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驚異の区立中「中1が中3数学をスラスラ解く!」

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近年、教育現場にも浸透し始めてきたIT。生徒はスマホの授業に集中し、教師もタブレットで進捗を管理するなど、常識が一変しつつある。そんなIT×教育の最新事情をお伝えしよう。

タブレット教材で授業時間が半分に

黒板の前に先生が立ち、大勢の生徒を相手に一斉授業を行う。そんな懐かしい授業風景が変わりつつある。


※写真はイメージです - 写真=iStock.com/xavierarnau

とある日の午前中、広々とした校内のカフェテリアで、数学の授業が行われようとしていた。ここは東京都千代田区立麹町中学校。生徒の多くはタブレットを持っており、画面上には次々に設問が現れる。タッチペンで正しく解答すれば「正解」の〇が、間違えば「不正解」の×が表示されていく。解いている問題は同じではない。AIが各自の習熟度を解析し、レベルに合った問題を出しているのだ。1年生が3年生の数学を学ぶケースもあれば、3年生が2年次の復習をしたり、受験対策に精を出すこともある。

今、教育(Education)と技術(Technology)を掛け合わせた造語の「EdTech」(エドテック)が注目されている。ITが教育現場に進出したことにより、学力が向上したり、環境が整備された事例が次々と報告されるようになった。麹町中学校では、AI型タブレット教材「キュビナ」を、2018年の2学期から導入。年間指導計画に基づく従来の数学の授業時間は60~70時間あったが、それがどの学年でも約2倍の進度になり、約半分の授業時間で修了したという。

大手ではベネッセが提供する「クラッシー」が、生徒向け動画コンテンツ配信や学校と保護者のオンライン連絡サービスなど、学校業務を包括的にケアするサービスで拡大。リクルートの子会社が運営する「スタディサプリ」は、講義配信、学習計画作成などのオンライン学習サービスを提供し、会員数が順調に増加中である。野村総合研究所の試算によると、EdTech市場は現在すでに2044億円規模。2025年には3210億円まで成長する見込みだ。

野村総合研究所の小山満氏は、市場が拡大する背景として、「20年が教育業界にとって変曲点」であることに注目する。

「新学習指導要領が小学校から実施され、英語には4技能が求められ、プログラミング教育が必修化されます。従来の授業のあり方が変わって、教師の負担増が懸念される中で、EdTechはそれを軽減する役割を期待されています。そこに近年、生徒間でスマホが普及したことも大きい。これまではパソコンやタブレットなどの機器がないと実現できないサービスは少なくなかった。今や学校だけではなく、家でも自由に学べる環境が整いつつあります」

教育市場にGAFAも参入

ひと口にEdTechと言っても、その包括する分野は幅広い。その中で特に市場成長が見込まれるジャンルは、小山氏によれば3つあるという。ひとつが、前出の「キュビナ」のように、AIが学習者の習熟度を分析し、適切な学習コンテンツを最適化して提供する「アダプティブラーニング」。タブレット型AI教材「アタマプラス」は、数学、英文法、物理、化学などの教科を網羅し、大手予備校が続々採用。「センター試験(数1A)で、2週間教材を学習した受験生の得点が平均50.4%増えた」という報告もある。

そして、生徒が能動的に参加するようになる学習手法が、「アクティブラーニング」。タブレットを使うことで教師と生徒間のコミュニケーションを活性化させる授業支援ソフト「ロイロノート」は、開成中高などの進学校をはじめ、小学校から大学、塾でも使われている。もうひとつが、講義映像をインターネット配信する「オンライン学習」だ。

こうしたビジネスチャンスを、ITの覇者・GAFAも見逃していない。近年、グーグルのOSを搭載した低価格の「クロームブック」を学習用パソコンとして導入する公立学校が増加。グーグルは、クラウドベースで管理ができる教育機関向けサポートツール「G Suite for Education」を無料で提供し、埼玉県ではすでに全県立高で導入している。ITに疎い教師に対する講習会なども積極的に開催し、教育市場を取り込みにかかっている。

今後、EdTechによって何が変わるのか。公教育へのEdTech普及に熱心な新宿区議会議員の伊藤陽平氏は、教師の役割の変化を予測する。

教師の存在は不要になるのか

「AIが最適化した学習を提供することで、教師の存在は不要になるのかといえば、そんなことはないでしょう。EdTechによって、教師はその役割が『コーチ』へと変わっていくと思います。勉強や仕事の効率化はAIが担えても、『なぜ勉強が必要なのか』『勉強の面白いところ』を一人ひとりに伝えたり、モチベーションを管理するのは難しい。効率化によって捻出した時間を、生徒とのコミュニケーションに使っていくのではないでしょうか」

小山氏は「オンライン学習ツールの普及で選択肢が増え、受動的だった学習が能動的なものへと方向転換するはず」と見る。

「そして社会的には、『学歴』から『学習歴』が重視される気がします。今までは企業が学生を評価する際、どのような学習をしてきたのかがわからないため、大学名で判断してました。それが近年、リポートやサークル活動、教師のコメントなど、学びに関わるあらゆる記録をデジタル化する『eポートフォリオ』が教育業界で推進されています。学習過程が明らかになることで、評価軸も変わっていくはずです」

▼[AIによる効率化]黒板に板書して授業するのがムダな理由

「小中学校の45分間授業で、本当に集中している時間はわずか5分でした」

そう語るのは、AI型タブレット教材「キュビナ」を開発した、コンパス代表の神野元基氏だ。神野氏はシリコンバレーで起業後、「子供たちに未来のことを伝えたい」と帰国して学習塾を開校した。しかし生徒たちは勉強に追われ、未来について教える時間もない。そこで「授業中、自分にとって本当に意味のある時間はどれほどか」のアンケートを実施し、分析したところ、冒頭の数値に行きついた。

「それ以外の時間はといえば、生徒はわかりきった話を聞いているか、あるいは理解不能な話を聞いているかのどちらかでした。1人の先生が35人前後の生徒を教えようとすれば、どうしても注意喚起の時間や、板書する時間など無駄な時間が発生してしまう」(神野氏)

集団学習の限界を感じ、もっと効率的な学習で未来について伝える時間をつくりたいと、開発したのが「キュビナ」だった。タブレット上で、生徒がどのくらい正解しているか、どういう順番で解いているか、解説を何秒読んでいるかなどのデータを集め、一人ひとりの習熟度をAIが解析。弱点とするポイントを把握し、さらに能力を伸ばすための難易度を調整しながら、各自に最適な問題を出題していくという、「AI先生」である。

学習の効率アップは歴然だった。教材を導入後、塾では従来の中学校数学1学年分の授業時間が、7分の1に短縮されて修了。生徒の多くは、中1で中3数学まで終わったという。

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