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タピオカと着ぐるみを活用したアウトリーチ?~未来の福祉を考える~ー荒井和樹×駒崎弘樹ー

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2017年に文京区でスタートしたこども宅食。経済的に厳しい子育て世帯に、定期的に食品を配送しながら、家庭の困りごとを発見する「出張(でば)っていく福祉」(=アウトリーチ)を目指しています。

一方、名古屋にも「アウトリーチ」を目的に、2012年から、駅前で着ぐるみを着て若者に声をかける「全国こども福祉センター」という団体があります。

今回はアウトリーチの先駆者である同センター創設者の荒井和樹さんに、お話を伺いました。

*対談後、荒井さんの活動に駒崎が参加しました。彼らの活動を具体的に知りたい方はこちら
→【ルポ】名古屋の着ぐるみ集団にまぎれてみた!

荒井和樹
全国こども福祉センター創設者、保育士・ソーシャルワーカー(社会福祉士)。
元児童養護施設職員。全国こども福祉センターを立ち上げ。近著に『子ども若者が創るアウトリーチ-支援を前提としない新しい子ども家庭福祉』(アイ・エスエヌ)。

全国こども福祉センターについて
2012年から名古屋を拠点に子どもたちによる、子どもたちのためのアウトリーチ活動を行う。着ぐるみを使った駅前での街頭募金・声かけのほか、若者向けのスポーツイベントなどを主催。支援が必要(もしくは必要となる手前の状況)だが、その情報が届いていない子ども・若者との接点を多く持つ。

*アウトリーチとは
「支援が必要にもかかわらず、それを望まない、受けられない対象者に対し、支援(情報)を届ける手法(スキル)」(全国こども福祉センターHPより)

「消費しきれないほどの支援」と「つながっていない子どもたち」


駒崎:荒井さんの近著を読み、実践者でありながら研究者であるという姿勢に感銘を受けました。この活動を始めたきっかけを教えてください。

荒井:僕は大学を卒業後、児童養護施設で働いていました。そこには、たくさんの寄付が集まり、ボランティアや実習生もひっきりなしに来ていました。施設には消費しきれないほどの「支援」がありました。

一方、繁華街やSNSなど施設の外で出会う子どもたちは、同様の問題を抱えていても、保護未満とされ、「支援」につながっていませんでした。対話をしていくと支援機関に対する拒否感やネガティブな印象を抱いていることがわかりました。


荒井:社会福祉士や保育士などの専門職は、虐待を予防するよりも施設や窓口で子どもからの相談を待つ、要保護児童を受け入れることが業務の中心となっています。

福祉の専門家も、制度化されて、給料がもらえる業務内容に集中する。問題が深刻化するまで様子を見て、保護。関係修復困難な状態で、家庭に戻す。――果たして、これが根本的な解決になっているんだろうか?と疑問で。

そこで、子どもたちが実際にいる現場まで専門職が出向いていく必要性を感じました。

駒崎:そうして、仲間を集めて、駅前で着ぐるみを着て若者に声をかけるようになったんですね。このスタイルにたどり着いた経緯を教えていただけますか?

ヒントは学生団体や風俗業界から


荒井:名古屋駅前ではもともと、学生団体や風俗業界のキャッチが子ども・若者と接触していました。一方、福祉の専門職の人たちは1人もいない。だったら、専門職が駅前に出たらよいのでは、と考えました。

駒崎:社会課題は駅前で起きていて、そのヒントは学生団体や風俗業界といった非専門的なクラスターの人たちから学んだということですね。

「大学に行きたい」

駒崎:アウトリーチだからこそできたな…と思うエピソードを教えてください。

荒井:一番嬉しかったのは、小中学校にほとんど行ってない、中学校は1日も行ってないと言っていた子のケースですね。

初めて出会ったのは名古屋駅前。その後、活動に参加してくれるようになり、ゆっくり、自分の家庭の事情を教えてくれるようになりました。

ある日、学生同士が会話してる中で、その子がポロッと「私、学校行ってない」と言ったんです。

それからしばらくして、「大学生メンバーの言ってることを理解したいから大学行きたい」って言い始めたんですね。

その時初めて、前向きな目標が生まれた。大人が「高校に行ったらどう?」とか「将来困るよ」みたいな説教をせずとも、自然とその子自身が「大学生が話していることを理解したいから大学に行きたい」って思えたことがすごく嬉しかったです。

駒崎:おお~!嬉しいですね。内発的にそれを思うようになってくれたっていうのは、とても本質的ですね。

みんな「仲間」がほしい


駒崎:荒井さんの活動は、仲間になって交流して、活動を一緒にやる中で、自分自身で気づく。先ほどの中学生の例のように、自分で気づいて自分で踏み出すことがゴールということですよね。

荒井:はい。それを後押ししてくれる仲間づくり、人間関係づくりのサポートをしてこなかったのが、これまでの福祉の弱点だったと思っています。

駒崎:確かに、行政の窓口で「じゃあ、人間関係を作りましょう」と言われることはないですし、言われてできることでもないですね(笑)

荒井:家に帰って誰もいない、頼れる友だちもいないと、どれだけ質の高い支援につないだとしても、本人が生きる希望を見いだせないのでは、というのは強く感じます。

困っている人は「友だちになってほしい」という思いがあると思うんですよね。本当にわずかな人間関係しかない人たちにとっては「はい、支援は終了したから終わり」で切れる関係がしんどいと思うのです。

駒崎:確かに、支援者ー被支援者構造になると、いわゆる友人関係や仲間のような人間関係にはならないですね。これが福祉の専門家がなかなか超えられない壁ですね。

荒井:もう1点、地方で実践していて感じるのは、自分が困っていることが地域中の関係者に共有されてしまって、その「弱者」のレッテルがカーストのように根強く残ってしまうことを恐れてるということ。

駒崎:なるほど。こども食堂のような場所に行きづらい人たちが、どこの支援機関ともつながりたくない背景はそこにもあるのかもしれませんね。だからこそ「支援される側」としてではなく、ふつうに、人としてつながることを求めているんですね。

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