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「萩生田大臣の発言は、まさに制度の本質を掴んでいたと思う」英語民間試験に続いて記述式問題も見送り…翻弄される高校2年生の叫び


 「受験まで1年に近くなったので、受験生のみなさんが落ち着いて目標に向かって準備をしていただくには、ぎりぎりのタイミングではないかと思って決断に至った次第。生徒や保護者、教師をはじめとする関係者のみなさまにはご迷惑をおかけする結果となり、誠に申し訳なく思うがご理解を賜りたいと思う」。

 萩生田光一文部科学大臣は17日、2021度から始まる大学入学共通テストで導入される予定だった国語と数学の記述式問題の見送りを表明した。

 安倍政権が推進してきた大学入試改革。その柱が、現行のセンター試験を廃止して大学入学共通テストを実施すること、そして英語によるコミュニケーション能力の向上を目指し、「読む・聞く・書く・話す」の4技能を評価するための民間試験活用、思考力・判断力・表現力を重視するため、数学と国語での記述式問題出題だった。


 このうち、英語民間試験は7種類のものから2度試験を受けるという形式を取っているが、試験会場が都市部に集中していること、1回につき約6000~約25000円の費用がかかることから、経済状況や居住地域によって機会に格差が出てしまうとの指摘が相次いでいた。そんな中、萩生田大臣がテレビ番組で「身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」と発言。撤回・謝罪したものの批判の声はさらに高まり、導入延期に追い込まれることになった。また、国語と数学の記述式問題についても、自己採点の難しさや50万人分の答案を公平に採点できるのか、といった課題が指摘されてきた。


 萩生田大臣の会見について、Twitterなどで当事者の声を発信している「大学入学共通テストから学生を守る会」の田中さん(高校2年生、仮名)は、「見送りになって安堵の気持ちはあるが、問題の傾向や配点がどうなっていくのかが明らかにはされなかったので、そういうところの不安は払拭されていない。そもそも、なぜこの時期まで発表されなかったのかということについては怒りも感じている。

人によっても違うが、記述式が導入されるということで、その練習をしてきた人もいるし、模試も2年生用と3年生用とでは記述式に対応するために傾向が変わっているので、すでに差がでてきている」と話す。

 さらに田中さんは「“記述の能力を高めたい”、“思考力、表現力を高めたい”という考え自体は悪くないと思うが、本当にそのことを考えてこの制度を作ったんだとしたら、あさっての方向を向いてしまっていると思う。50万人が受ける全国統一の試験に対して、このような形で記述式を導入しようというのは、現実が見えていないのではないか。端的に言えば、公平・公正な入試ができないということ。

試算では1万人くらいの採点者が必要だと言われているが、質の高い採点者を1万人も集められるのか、採点基準を統一できるのかといわれれば、それはすごく難しいと思う。採点によって結果にばらつきが出てきてしまえば、公平・公正な入試は不可能になる。また、自己採点がきちんとできないとなると、受験生がしっかりと志望校を選べなくなってしまう」と指摘した。


 また、田中さんは英語の民間試験についても「7種類も試験があるので、基準などをちゃんと統一できるのかという問題もあったし、そもそも検定試験と入試は根本的に違う。検定試験で何らかのミスがあっても国レベルの問題にはならないが、国が主導する一次試験で少しでもミスが出てしまえば、本当に国家レベルの問題になってしまう。そういうところに認識の甘さが出ているのではないか。

また、萩生田大臣の発言は“ありえない”と思ったが、制度の本質を掴んでいるなと思った。つまり、大臣も問題発言をしたくてしているわけではなくて、この制度を導入しようとすると、やはり身の丈に合わせた、と発言せざるを得ないということだ。まさに制度にボロがあるからこそ、大臣からもボロが出てしまったのではと思う」と厳しく批判した。


 田中さんの話を受けて、タレントのトラウデン直美(慶大在学中)は「思考力を高める問題はマークシート式でも作れるはずだし、そういう問題を解いてきた経験もある。そういう方向にいけば良かったのではと思う」と指摘。


 リディラバ代表の安部敏樹氏(東大卒)は「私は全く勉強をしていないところから始めたので、進捗度を確認するのにセンター試験の問題はすごく良くできていた。刷新するのは良いが、ここまで作り込まれているものをさらに良くするのは難しいと思うし、採点者のレベルを考えれば、1万人は現実ではない。

ただ、英語に関しては、目指す方向性は正しいと思うし、ゼロから試験を作るよりも、受験料や交通費を国が出しても300億円くらいなので安上がりだ。また、一方、記述式問題については狙っていたことがこの仕組では達成できない気がするので、各大学の二次試験で出してもらい、採点も大学に予算を付けてやってもらったいいと思う」とコメント。


 大王製紙元会長の井川意高氏(東大卒)は「私は共通一次試験世代だが、全国共通試験ではなく、各大学がそれぞれでやれば良いと思っている。それでも共通の仕組みとしては、今のセンター試験、その前の共通一次は悪い仕組みではないと思うし、広く浅く最低限の理解度を確認する試験、“足切り用”の試験としても良いと思う。ただ、現場を知らない役人がいじくることで、わけがわからない、いびつなものにしてしまう。今回もそれが出たのでは」と話した。

 田中さんは「大学で勉強をする上では高校の学業がベースになってくると思うので、それを振り返る試験には意味はあると思う。将来は研究をして、社会の役に立てるようなことをしたい」と夢を語っていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶動画:教育熱心な萩生田大臣がなぜ”身の丈”発言? 文科省担当記者が解説

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