- 2019年12月21日 11:15
なぜ韓国は3年半ぶりの政策対話に応じたのか
2/2「互いの発表を否定するこれまでの泥仕合は避けられた」
さていつものように新聞の社説を見てみよう。
毎日新聞の12月18日付の社説は、「輸出規制で日韓対話 信頼回復へ課題の克服を」との見出しを付けてこう書き始める。
「日本の対韓輸出規制をめぐって、両国政府の担当者が対話した。意見交換は10時間にわたった。この機運を生かして、本格的な関係改善につなげてほしい」
沙鴎一歩も本当の意味での関係改善を望む。毎日社説は書く。
「韓国側は、半導体材料3品目の輸出規制強化や、輸出手続きを優遇する『グループA(ホワイト国)』からの除外措置を撤回するよう改めて求めた」
「日本は韓国の輸出管理体制が不十分だと指摘している。このため、韓国側は人員の増強計画などについても説明したとみられる」
「双方は『相互理解が進んだ』と評価した。対話の継続で合意し、対外的な公表内容も事前にすり合わせた。終了後に互いの発表を否定するこれまでの泥仕合は避けられた」
毎日社説が指摘するように「泥仕合が避けられた」だけでも前進である。裏を返せば、それだけ日韓関係は悪化していたことになる。
日韓関係を悪化させた原因は元徴用工問題にある
毎日社説は続ける。
「この判決により、両国関係は過去最悪と言われる状況に陥った。1965年の日韓国交正常化の根幹を揺るがす内容だったためだ」
この判決とは昨年10月の韓国最高裁による元徴用工判決である。これまで安倍政権も主張してきたように「日韓国交正常化の根幹」に大きく関わる問題判決なのである。
「日本政府は表向き否定するものの、輸出規制は元徴用工問題で動こうとしない韓国に対する報復措置だと受け止められている。元徴用工問題の解決なしには、輸出規制措置の撤回も困難である」
日韓関係を悪化させた原因は元徴用工問題にある。この問題の解決なしには、輸出規制措置の撤回などできないのだ。毎日社説は問題の本質をきちんと把握している。
解決を進めるのは「天皇陛下に謝罪を要求」の国会議長
「韓国国会では、日韓両国企業などが自主的に寄付金を拠出する形で元徴用工問題の解決を図ろうという動きが見られる。市民団体の反対や国会の混乱などにより先行きは不透明だが、進展を静かに見守りたい」
実際、韓国の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長が日韓両国の企業・個人などの寄付金によって元徴用工などに慰謝料を支給するための法案を国会提出した。韓国が設立する財団法人に寄付金による基金を設立するものだ。だが、文議長は露骨な表現で天皇陛下に謝罪を要求した張本人である。いくら親日家との評価があるはいえ、そんな文議長を沙鴎一歩は信用できない。ここは「進展を静かに見守る」のではなく、注意深く見ていく必要がある。
それだけではなく、寄付金による解決策はいくつかの問題も指摘されている。
たとえば原告が拒否すれば、日本企業の資産が売却されて賠償に充てられる危険性はある。実際に「日本企業の謝罪と賠償が必要だ」と反発する原告もいる。支給対象の範囲も広げられ、韓国政府から慰労金を受け取ってきた元軍人・軍属なども加えられた。
「韓国政府の不毛な反発」とまで言い切る産経社説
次に産経新聞の社説(主張、12月18日付)を読んでみる。
嫌韓を隠さない産経新聞社の社説らしく、見出しは「対韓輸出管理 日本は揺るがず原則貫け」とストレートである。
産経社説は指摘する。
「日本の措置に対する韓国政府の不毛な反発が収まるのであれば、この対話は確かに重要な意義を持つ。ただ、両国の溝はいまだ埋まっておらず、本当の『進展』には、なお時間を要することになろう」
「韓国政府の不毛な反発」と言い切るなど産経社説はよほど韓国が嫌いなのだろう。さらに産経社説は書く。
「韓国が日本に求める措置撤回について、菅義偉官房長官は『相手国と協議して決定するような性質のものではない』と述べた」
「当然である。日本が問題視する韓国側の体制不備について、韓国自身が具体的な改善策を示さないかぎり、日本は厳格化した手続きを元に戻しようがない。この点を韓国は厳しく認識すべきだ」
悪いのはどこまでも韓国だ、というのが産経社説のスタンスなのだ。かたくな過ぎないか。これでは国と国との交渉ごとは成立しない。外交の基本は、自国の利益を念頭にしながら相手国の痛いところを巧みに突いて相手国を納得させるところにある。理想は肉を切らせて骨を断つ戦術を駆使することだ。産経社説では相手の肉も骨も切ってしまうことになる。
なぜ「対韓輸出規制」と「徴用工」を結び付けないのか
産経社説はこうも主張する。
「何よりも韓国が信頼に足る姿勢をみせているかどうかが問われよう。韓国側代表は対話後、『韓国の輸出管理制度と運用が正常かつ効果的になされていることを説明し、理解を求めた』と語った。だが、現体制で問題なしというばかりでは、日本の懸念に真摯に応えようとしているとは思えない」
韓国側に「信頼に足る姿勢」を求めるこの産経社説は、かなり大上段に振りかぶっている。いまにも韓国が攻めてくると一方的に決めつけ、真正面から対応しようというのである。
最後に産経社説は主張する。
「近くソウルで次回対話が開かれる。もはや、かつてのように韓国の体制不備を大目にみることはできない。安易に妥協すれば、『徴用工』問題や慰安婦問題などと同様、再び大きな禍根を残すとみておかなくてはならない」
産経社説は「輸出規制を無造作に緩めると、徴用工問題と同じように禍根を残す」との趣旨で主張するが、前述したように毎日社説は「元徴用工問題の解決なしには、輸出規制措置の撤回も困難」と指摘する。産経社説と毎日社説のどちらが正しいのか。
どう考えても対韓輸出規制の問題は、徴用工の問題が発端である。両者を切り離すことはできない。徴用工問題を解決して初めて対韓輸出規制問題も解決されるのである。そこをなぜ、産経社説はお得意のストレートさで主張しないのか。残念である。
(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)
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