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女ぎらい―ニッポンのミソジニー

先日(脚注)、上野さんを囲む食事会と特別講演会があったので、きちんと読んだのですが、いやはや面白かったです。
『女ぎらい ― ニッポンのミソジニー』
上野千鶴子:紀伊国屋書店

内容は、たった一行では、イブ・セジウィックの提唱した、ホモソーシャル、ホモフォビア、ミソジニーの概念を、日本の文化の文脈の中で解題した本・・・で、これ以上は、以下の書評を読むと、素晴らしくまとめてあるので(最後の逆襲も含めて)、書き直す気になりません。すみませんが、ご参照下さい。

東京大学(英米文学)・阿部公彦の書評ブログ
『女ぎらい ― ニッポンのミソジニー』上野千鶴子(紀伊國屋書店)

もちろん他にも興味深い点がたくさんあります。女性のミソジニーの中で語られる女子高文化、そして、林真理子、酒井順子、山田邦子、藤原紀香「的」な、それぞれの戦略の話はなるほどだし、ルネ・ジラールの「欲望の三角形」で、フロイト/ラカン的な鏡像対象への同一化への欲求が、「同一化対象の欲望の対象」に対する欲望になることで、男=男-女の三角関係が生まれるという部分を、友だちの彼女を好きになりやすいことの説明にしてたところなど、なるほど「共同注視的自己形成だ」と考えながら読みました。

また、参加者48名中男4名の(針のむしろの)特別講演会では、この本の感想を中心にワークショップをしたのですが、この本を読むのが苦しかったという方が多かったです。おまけに、ぼくより若い方の方が多かったのに、典型的な「男尊女卑」の体験がたくさん語られて驚きました。もちろん、まだまだ男女差別が残っていることは予想していたけど、妻と娘が父の帰りを三つ指をついて迎えるという家庭の話などには、さすがにまいりました。ぼくが、この本を楽しく読めたのは、やはり当事者的な体験がないからだと痛感しました。

ただ、ぼくは多少ミソジニー偏差値が低いとも思いますし、この点については、今も健在の両親、特に母親に感謝しています。母は、専業主婦ですが、女性も自立すべきと考えて、ぼくに対して家庭以外にも生きがいを持てる人と結婚すると良いと言ってました。父は、サラリーマンでしたが、幸い小さい会社の雇われ役員で、毎日7時には帰宅する人でした。そのため、会社のために働いている感じではなく、また、お金は大切なものではないというのが口癖で、その価値観が、ぼくの根底にあります。父は、昔ながらの何でも母にやってもらっている人でしたが、母を見下す態度を取ることは決してなかったこと、うちには体罰が全くなく、常に子どもは自由で、勉強はするなと言われたことなど、父にも感謝しています。

さて、講演会の話題で、メモしたこと。

男女差別の証拠として、「男性に生まれてきたかった女性」の割合が「女性に生まれてきたかった男性」に比べて、圧倒的に多いこと。確かに、ぼく自身、自分が女性だった方が良かったと思ったことは、あまりないです。ただ、今回のワークショップで、今でも男女差別が色濃く残っていることは実感したが、それでも「希望」だと思えたのは、あるお母さんが、自分の小学生の娘に尋ねたら、「男の子の方が良かったと思ったことはないよ」と聞いたという話で、少しずつは変わっているのだろうと思います。

猥談や女性蔑視の話題というのは、女性が入るとセクハラになるが、男性しかいない場でもホモソーシャルな「絆」を強める圧力になるということ。特に、それが「笑い」を誘う形の場合、強い同調圧力になるという。これは、男女の話だけではなく、自分が留学中に、英語の冗談についていけないと、疎外感を受けたことを思い出しました。ぼくは、男性同士だけの場でも、いわゆる下ネタを話すのが嫌いです。その意味で、フェミニズムの中で、性があからさまに語られることには抵抗感があり、自分はフェミ偏差値が低いのかと思っていましたが、これはホモソーシャルフォビアだったんだと、少し「自己肯定」できました。

今回はミソジニーでしたが、男女だけではなく、人種、障害、年齢、さらに、思想や嗜好など、種々の要因での「差別」が存在します。それは、その対象を阻害化したところで作られる「笑い」だということは、非常に重要だと思いました。これまで気がつかずに、笑っていなかったか、振り返ってみないといけません。

最終章で提言されている、男性がミソジニーを超える方法として、「身体の他者化をやめる」とあるのも印象的でした。ぼくは自己紹介で「趣味は子育てです」と書いてきました。それは共働きで必要があったからという以上に、子どもを育てたかったからですが、こういうことを素直に言えるようになるべきでしょう。また、逆に、フェミニズムを知った後、昔は、「ぼく」という男性的一人称を使うのは、政治的に正しくないので、なるべく使わないようにしていましたが、最近、自分のことを語るには気楽に使えるようになったことも、肯定しておきます。今は、女性でも好んで、ぼくを使う人がいますが、これも興味深いです。

余談ながら、上野さんの著書では、中西さんとの共著の「当事者主権」がお勧めです。今回、久しぶりに読み直しました。あと、最初にタイトルを見た時に、「おれは『女』が嫌いなんじゃなくて、『上野千鶴子のような女』が嫌いなんだよ」という方が、都庁の中あたりには、まだ生き残っていらっしゃる、というような文脈での、「女ぎらい」を、なぜか想像しましたが、もっと深い内容です(笑)ぼくの「女ぎらい」偏差値は、同世代平均より低いのは自信あるけど、少し若い世代なら、ぼくくらいが平均になっていると思います。やや希望が入っているが(笑) あと、上野さんを囲む懇親会は、女性のみ参加可だったのですが、一応、「名誉女性」と認定して頂いたので、参加できました!

というわけで、発刊後1年以上経ってからの紹介ですが、面白い本です。みなさまも、どうぞ。


<脚注>前項のことを考えていて、このエントリーは、書いてから長く公開していませんでした。勉強会は2012年の3月のことでした。

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