



“高齢者が飲みに行けない理由”を介護の専門家が一つひとつ解決し、重度の要介護者も飲んで歌える『介護スナック竜宮城』(神奈川県横須賀市)が話題だ。オーナー・佐々木貴也さんに、人気の秘密を聞いた。
【別写真】昭和ムードの演出に欠かせないミラーボールとシャンデリア
「寝たきりのままで終わりたくない」「おいしい酒が飲みたい」「家族や友人とカラオケを楽しみたい」。
鍼灸・訪問マッサージ、デイサービスなどを行う事業所を運営する佐々木さんが、利用者の多くからこんな切なる願いを聞き、2013年に神奈川県横須賀市にオープンしたのが『介護スナック竜宮城』。完全予約制、65才以上と身体障害者限定のスナックだ。
「ぼくも酒が好きだから、気持ちがよくわかりました。だから行けない理由を一つひとつ聞いて解決したのです」(佐々木さん・以下同)
まず体の状態で外出がままならない人がいるから、介護車両による送迎付きに。車いすやストレッチャーで勇んで来店する人もいるという。
また“高齢なのに飲んで大丈夫?”という家族の心配に応えるべく、事前にゲストの体の状態、アレルギー、酒の適量などを確認。当日は本人の自由な注文を聞きつつ、飲んだ酒類や量を細かくチェックし、必要に応じてセーブも。
咀嚼や嚥下に問題がある人にも食べやすい料理、バリアフリーや手すりなどの工夫を凝らした店内、介護スキルを持つスタッフと、きめ細かく配慮。できなくなったことをさり気なく支えられるのは、専門家ならではの視点と力だ。
「ソファは贅沢なベルベット地に。万一漏らしてもOKの完全防水。そして酒もこだわって銘酒をそろえています」
いずれも今の高齢者が懐かしむ昭和のスナックを再現。現役時代を思い出し、存分に楽しんで元気になる人、涙して感激する人、そして家族にも大いに喜ばれているという。
「酒を楽しむ自由と、安全にケアすることの兼ね合いは難しいところ。でも要介護者や高齢者は決して特別じゃない。ぼくらと同じ場所で生きているし、ぼくらもそちらに向かっている。だから同じように、楽しんでもらいたいのです」
佐々木さんの思いや『竜宮城』のシステムを踏襲したフランチャイズ展開がまもなく始動する予定だ。
【information】『介護スナック竜宮城』●神奈川県横須賀市追浜町3-5/2時間8000円飲み放題・食べ放題・歌い放題、送迎付き
●写真提供/介護スナック竜宮城
※女性セブン2020年1月1日号