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日本の技術・資本力がアジア・アフリカ地域を発展させる 開発途上国に注目するビジネスパーソン

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世界には日本の資本力や技術力を駆使して活躍する若い世代が多くいる。国際協力機構(JICA)でシニアアドバイザー(ICT・イノベーション分野担当)を務める内藤智之さんに、ビジネスの可能性が注目されつつあるアフリカや、成長の途上で貧富の格差が表面化しているアジアなど、世界各地で活躍している日本人について寄稿いただいた。


日本は少子高齢化で、今後、国内市場の様々な面で「先細り」が懸念されています。そんななか、アジアやアフリカといった「ネクスト・マーケット」に目を向けるデジタル・ネイティブ世代(1976~1986年世代)の日本人が、世界で躍動しています。今年8月下旬に横浜で開催された「第7回アフリカ開発会議(TICAD7)」でも、2人の日本人が登壇して刺激的な発信を行いました。

「開発途上国でチャレンジする社会起業家」はなぜアグレッシブになるのか、彼ら/彼女らの視線の先には何があるのか。開発途上国を「リープフロッグ(かえる跳び)」させることに120%の情熱を24時間/365日注ぎ続けている2人の注目すべき日本人チャレンジャーを、紹介したいと思います。

美しく安価な義足を3Dプリンタで製造 世界の貧困層へ届ける:徳島泰(とくしま ゆたか)氏

JICA

義足づくりに3Dプリンタを活用することで、値段を従来の10分の1にまで抑えることに成功した徳島泰氏。東京とマニラを頻繁に往復しながら、世界的にも類を見ないデジタル義足製造会社を経営し、「安価で美しい」義足を世界の貧困層に届けています。

徳島氏の経歴は異色です。いわゆる工学部卒のITエンジニア出身ではなく、父親が経営していた製造業を大学を中退して手伝い、28歳で美大に再入学しました。卒業後は医療機器メーカーで製品デザイナーとして働き、2012年8月から2年4か月間、青年海外協力隊(JOCV)としてフィリピンの貧困地域ボホール島に駐在しました。

義足が必要でも買えず 障がいがあると定職にもつけない東南アジア貧困地帯の現実

地元企業に工業デザインの助言を行いながら、大学でデザインを教えるボランティア活動を行うなかで、徳島氏は貧困地域での障がい者問題を目の当たりにします。

ボホールを含むフィリピンでは、先天性・後天性問わず、貧困層で義手や義足を必要としている人が多くいました。調べてみると義肢装具はほとんどが輸入品であり、4~5千ドル(50万円前後)と貧困層の多くには手の届かない価格でした。日本のように補助金制度も整備されていません。

「NGOなどが無料で提供する機会もあるが、サイズや数量は全く足りていない。障がいがあると定職につけず、貧困は連鎖していく」。貧困地域でしか実感できない厳しい現実がそこにはありました。

徳島氏は日本での工業デザイナーとしての経験から、金型を必要とせずに迅速に試作が可能な3Dプリンタの利便性に着目していました。これを使って義肢装具を安く、そして一人一人の体形にきめ細かく合わせて美しく作成できないか。そんな思いを徐々に強めていきます。

JOCV派遣元である国際協力機構(JICA)のフィリピン事務所と粘り強く交渉し、2014年5月、ボホールにある州立大学の協力のもと「デジタル工房(ファブラボ)」を開設しました。

ファブラボとは、3Dプリンタなどのデジタル制御された工作機械を備えた工房であり、現在は世界中に1700か所以上あるとされています。ウェブや動画を介して設計図や製造方法が共有され、数値制御されたデジタル機器により加工することで、世界中で同じ精度の製品を作成することが可能となります。

徳島氏は、ファブラボの特徴を駆使して、膝下義足を必要とする貧困層に対して3Dプリンタで「安価で美しい」義足をプリント(抽出成形)することに成功しました。

片足を失くした人には、残っている方の足の外形を取り込んでデータを反転させて義足をデザインし、3Dプリンタを使って24時間程度で「プリント」します。製作過程にある取付と微調整の工程を人工知能(AI)に学習させることで、膝下義足を10分の1以下の値段(4万円程度)で提供することに成功しました。

AIを使うことで職人のいない地域での義足調整が可能に

Getty Images ※写真はイメージ

徳島氏は帰国後、「3Dプリンタによる膝下義足製造」のビジネス化を自身の生業として選びました。徳島氏が2018年に設立したインスタリム株式会社の説明資料によると、義肢装具の需要は全世界で約1億人である一方、購入可能所得層はわずか10%(1千万人、既存市場規模は約1兆円)にとどまっており、逆説的には全世界の需要は約10兆円となります。

同社が特に比較優位性を発揮させているのは、「職人技を人工知能(AI)で代替させる」方法です。

一般的な義足製造においては、途中で義肢装具士による調整作業が必要となります。しかし、開発途上国に「職人」的な義肢装具士は限られています。このギャップを改善すべく、「義肢装具士の手技を学習したAI」を用いた技術を開発しています。

同社は現在、フィリピン国内での製造・販売実績を順調に伸ばしています。計画では、2022年以降にはアフリカなど「安価で精緻で容易に入手できる義足」を求めている人々がより多く存在する地域へ、事業を拡大していく計画を持っています。

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