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- 2012年07月05日 09:00
「評価」が「貨幣」を超える日がやってくる!? 岡田斗司夫×田端信太郎対談【前編】
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田端信太郎氏(左)岡田斗司夫氏(右) 撮影:野原誠治 写真一覧
対談のテーマとなったのが、岡田斗司夫さんがダイヤモンド社から出した本「評価経済社会 ぼくらは世界の変わり目に立ち会っている」で、岡田さんが書いている「評価経済社会」について。
これから貨幣経済はどうなっていくのか?評価経済というものが、私たちの未来にどのような影響を与えるのか?2人が徹底的に議論しました。
1時間を越える対談となりましたので、前後編でお送りいたします。
対談場所:ソーシャルアパートメント麻布十番
■出演
岡田斗司夫(FREEex代表)
田端信太郎(NHNJapan 執行役員兼広告事業グループ長)
司会:大谷広太(BLOGOS編集長)
「評価」と「お金」どちらも持つのが理想
田端:岡田さんの「評価経済社会」って本を読ませてもらって。「評価経済社会」については97%ぐらい“同意”なんですよ。割と本の内容を真に受けるところがあって、ドンドン実践したいみたいなところも含めて、色々考えているんですけど。でも、具体的にどうしたらいいのってところを教えてほしいんですよね。
岡田:田端さんの場合は、リアル世界ですでにお金が回る職業をやっているから、割とやらなくていいっていうのが、僕の見解なんですよ。「評価経済社会」っていうのは、社会全体が一斉にガっと向かうんではなくて、人ごとに違うと思うんですけど、たぶんね、金を稼いでいる奴ほど遅いんです。ていうのは「評価経済」で、例えば「物を得る」ことって、お金が無くても可能なんですけど。
頭を下げたり、ほんのちょっと挨拶をしたりとか、面倒くささがあるんですよ。でも、金だったらその面倒くささがないじゃないですか。その面倒くささを取るのがイヤな人は、金払ったほうが手っ取り早いから「評価経済なんていらないよ!」「金でいいじゃん!」って言えると思うんですね。でも、現にお金回りがそんなに裕福でない人っていうのは、同じように金稼いで、年収1000万とか1500万を目指すよりは「評価」を稼いだほうが、幸せに近づくんじゃないのかなと。
話を戻しますと、田端さんの場合は「評価経済」のつまみ食い。「円」だけで(貨幣を)持っているとヤバいのと同じです。結局は両方(貨幣経済と評価経済)やっているのが一番おいしいと思うんですけど。
田端:今日のテーマなんですけど、本の帯にも「お金の時代から評価の時代」とか、シフトするような表記がありますけど、そういう分脈でどうしても考えちゃって。「これからはお金があっても仕方ない」だとか、「お金持っている奴が世の中の強者だったけど、これからはお金を持っている奴がむしろ弱者」みたいに、完全に入れ替わったっていう形の理解をされがちなところがあるんですけども。
岡田:どうしても本の中で「5年スパン」「15年スパン」「30年スパン」を混ぜて書いちゃているから、絶対混乱が起きちゃうんですよね。基本、お金の有用性はなくならないんですよ。でも、お金だけで評価がない人は、すごく金がかかるようになっている。「評価社会」じゃなくて「評価経済社会」だから。基本は「損」か「得」なんです。「金あったほうが得じゃん」っていう社会から「評価されたほうが得じゃん」とか「評価を失ったら損じゃん」っていう社会になるだけの話。
田端:色々な意見を読んでみたんですけど、もしかしたら誤解されているかもしれない方がいっぱいいて。「損得」を気にしているやつはそもそも評価を得られない。究極の善人みたいな感じになって、いいことをやっていれば餓死しそうな時でも、手を差し伸べてくれる人がいるみたいな。甘っちょろいといえば甘っちょろいんじゃないかなと。
岡田:それはね、マネー経済社会で「本当の豊かさとは?」と言うのと全く同じで。「評価経済社会」で、本当に評価が高いとか言ってもあんまりしょうがないんですよ。そうじゃなくて、マネー経済社会だったら「金に汚いもキレイもあるかい!とりあえず、金稼がんかい!」みたいなもんで。「評価経済社会」も、正直なところ「評価にキレイも汚いもあるかい!」という考え方です。
田端:あっ、そうなんですか!いい評価、悪い評価っていうのはない?
岡田:もちろん、いい評価、悪い評価っていうのはあります。マイナスになっちゃう評価もあるんですけれど、偽善はやったほうがいいというのが考え方なんですよ。偽善を一度やったら死ぬまで偽善をつらぬけと。十分な偽善は、本当にいい行為と見分けがつかないから、それで十分じゃないかっていうのが、僕の考え方なんですけど。
田端:もう1ついうとね。僕なんかも一応、ビジネスマンの端くれとして、頭の80%か90%はお金のことを考えているんです。お金を稼ぐことよりも、ある意味「評価」を稼ぐほうが、もっと難しいんじゃないかって僕は思うんですよ。だから変な言い方すると、さっき岡田さんが「今はお金がある人はやらなくていいです。お金が無い人こそ、むしろ評価を稼ぎましょう」っておっしゃってたんですけど。ちょっとおっさん臭いことを言わせてもらうと“金を稼げないやつが評価を稼げるのかよ”というところはありまして。
岡田:それはね、15年前か20年前は、金を稼ごうと思ったら、ワリと誰でも稼げる時代だったそうなんですけど、今は稼ぎにくいんですよ。この時代の若者が稼げるのって小金ですよ。数万円とか数千円の金だったらなんとか稼げるんですけども、年収何百万とか何千万っていう世界はみんななかなか行きにくいので、両方を成立させようとすると、すごくしんどくなると思うんですよ。
田端:お金じゃなくて評価を優先させるっていうことは、例えば今時給1000円で一日8時間働いているけれども、それを4時間にして、残りの4時間で・・・みたいなことですよね?
岡田:彼らは就職しようとする時にどうしても「条件」にこだわっちゃうんですよ。でも親の世代は「お金」だから。ちゃんと社会福祉あるのか? 正社員待遇なのかって言って、金の世界にこだわっちゃって、年収200万とか250万いくんだったらいいんだけども、フリーターとかいつまでやっていてもダメだっていう風になっちゃうんですよ。でも、僕が見ている限り、そうやってムリヤリ就職した大学生って、4分の1ぐらいが最初の2~3ヶ月でドロップアウトして、1年以内で辞めちゃう場合がすごく多いんです。
そこまでムリをして、年収200万とか300万にこだわって就職して、会社辞めちゃって。でも会社一度辞めちゃったら、バツがついちゃいますよね。バツイチみたいに。それよりは、時給800円とか1000円ぐらいのバイトをずっとやりながら、それで華やかに暮らすことを考えたほうが豊かだと思うんですよね。なんでかっていうと、年収200万とか300万で、意に沿わない仕事をやっていたら、土日とアフター5にかかるストレスが大変じゃないですか。結局、それに金を使っちゃうんですよ。稼いだ金の大半をストレス解消に使っちゃってるから、これは効率が悪い。
田端:車でいえば、燃費が悪いですよね。
岡田:はい。だったら、もうちょっと自分でやりたいことをやって、将来が見えなくても時給800円とか1000円で、ダラダラ働いていたほうがいいし、そのほうが自分のやりたい仕事だから周りの人に評価してもらえる。でも、今ムリヤリ、年収200万とか300万とかの正社員枠の仕事って、お前じゃなくてもいい仕事ばっかりだと思うんですよ。そうすると評価がたまらない。まだパン屋さんでバイトをして、そのパン屋さんで役に立つ店員になったほうが評価が貯まると僕は思っているんですよね。
田端:それって“手に職をつける”とか“目の前の金を追わずにコツコツやっていれば、お金はあとからついてくる”とか、そういうのと実はそんなに違わないんですよね?
岡田:違わないですね!そういうのって「人生訓」として語られるんですけど、僕は「損得勘定」で言っているんです。損得勘定や長期的な人生の得を考えるんだったら、手近な金に飛びつかないで、楽しいことで周りの人に感謝されることのほうが効率がいい。結局、ストレス解消で金使うことになっちゃうんですね。知り合いで金持ちの人いますけど、金の使い方を見たら、すごいもったいないんですよね。1000万円するカバンを買ってみたりとか。




