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「全員が東大に行くって雰囲気でした」偏差値78のAV男優・森林原人が振り返る“僕が筑駒生だった頃” 名門校のアウトロー卒業生――森林原人 #1 - 河崎 環

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 振り返ってみれば、人生の中でたった6年間に過ぎない日々。名門中高卒の肩書き、それは勲章だろうか、それとも烙印だろうか。

【写真】当時12歳の森林原人が写る、筑駒合格発表での記念写真

 今ではもう、あの制服も校章も身につけることはない。卒業後、名門校のブランドを剥がされ、生身で勝負する人生。その中でもがきながら、同級生たちからは遅れて、あるいは離れて、社会に「居場所」を見つけた“アウトロー”たちがいる。

 それは親や先生たちが期待していたような進路ではなかったかもしれない。だが、彼らが放つ規格外の魅力こそが、名門校の懐の深さを示しているようにも感じる。――そんな“アウトロー卒業生”に話を聞いた。(全3回の1回目/#2に続く)

◆◆◆

 森林原人、40歳。現代最も活躍するAV男優の一人としてあまりにも有名な彼は、変装するわけでもなく、明るいピンクのシャツにジーンズ、端をわざとほつれさせたグレンチェックのダメージジャケットという、絶妙に洒落切ったいでたちで現れた。緑の幾何学プリントが施されたコートを傍に置き、ショッキングピンクのネクタイを締めながら「アウトロー感、出てますか?」と周囲を笑わせる。

 男性スタッフが「いつもお世話になっています」と冗談交じりに挨拶するほどに、彼のAV出演作は数知れない。約20年に及ぶ長いキャリアで、絡んだ女優の数は約1万人。一般人が100回転生しても到底成し遂げないであろう経験数を持つこの男は、実は「筑駒(ツクコマ)」の出身だ。

筑駒からAV業界へ進んだ男

 筑波大学附属駒場中学校・高等学校。1学年約160名(中学募集が120名、高校募集が40名)と、学校の規模は小ぶりながらも、2019年にはなんと120名もの生徒が東大に合格している。そんな、偏差値70どころか80とも90ともいわれる日本の最難関国立中高一貫男子校を卒業して、AV業界へ進んだというから驚きだ。

 同級生たちは軒並み東大へ進学して、官僚に、医者に、弁護士に、そして超一流企業勤めのサラリーマンにと、エリートコースを真っ直ぐ歩んでいる。おそらく、いや確実に、森林は筑駒の開学以来ただひとり輩出されたAV男優だろう。

 2016年に刊行された森林の著書のタイトルは『偏差値78のAV男優が考える セックス幸福論』である。順当に行けば、彼もまた何不自由ない人生を約束されていたはず。それなのになぜ、森林は敷かれたレールを飛び出したのか。

ゲームも漫画も禁止の“厳格な家庭”

 神奈川県横浜市出身の森林は、自身が生まれ育った土地を「ちょっと沈んだ町だったかな」と振り返る。「横浜といっても田舎の方で。駅を境に山側と山じゃない側に分かれていて、僕の家は山じゃない側だったんですけど、そこには火葬場があったりして」

 そんな町の中、森林は厳格な家庭で育ったという。「ファミコンは買ってもらえなかったですね。ゲームをすると馬鹿になる、漫画を読むと馬鹿になる。あと、テレビは1日2時間まで、っていう決まりがあって。父の考えです」

 誰もが知る一流企業に勤める厳しい父。県内の名門私立男子校に進学した優秀な兄。まだ小学生、何者でもなかった森林少年にとって、一番安心できる時間は母と一緒に過ごすときだった。「お母さんといるときなら、どれだけテレビを見ても良かったんです。当時はおばあちゃんも一緒に住んでいたんですけど、お母さんにとっては嫁姑の仲ですよね。結構厳しくされてるところも見ていて、だから僕たち男兄弟がお母さんを守らなきゃ、っていう意識があったかな。お母さん大好き……というか、マザコンですね(笑)。今も、僕の仕事に対する理解が高いのはお母さんです」

 どこにでもいるような、典型的な“お母さん子”。だが、話題が中学受験前に及ぶと、森林は何度も「全能感」という言葉を口にした。小学生だった森林少年は、兄が通っていたこともあり、駅前の中学受験専門塾へと入塾する。毎週のようにテストの結果が並べられ、比較され、順位が出る。すると、彼の中に変化が生まれ始めた。

「自分は特別な頭脳を持っているんだ」

「近所に頭が良いと言われていた、4つ上くらいのお兄さんがいたんですよ。『本を斜め読みできる』って評判で。その人は結局、浅野中学に行ったんです。それでやっぱり凄いねー、って。でも受験の準備が進むにつれて、僕にとって浅野はすべり止めのレベルだとわかってくる。そうなると、あれっ、僕はあの人を超えてるんだ、なんて思い始めて。自分は特別な頭脳を持っているんだ、って意識が高まっていきましたね」。当時の自分を分析するように、森林は淡々と語る。

 もともと、小学校での成績もオールAだった。だが、卒業生の9割以上が地元の公立中学に進むような学校で、母から「あなたは頭がいいね」と言われても、そんなのは「どの親も自分の子がかわいいから言うんだろう」と、少し冷めた気持ちで受け止めていた。小学校では4年生までリレーの選手。走るのが速く、明るくて、リーダーシップもあった。しかし、塾に通い始め、数値という形で可視化されることで、自分の頭の良さは世間一般から見てもトップレベルなのだと気付かされたという。

 塾では、成績で席順が決まる。教室ではいつも、自分よりも前の席に常連の成績優秀者が6人いた。しかし、森林少年はとにかく本番に強かった。緊張というものをしないのだ。

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