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WeWorkを“アカデミー賞脚本家”が映画化! 孫正義の登場シーンに注目が集まる 皆さんのお金をこの人たちに託して大丈夫ですか? - 神谷 秀樹

 12月3日付けInman社の報道によると、『The Big Short』(邦題『マネー・ショート 華麗なる大逆転』)でアカデミー賞脚色賞を受賞したチャールズ・ランドルフの脚本で、ユニバーサル・ピクチャーズとブルームハウス社が、ウィーワーク社(WeWork、以下ウィー)の誕生からソフトバンクが救済するまでの顛末を映画化するとのことだ。

誰が孫正義を演じるのか?

 主人公はウィーの創業者で元CEOのアダム・ニューマンと、彼の金主となり今や世界の金融界で最も有名な日本人である孫正義さん(マサ)のお二人だ。台本はウィーに関する本を執筆中のカトリーナ・ブルッカーのレポートを基にするという。


19年7-9月期決算を発表する孫正義氏 ©AFLO

 ランドルフは映画プロデューサーでもあり、これまでラッセル・クローやニコール・キッドマンを主役にしてきたが、さて今回は誰がマサを演じるのか? お話はシリアスなドラマなのか、それともパロディー化されるのか? いや、シリアスに描くほどパロディーになるかもしれない。

 強欲なユダヤ人(アダム・ニューマン)、日本人(孫正義)、アラビア人(サウジアラビアのムハンマド皇太子)、インド人(孫さんの会社の経営陣)など極めて多人種の間の会話・商談がどのように描かれるのか? ランドルフの手腕によってはまたオスカーを獲得するかもしれない。

「二人で『世界初の1兆ドル長者』になろう」

 一体どんなシーンが出てくるのだろうか? アダムとマサが「二人で『世界初の1兆ドル長者』になろう」と語っているところか? アダムがトランプ大統領の娘婿のジャレッド・クシュナーにまるで不動産開発計画のような中東和平案を進言し、マサと一緒にサウジ皇太子に逢いに行くところか? 株式公開に失敗し一挙に「ウィー帝国」崩壊の危機に陥り、マサがアダムに17億ドルの「プラチナ・パラシュート」を用意して辞任を要求する場面か? その報道を聴いて怒り狂う従業員たちの姿か? 

 一時は会社の評価額600億ドルとも800億ドルとも語って、公開主幹事を取りに行った投資銀行家たちはどのように「公開断念」を伝えたのか? 今年1月には470億ドルと評価した彼らは救済時に、いかにして80億ドルまで評価を引き下げたのか? たかが映画に過ぎないが、そこに展開される人間模様を垣間見ることには興味がつきない。

その先にある“支配・搾取・疎外”の社会

 観客はいったいどんな感想を持つだろうか。株主から預かっている資金や銀行から借りたお金をあたかも自分のもののように、ごく少人数で、しかも1兆ドル単位で動かす様子は、この世のものとは思えないだろう。年金の運用にソフトバンクの株や債券を買った人や、これらの企業に大金を貸し込んでいるメガバンクの預金者に対して、「皆さんのお金をこの人たちに託して大丈夫ですか?」と問いかけるならば、そこに一番の意義が生まれるかもしれない。

 筆者は「文藝春秋」1月号および「文藝春秋digital」に「ウィー事件」の顛末に関する記事「孫正義はバブルに飲み込まれた」を寄稿したが、最も懸念することは巨額の資金やAIという単語を振り回す人々の心のあり方だ。

「ウィー事件」を見ていると、人類は幸福になるどころか、大多数の人がほんの少数の人の巨大なエゴに振り回されていることに気づく。その先には、人々が支配・搾取・疎外される社会が来るかもしれない。そう思うと恐怖に慄く。

(神谷 秀樹/文藝春秋 2020年1月号)

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