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「モザイクの向こう側はグレーの世界でした」筑駒卒のAV男優・森林原人が思い出す“あの日ヤクザに言われたこと” 名門校のアウトロー卒業生――森林原人 #3 - 河崎 環

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筑駒卒の“元神童”はなぜAV男優になったのか? 森林原人40歳が明かす「同級生にカミングアウトした夜」 から続く

【写真】筑駒時代、高1の文化祭で女装した森林原人

 筑波大学附属駒場中学校・高等学校、通称「筑駒(ツクコマ)」は、全校生徒の約6〜7割が毎年東大に合格するという、日本屈指のエリート校だ。だが、同校の卒業生である森林原人は、軒並み東大へと進学した同級生たちを横目に、19歳でAV男優としてデビュー。以後20年以上に及ぶキャリアの中で、約1万人の女優と絡んできた。

 はじめは「自傷行為」として飛び込んだAV業界だったが、着実にキャリアを積みながら、次第にやりがいや手応えを感じ始めた森林。しかし、まもなくその身に大きな転機が訪れる。親にAV出演が知られてしまう、いわゆる“親バレ”だ。そのとき彼は両親といかに向き合い、何を語ったのか。(全3回の3回目/#2より続く)

◆◆◆

「親バレしたのは、男優2年目のとき。5月の母の日のことでした」

 森林は少し俯きながら、記憶を探るように語り始めた。「大学から親に『お子さんの履修届が出ていない』って連絡があったんです。そのころ、僕はもう全然大学に行ってなかった。けど、男優の仕事のために、毎日『大学に行く』って嘘をついて出掛けてたんです。だから、お前は何をやってるんだ、話を聞かせろってことになって」

 森林はリビングのテーブルに、両親と向かい合わせに座った。しかし、数分間は誰も口を開かなかったという。気まずい空気が流れるなか、最初にその沈黙を破ったのは厳しい父でも、覚悟を決めた森林でもなく、いつも優しい母だった。「いきなり『何の宗教やってるの』って言われたんです。たぶん、親なりにいろいろ考えを巡らしたんでしょうね。当時は、頭のいいやつが道を踏み外すと言えば、宗教だったんです」

「親を泣かせるだけだったら、辞めてたかもしれない」

 母の思わぬ一言に驚いた森林は、「宗教なんてやってないよ。AV男優をやってるんだ」と答えた。「むしろ心配をかけさせないように、と思って言ったんですが、もちろん2人とも猛反対で。母は唖然としていて、父はしっかりと言葉で怒りを表しましたね。そんなことをさせるために育ててきたんじゃない、自分が何をしてるかわかってるのか、と」

 その反応は予想通りではあったものの、ここまで“怒り”が前面に出てくるとは思っていなかったという。「もともと親を悲しませたくない、という思いはずっとあったんです。一番覚えてるのは……小さい頃に、母親の財布からお金を盗んでいるのを見つかったことがあって。ビックリマンチョコが欲しくて、こっそり財布からお金を抜き出していたときに、パッとドアを開けられて。そしたら母親が固まって、僕を見ながら何も言わずにボロボロ涙を流したんです。その記憶がずっと頭にあって。だからこのときも、そんな風にただただ親を泣かせるだけだったら、男優を辞めてたかもしれない。でも、このときは怒りだったから……だから、話ができたのかな」

一生取り戻せないと思っていた“2年の出遅れ”

 それまでの2年間、森林も「このままでいいのか」という思いは抱え続けていた。「やっぱり後ろめたい気持ちもありました。でも、友達は本格的に就職活動を始めていて、銀行にしたとか、国一受けたとか、早いやつは司法試験受かったとか、そういう話が聞こえてくるんです。そうなると、もう自分にはこれしかないな、と。今の年齢で思えば、全然やり直せるんですよ。2年なんか、全然取り戻せるよって思うんだけど、浪人もしていたし、当時はこの出遅れは一生取り戻せないって思っていて」

 自分にはもうAVの道しかない。そう信じていた森林は、その思いを両親にぶつけた。「この家に生まれて良かったと思ってる。お父さんお母さんの子で良かったと思っている。でも、僕はお父さんとお母さんの作品じゃないんだ。だから、僕がどんな生き方を選んでも、2人が失敗したとは思わないで、って言ったんです。自分が何をしているのかは、僕なりに分かってるつもりです。やめるときは自分でやめるから、僕が僕の人生を決めていくから、と」

 親バレからまもなく、森林は実家を出て、都内で一人暮らしを始めた。父親は話し合いのあと、半年間口をきいてくれなかった。だが、部屋を借りる際には保証人になってくれた。「母からは、5年だけ待つから、と言われました。その間にお金を貯めて、ちゃんとやりたいことを見つけなさいと」。そのとき森林は22歳だった。

身体を心配してくれていた母がある日……

 それからも1ヵ月に一度は実家に顔を見せに帰った。その度に母は森林の身体を心配してくれた。「大丈夫なの、ちゃんと食べてるの」。そんな関係が2年ほど続いたある日、森林が実家に帰ると、母親が庭仕事をしていた。「もともと庭をいじるのは好きだったんですけど、そのときはなんか一段と庭が綺麗になってたんですよ。それで『すごいじゃん』って言ったら、笑いながらですけど、『植物はね、裏切らないの。愛情を注いだ分、ちゃんと返してくれるから』って言われたんです。何も言えなかったですよね」

 母が「待つ」と言ってくれた5年は、あっという間に過ぎた。だが、27歳になるころには、森林は業界内で一流男優と呼ばれるようになっていた。「鷹さん(加藤鷹)やチョコさん(チョコボール向井)が引退して、これからは『シミクロモリ(しみけん、黒田悠斗、森林原人)』の時代だ、なんて言われていて。それに、DMMが本格的に参画してきた時期で、とにかく本数が増えて、男優待ちで現場が進み始めたんですよ。そうすると、別の全能感というか、ここで絶対天下とってやるぞ、やってやるぞって気持ちが出てきたんです。だから親にはそのとき、これでやっていきますって伝えました」

28歳で文化服装学院の夜間部に入学

 とはいえ、「世間に対して胸を張ってる感じはないですね。やっぱり後ろめたさはありました」。AV男優という職業では、引っ越しをするにも全く家を借りられない。また、20代が全て男優業で終わっていいのか、という不安もあった。「それで28歳のときに、文化服装学院の夜間部に入学したんです。男優でやっていくぞ、っていう思いはあったんだけど、引退した先輩たちを見ていると、これは成功した人ですら地獄を見てるぞ、と。僕に『お前の親父の給料なんてな……』とマウントしてきた先輩も、結局後輩たちから散々金を借りまくって、それを踏み倒していなくなっちゃったんです。そんなことがザラにあったんで、やっぱり男優以外のこともしなくちゃなって」

 しかし、それでなぜ“ファッション”だったのか。「僕、10代の頃は母親の通信販売の下着カタログをオカズにしてたんです。で、そこからファッション誌に流れて。だから僕にとって、ファッション誌はエロ本なんですよ。でも、賢者タイムに改めて読んでみると、ファッションって意外と面白いなって(笑)」。冗談めかして話す森林だが、その裏側にはきっと真剣な気持ちがあったのだろう。30歳を前にして、彼はそうやってぐるぐると逡巡し続けていたのかもしれない。

「AV男優でも気にしないよ」と言ってくれた女性

 そうして通い始めた専門学校で、森林は生まれてはじめて「結婚したい」と思える相手と出会った。「その子も実はソープ嬢をやっていたことがあって。だから僕がAV男優でも気にしないよ、って言ってくれたんです。でも、向こうの親が、男優とは絶対に結婚させない、と」

 そこで再び、森林の気持ちは揺らいだ。「AV女優が辞めるきっかけって、実は結婚が多いんですよ。だから僕も、結婚で男優を辞めるっていうのが、人生を変えていくきっかけになるんじゃないかな、とも思って」。だが、そんな気持ちを自分の両親に伝えると、意外な反応が返ってきた。「母親がちょっとムッとしながら、『自分の親が辞めろって言っても辞めなかったのに、他人の親が言ったら辞めるのか』って言ったんです。『10年近くやってきて、プライドはないのか』と」

 その言葉で、森林はようやく男優で生きていく決心が固まったという。結局、その相手とは別れることになった。そして40歳になる今も、彼は独身のままだ。「それから付き合う子には、男優を辞める気はない、ということを伝えてから付き合うことにしています。年も年なので結婚もしたいし、子供も欲しいんですけどね」

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