(講談社)2019/12/11発売
定年消滅時代をどう生きるか (講談社現代新書)
私たちの考え方によっては、定年消滅時代の到来は大きなチャンスにもなりえますし、大きなピンチにもなりえます。
たとえば今の新卒一括採用では、大学を卒業する時の1回しか就職のチャンスが与えられず、その結果によってその後の人生の勝ち負けまで決められてしまいます。しかし、新しい日本の雇用ではその弊害が改められて、人生で就職のチャンスが何回も与えられるようになります。「失われた世代」や「就職氷河期世代」といった言葉が生まれない環境に変わっていくのです。
ひとつの会社でしか通用しないスキルを身に付けたとしても、働いている企業が衰退に向かえばそのスキルの有用性は薄れてしまいます。そうはいっても、私たちはデジタル技術を駆使して、多種多様なスキルを習得する時間を短縮化できるので、人生でも仕事でも何度でも挑戦ができる世界が訪れようとしています。
人生を通して成功の軌道に乗り続けるのは難しいかもしれませんが、失敗しても再びチャンスを与えてくれる社会では、天職を見つけて遅咲きの花が開くケースは尽きることがないでしょう。
プロ野球の世界で光り輝いたイチローさんのように、子どもの頃に大好きな仕事を見つけて一生の仕事にすることができれば、それは現代における至高の幸せであるといえます。しかしその一方で、初めて就職した当時は考えもしなかった世界で天職を見つけて成功することもあります。
その象徴的なケースとして挙げられるのは、iPS細胞の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥・京都大学教授です。山中教授は現職に就くまでに、整形外科の臨床医、薬理学の研究者、分子生物学の研究者、ES細胞の研究者と、いくつもの職歴を経験していたのです。
ひとりひとりの人生には、無限の可能性が広がっています。この本をご覧いただくことによって、できるだけ多くの人たちに自らの視野を大きく広げてもらい、人生が少しでも豊かになる働き方を模索していってもらいたいと切に願っている次第です。
記事
- 2019年12月17日 15:51