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- 2019年12月21日 08:26
排除ではなく、居場所を。「アート×ホームレス=2020 and beyondの東京を考える」より
2/2ホームレスの男性が半年アートに没頭することで、自立する気力が湧いた。そのカギは
このような英国からの報告を受け、日本でホームレス支援の活動を続ける稲葉剛氏は非常に感銘を受けたと言い、2つの質問がなされました。1つは、「ホームレス憲章」に関するもの。「憲章を作る過程で、最初から話し合いがまとまったのか、ホームレスの人たちも参加できるということに対して、軋轢(あつれき)や異論はなかったのでしょうか」という質問です。
つくろい東京ファンド代表理事の稲葉氏
立場の異なる者同士が対話を続けるのは、困難がつきもの。参加する人の背景や立ち位置によって、時には同じ言語を話しているとは思えないくらい「言葉」が異なることを経験したと言います。その過程では、会議室でミーティングするよりも、合間に一緒にお茶を飲んだりすることで大切な関係性が築かれていると気づくこともあったそうです。ホームレス状態に陥ってしまう人を生み出す構造や格差を広げるシステムを変えようとするのは壮大なプロジェクトで、結果が見えるようになるまでには20年、30年と長い時間を要します。だからこそ、まずはお互いを理解すること、そのために、お茶を飲みながら関係性を築くのが大事なのだそう。

作品の前で話に耳を傾ける参加者たち
ダニーは長い間、路上生活を送ってきた男性です。普段、誰ともあまり話しない彼が、ふらっとアートクラスにやってきたときは皆が驚いたそうです。当初、ただアートに没頭したダニーは、半年経って、ようやく「住宅」のことを話し始め、その後生活を立て直していきました。アートに没頭した月日が、自分を見つめるのに必要な時間だった、ということでした。また、逆にアートに触れ合う機会がなかった場合、そういう結果にはつながらなかっただろうということも語られました。アートに取り組むことにより、どのような価値が生まれるのかをきちんと評価することも重視していて、それが、政策立案者を動かす根拠になるということでした。

日本では「衣食住が足りてから文化的なことに取り組むべき」と考えられがちだが、人間にはアートやスポーツ、コミュニティもパズルのピースのように同時に必要だ、というという概念を示した通称”ジグソーモデル”(With One Voiceの発表資料より)
街をさまよう中高生、DV被害者、災害避難者、難民・・・多様化する「ホームレス」
英国側からも東京へ、今どのような課題を抱えているかという質問がなされました。稲葉氏によると、「東京で一番ホームレスが多かったのは、1999年で5,800人ほどだったが、今では1,100人ほどになっています(※)。つまり路上で寝ている人が減ってきているということで、東京都のホームレス問題の優先順位が下がってきています。そこをどういうふうに行政に訴えていくかが課題です」と語りました。※ 東京都福祉保健局によると、1999年は5,521人、2019年は1,126人。
ARCHの河西氏からは、「ホームレス」の人々が多様化していることが語られました。路上生活者だけでなくネットカフェ滞在者、家にいられず街をさまよう中高生、DV被害者、災害避難者、難民など、いま多様な人々に広がる不安定な居住状態=ホームレス問題に、2020 and beyondの東京はどう向き合い、あらゆる人々に居場所をつくることのできる都市になるのか-。
河西氏はまた、ARCHの「ストリートカウント」を例にとり、行政を批判したいわけではないと明言。「東京都の人たちとは会議室でしか会っていなかったですが、マンチェスターの人々の『一緒にお茶を飲む』ということに非常に感銘を受けました。」と語りました。

ARCHの河西氏
文:八鍬加容子
- ビッグイシュー・オンライン
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