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公正取引委員会、無難にプラットフォーム事業者と独禁法の関係をまとめる

 さっき出てきました。お忙しいところ恐縮です。

デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引 における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方 
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/dec/191217_dpfgl.html

 喫緊のところはパブコメ対応にもある通り細やかに対処されていて高評価なのですが、詳細はメルマガ『人間迷路』のほうで書くとして、概要で言えばやはり個人の情報に関する経済的価値への言及のところは気になります。個人に関する情報は経済的価値ではありません、という大原則に則って以下一万字略といったところですが、対価が発生すればどのように扱われても良いのかと邪推されかねない部分もまたあるわけで。

 ところが、質疑見てますと結構公取委が踏み込んだコメントで「えっ」というものもあります。

https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/dec/191217_dpfgl_12.pdf

 ここのNo.48、いったいどこの個人で団体で弁護士なのか良く分かりませんが、公取委はこう打ち返しをしてきています。多くの説明を重ねているので、ここでは代表的にNo.50を示します。
[引用]

本考え方では,消費者がサービスを利用する際に個人情報等を提供する場合を個人情報等を「対価」とした取引と整理しています。個人情報等の経済的価値がその量及び使い方に左右されることは否定しないものの,個人情報等は経済的価値を有するものと考えています。

--ここまで--
 まあ独占禁止法という商業上の規制だから、個人に関する情報を提供した場合の、プラットフォーム事業者からの「対価」を対価性ある前提で判断したということなんでしょうかねえ。個人的には「対価」のような経済的価値を想像させる言い方ではない単語をうまく開発してほしかったなあという気もしないでもありません。

 ただ、概ねにおいて公取委のプラットフォーム事業者に対する独禁法上の考え方はかなり整理されて伝わってきたので、ざっと見た限りではGood Jobよなという感じがいたします。お疲れ様です。ビッグな見落としがあるかもしれないけど。

 一方、与党・自民党が進めている取引透明化法案の中身が概ねの方針として報じられたものの、取引条件の明示と、条件変更があったときは支配的地位にある事業者は届け出をせえというトラック輸送規制みたいな中身になっていて昭和かと思います。もうちょっとやりようがあるんじゃないのかなあと思いつつ、不利益変更のない契約変更も含めてお国に届け出て、それがあかんかったら独禁法違反の課徴金と処分を喰らうのやと言われても「ほなら、大将ふつうに独禁法だけ厳格運用すればよろしいやん」とえせ関西弁も飛び出してしまうぐらい良く分からない内容になっています。

取引透明化法案とは プラットフォーマーに開示求める:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXKZO51645770R31C19A0EA2000/

 さすがにこれには楽天の三木谷浩史さんもブチ切れで、さっそくニュースになっていました。

https://twitter.com/hmikitani/status/1206015419821092865

 私は楽天ともAmazonとも取引があるのでこの規制に影響を受ける側ではありますが、取引透明化法がこのまま成立したのだとしても、Amazonはグローバルの利用規約変更に正面から日本の規制に応じるとはちょっと考えづらいですし、結局は公正取引委員会が同法付託のなかで再度吟味して処分を決める必要が出ます。確実にそうするとは言えませんが、かなりの割合で無視したり、適当に報告をしたりするのかなという感じがします。

 一方で、楽天やYahoo! JAPANはコンプライアンス担当や渉外さんがせっせと霞が関に日参して対応することになるわけで、これはこれで規制とコストの面で国内事業者が不利になるよねという理屈はまあ正しいと思うんですよ。

 楽天については、楽天なりのやり方では誠実にやっているけれどももっと店子を大事にして契約内容の対応をしっかりやればいいんじゃないかとも思いますが、あまりの内容であればそれこそ下請法や独禁法の既存法で事足りるわけですから、他の国内事業者も海外GAFA+Mとアリババテンセントら中華勢についてはイコールフッティングにしてほしいところです。

 そもそも、サイト内検索でアクセスの多いトップページでの表示を巡って、プラットフォーム事業者が問題になるケースが多かったことから、グルメサイトから通販、ニュースアプリにいたるまで掲載基準の明確化を進めて欲しいという議論は当然出ます。実際、その辺が主眼だったはずなんですよね。

巨大IT規制へ新法 検索表示順の基準明確に:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51638300R31C19A0MM8000/

 しかし、例えば私がヤフーニュース個人でニュースを書いてヤフートップページやトピックスに掲載されなかった理由は何故なのかと問い詰めることのできる立場にはないし、それは当ブログがBLOGOSに掲載されたりされなかったりするときもそうです。それは、ヤフーニュース編集部やBLOGOS編集部が私との契約に基づいて編集権を行使しているのだという整理で行くならば、その編集権はヤフーニュースやBLOGOSの方針に基づいて利益の最大化なのか、ユーザーのエクスペリエンス向上なのか、多くのジャンルを満遍なくなのか、考え方も含めて透明化しろという話になります。

 同じことは、トラベルサイトが「そろそろ欧州旅行特集やるか」といったときに、その企画や編集方針から漏れて不利益を被る田舎の温泉旅館の扱いと同様であって、仮に基準が明示されたところで冒頭の公取委が言う「対価」が消費者にどう明示されるのかと併せて議論されるべきところだったはずです。

 ただ、今回の公取委の新旧表をしげしげと見ていると、かなり発展的にその辺の議論も目線に入れて問題に対応していきますよという雰囲気までは感じられるので、いろいろ過渡期なんだろうなと思いました。何日かかけて、ゆっくり読み込んでいきます。



やまもといちろうメルマガ「人間迷路」

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