性を意識した大会運営が必要であり、デジタル消費として見られるサブスクリプションサービスや消費のコンパクト化は、無駄な廃棄を減らす社会づくりにつながる。近年、深刻な自然災害が相次ぐ中で、次世代ほど環境問題への意識も高まっているだろう。消費行動を捉えるには、目の前の事象やすぐ先の未来だけではなく、暮らし方や価値観の変化という大きな流れも見る必要があるだろう。
■目次

1――今年の消費の振り返りと2020年の3つのポイント

2――東京オリンピック・パラリンピック関連消費
 ~訪日客のコト消費、日本人のトキ消費とイエナカ消費
  1|訪日外国人需要~政府目標達成で約6兆円、訪日客もモノからコトへ
  2|日本人需要~感動を共有するトキ消費、混雑を避けるイエナカ消費

3――消費のデジタル化の更なる加速~シニアのスマホ利用が加速、サブスクも?

4――暮らしの構造変化
 ~消費のコンパクト化、時短化や代行需要の高まり、子どもの教育熱の高まり

5――おわりに~サスティナブル、持続可能性への配慮という流れも

1――今年の消費の振り返りと2020年の3つのポイント



2019年もカウントダウンの時期に入った。今年の消費に関わる主な出来事を振り返ると、5月の改元に伴う大型連休、9月のラグビーW杯、10月の消費税率8%から10%への引き上げなどがあった。また、9月には観測史上最大の大型台風が上陸し、甚大な被害をもたらし、消費行動にも多大な影響を及ぼした。

一方、今年の流行という観点では(図表1)、街にはタピオカミルクティーが入ったカップを持ち歩く若い女性があふれ、「○○ペイ」という決済サービスが乱立し、100億円規模の消費者還元施策や消費増税時の「キャッシュレス/ポイント還元」事業の実施されたことで、消費者はこれまでにも増して、何がお得なのかを考えた1年でもあっただろう。

さて、2020年は、どのような消費が盛り上がるのだろうか。(1)東京オリンピック・パラリンピック関連消費、(2)消費のデジタル化の更なる加速、(3)暮らしの構造変化の3つのポイントをあげて考えてみたい。

2――東京オリンピック・パラリンピック関連消費~訪日客のコト消費、日本人のトキ消費とイエナカ消費

1訪日外国人需要~政府目標達成で約6兆円、訪日客もモノからコトへ
東京オリンピック・パラリンピック関連消費は、訪日外国人需要と日本人需要の2つに分けて考えてみたい。



訪日外国人需要については、2020年の政府目標である4,000万人1を達成できれば、旅行客の消費総額は約6兆円となる見込みだ(2018年は3,120万人で4.5兆円)2。訪日客が増えれば、宿泊や飲食、交通、娯楽・サービス、買物などの旅行に関わる消費が、単純に底上げされることが期待される。

一方で近年の傾向として、訪日客の消費行動は、日本人と同様に「モノからコト(サービス)へ」と移っていることに注意すべきだ。

訪日外国人旅行客の1人当たりの消費内訳を見ると、「買い物代」の割合が低下し、「宿泊費」や「飲食費」等が高まっている(図表2)。代表的なモノ消費であった中国人旅行客の「爆買い」は、2015年をピークに沈静化している。訪日客にとって、浴衣や日本酒などの日本ならではのモノも魅力的だろうが、何より訪日客を魅了するようなサービスを用意することが、リピーターを増やす上では効果的であると考える。

1 政策会議「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」(2016年3月30日)
2 日本政府観光局「訪日外客数」によると2018年の訪日外客数は31,191,856人、観光庁「訪日外国人消費動向調査」によると2018年の訪日外国人旅行消費額は4兆5,189億円であることから単純に推計すると、4,000万人で5兆7950億円。


2日本人需要~感動を共有するトキ消費、混雑を避けるイエナカ消費
日本人需要については、観戦需要と開催時の混雑に伴う需要に大別できるだろう。

観戦需要としては、家庭での観戦を充実させるためのテレビの買い替えなどもあるだろうが、今年10月の消費増税によって、既に消費が先食いされた部分がある。また、増税後の消費者の節約志向が根強く残るとすれば、オリンピック・パラリンピックという限定された期間だけのために高額なモノを買う消費者は多くないのかもしれない。

一方で、盛り上がりが期待されるのは「トキ消費」だ。トキ消費とは、ハロウィンや音楽フェス、アイドルの総選挙、W杯など、その時、その場でしか味わえない盛り上がりを共有することであり3、より限定されたコト消費とも言えるだろう。SNSが消費行動に浸透することで、SNS映えしやすいイベントが好まれる傾向もあるようだ。

トキ消費の肝は、同じ趣味嗜好を持つ他者と感動を共有することにもある。今回のような自国開催の五輪では、「共に日本人選手を応援したい!」という熱い気持ちが特に高まることが予想される。一方で、希望通りの観戦チケットを得られた消費者はわずかだろう。その受け皿として、例えば、スポーツカフェやイベントスペースなどにおけるパブリックビューイングといったトキ消費が期待できるのではないだろうか。

また、混雑に伴う需要によっては、「イエナカ消費」が期待できるだろう。猛暑の中で、会場付近は交通機関の大混雑が予想される。混雑を避けて家の中にこもりたいという消費者も少なくないだろう。自宅での食事や娯楽を楽しむためのイエナカ消費もじわりと盛り上がる可能性がある。

なお、開催時は通勤も課題だ。既に今年の夏、2020年の混乱を前に、「テレワーク・デイズ2019」」として、政府の旗振りでテレワークの推進が進められた。個人というよりも企業需要となるのだろうが、ノートパソコンやタブレットなどのモバイル端末需要が高まる可能性もある。 3 参考:博報堂生活総合研究所酒井崇匡「【キーワード解説】「トキ消費」」(2018/1/30)

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